ダダルズ♯2『顔が出る』@SCOOL
作・演出 大石恵美
出演
横田僚平(オフィスマウンテン)、大谷ひかる(三条会)、釜口恵太、永山由里恵(青年団)公演日時
7/4木 19:30
7/5金 19:30
7/6土 14:00/19:00
7/7日 14:00
7/8月 15:00チケット
2,800円(事前予約・当日精算)3,300円(当日)
いろんな演劇の中でこれまで何度もいたたまれない場面の描写を目にしてきたことはあるのだけど、この作品のはトップ3に入るような体験だった。こういうのだと大抵は耐えきれなくなる前に誘導路を用意しておいてそのいたたまれない感情の捌け口を笑いに昇華させていくのが普通なのだが、大石恵美さんのはそうでなくて、あくまでも絶対に逃がさないというばかりに俳優も見ている観客も追い詰めていくのが、これまで他ではあまり見たことがない面白さだ*1。
笑いはあまりないので、そういう感じはあまり受けないが、作品全体の構造はシティボーイズのコントとそっくりだ。シティボーイズでは一見して少しおかしな人(大竹まこと)に普通の人(きたろう)が巻き込まれてしまいひどい目に会う。そこに一見ではそれほど変でもない人(斉木しげる)が現れるが、実はそれがとてつもなく異常な人で彼の介入により状況はとめどなくエスカレーションしていく。
ダダルズでは大竹まこと的な役割の「少しおかしな人」というのが、横田僚平(オフィスマウンテン)と大谷ひかる(三条会)の2人になっていて、この2人は付き合っているようなのだが、彼女(大谷)に借りた6万円を勝手に赤の他人である男(釜口恵太)にあげてしまい、それにもかかわらずカップルの男の方は「お金を返してほしい」という手書きポスターのコピーを壁に何ヵ所も貼り付けたり、それをネットにアップすることで炎上させたりしている。それが現在でふたりは別れようという話になっているのだが、この関係がどろどろでそれだけで相当に面倒くさい。
そして、この面倒な2人の関係に金を返しに来た男(釜口)は巻き込まれてしまう。一刻もはやくその場から去り、逃げたくても逃げられない苦境に陥るというのが前半部分だ。こういう風に書くといかにもナンセンスコメディにありそうなシチュエーションにも思えてくるだろう。そして、普通はこういう関係性は道具として図式的に提示されることが多いが、ここでダダルズがそういうものと異なるのは横田と大谷の演技がこの2人の感情の揺らぎをまるで微分するかのようにこと細かく表現していて、特に横田の演技が演じている人の変さをステレオタイプな「変な人」としてではなく、コミュニケーション障害か別の理由かで意思の伝達が円滑にならない人のあり得るかもしれない一つの姿として提示してみせていることだ。
これだけでも冒頭に書いたような「いたたまれない場面の描写」というのは十分すぎるほどなされている。ところがこの作品の凄さはここにさらに永山由里恵演じる本当におかしい人が登場することで、一触即発の空気感を醸し出してみせることだ。
*1:けっこう見るには体力消耗する。