下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

「ももいろクリスマス 2016 〜真冬のサンサンサマータイム〜」LV(1日目)@幕張メッセ

【セットリスト】
SE. PRIDEのテーマ
01. DECORATION
02. ピンキージョーンズ
03. 泣いちゃいそう冬
04. 「Z」の誓い
05. きみゆき
MC
06. Believe
07. ザ・ゴールデン・ヒストリー
08. 走れ!
09. CONTRADICTION
10. 白い風
MC
11. サンタさん
【ゲスト】高木ブー
12. メレカリキマカ(ハワイのクリスマス曲)
13. スターダストセレナーデ with高木ブー
14. コノウタ
15. 行くぜっ!怪盗少女
MC
16. 真冬のサンサンサマータイム(新曲)
17. ココ☆ナツ
18. ROCK THE BOAT
19. SECRET LOVE STORY
MC
20. ツヨクツヨク
21. 一粒の笑顔で...
22. JUMP!!!!!
MC
ーーーー本編終了ーーーー
SE. Overture
EN1. 空のカーテン
MC
EN2. 僕等のセンチュリー
EN3. ゴリラパンチ
MC 〈バンド紹介〉
EN4. 今宵、ライブの下で

  2010年から毎年クリスマスの時期に開催。今年で7度目となる恒例ライブが「ももいろクリスマス」である。今回の「ももいろクリスマス2016」では厳寒のスキー場開催のゆえに余計な演出は排しストレートなライブとなった昨年とは異なり、副題となった「真冬のサンサンサマータイム」に因んで「常夏」をテーマに構成。ファイアーパフォーマー「かぐづち-KAGUZUCHI-」やフラガールタヒチアンダンサー合わせて49人が参加しショーアップされたステージが展開された。
 この日はライブのチケットは入手できずライブ会場隣りの物販会場「てまきパーク」でのライブビューイングでの鑑賞となったが、翌日実際に入った生のライブ会場と比べるとクローズアップの画面などでは細かいところまで見ることができた。そのために実際のライブ参戦と比較すると臨場感という点では見劣りしたものの、逆に細部が気になる、ということがあった。そうしたこともあってか初日に気になったのは有安杏果とあーりん(佐々木彩夏)が万全のコンディションとはいえないのではないかと思われたことであった。もちろん、どちらもそれが響いて歌うのに大きな支障をきたすというほどではないが、ライブが始まってしばらく聴いてみると杏果が声枯れ、あーりんは鼻声などである。もっとも少しいつもよりは声の鼻への掛かり方がきついかなという感じはあっても元々鼻声であるあーりんの調子がどの程度悪かったのかというのははっきりとはいえないが、杏果が中盤の「白い風」のロングトーンの後ぐらいに「ごほんごほん」と空咳をしたのは確かで、実は杏果推しとして「ももいろフォーク村」での声の不調、1回目のFNS歌謡祭での歌唱の断念ということもあったので、この日の杏実のコンディションがどうなのかが本当に心配だったのである。
 杏果の声の不調といえば何と言っても誰もが思い浮かべるのは2011年の「女祭り」。あの時もライブ途中でソロ曲「ありがとうのプレゼント」の歌唱の最中に高音部の声が次第に出なくなって、この日と同じような感じの空咳をしていた。そして、その後、出ない声を何とかだそうと必死で声を振り絞るのだが、そうすればそうするほど喉のコンデションは悪化していってついには全然声が出なくなってくる。その時は残りのメンバーが声が出ない杏果のパートを歌ってカバーすることでその一生懸命さに私たちは涙することになった。ただ、その時の杏果には必至に頑張るという選択肢しかなくて、その結果自滅していったことも確かなのだ。
 当時はそれしかすべがなかった。ところがこの日の杏果に感心させられたのはただ強く歌うというだけではなく、「白い風」以降の楽曲について歌ごとに声の出し方を工夫し、この日のコンディションで無理しないでも出る声の範囲を探りながらライブを乗り切ってみせたことだ。事実ネットなどではこの日の杏果のコンディションについて絶好調と書いている人もいるほどで、空咳の後、大きな乱れはなかったため、気付かなかった人もいたようだ。そういう声に対し、一瞬、「私が見ていたのはひょっとして幻」と考えたこともあったが、以上の書いたことについてはライブの最中は心配で心配でほぼ食い入るように杏果の声を出している時の表情だけを見て、歌声もかなり集中して聴いていたので、ここに関してはおそらく実際にそうだったと自信を持っている。
 とは言え、この日の杏果はある意味で安全運転を心がけていたこともあるし、文字通り「絶好調」だった大分のソロコンと比較すると60〜70%程度のポテンシャルしか発揮できてなかったのではないか。そこまでのマイナスはないにしてもあーりんも100%のポテンシャルは発揮できていない気がした。
 そしてこんな苦境になると信じられないようなポテンシャルを発揮するのが百田夏菜子である。準備と言う意味ではNHKの朝ドラ「べっぴんさん」の収録をしながらのスケジュールとなり、他のメンバーと比べると余裕はないはずだが、ファンの間でれに、杏果、夏菜子の3段ロケットと呼ばれている「白い風」の大サビ、あるいはアカペラではじまった「JUMP!!!!!」の冒頭部分、そして満を持して最後に出てくる「空のカーテン」のソロ。この日の夏菜子はまさに飛ぶ鳥を落とす勢いで、頼れるリーダー・センターの面目躍如たるものを感じさせた。