下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

劇団ジャブジャブサーキット「小刻みに 戸惑う 神様」(2回目)@こまばアゴラ劇場

劇団ジャブジャブサーキット「小刻みに 戸惑う 神様」(2回目)@こまばアゴラ劇場

f:id:simokitazawa:20191018184838j:plain
ジャブジャブサーキット(はせひろいち)は青年団平田オリザ)、弘前劇場長谷川孝治)、桃唄309(長谷基弘)らと並んで、90年代後半の「関係性の演劇」を代表する劇団(劇作家)である。その作風には大きく2つの特徴があり、それが「関係性の演劇」の作家たちのなかではせの存在を目立たせている。そのひとつはその作品の多くが広義のミステリ劇(謎解きの構造を持つ物語)であること。もうひとつがはせ作品のなかで積み重ねられる小さな現実(リアリティー)の集積がより大きな幻想(虚構)が舞台上で顕現するための手段となっていることである。

 演劇的なリアルがそのもの自体が目的というわけではなく、日常と地続きのようなところに幻想を顕現させるための担保となっているという構造は実は平田ら同世代の作家よりも、五反田団(前田司郎)、ポかリン記憶舎(明神慈)ら私が「存在の演劇」と位置づけているポスト「関係性の演劇」の作家たちとの間により強い類縁性を感じさせるもので、その意味では世代の違う両者をつなぐような位置に存在しているといえるかもしれない。

 リアルな日常描写の狭間から幻想が一瞬立ち現れるというような構造の芝居ははせが幻想三部作と呼んだ「図書館奇譚」「まんどらごら異聞」「冬虫夏草夜話」ですでにほぼ確立されていたが、その後に上演された「非常怪談」「高野の七福神」といった作品では作品のなかに漂う幻想との距離感がより一層近しいものとなり、いわばひとつの作品世界のなかに日常世界と幻想世界が二重写しのように描かれるという手法が取られた。

作・演出:はせひろいち


ウチの代表作と言われる「非常怪談」(初演1997年)と、表裏を成す作品が書きたかったんです。いわゆる「葬儀モノ」なんですが、ありがちなお涙モノや親戚がもめたり、死の謎を巡ったり等ではなく、いつも以上にはんなりとした会話劇に仕上がりました。誰にも必ず訪れる「死」という現象について、いろんな角度から向き合える構造になってると思います。7月に先行した名古屋公演でもその辺の共感は高かったですね。(文責はせひろいち/作・演出)

’85年、岐阜大学OBを中心に旗揚げ。’91年から東京、’97年から大阪でそれぞれ定期公演を始め、以来3大都市巡業スタイルに。観客との想像力共有を信じ、細かい会話研究を武器に、演劇に残されたリアリティと知的エンターテイメントを追求している。’93年池袋演劇祭優秀賞、’95年と’97年にシアターグリーン賞、’01年と’06年に名古屋市民芸術祭賞。なお、代表のはせひろいちは、’99年、’04年、’06年の3回、岸田國士戯曲賞の最終候補にノミネートされている。



2019年7月撮影
撮影 中野俊


出演

栗木 己義、荘加 真美、空沢 しんか、伊藤 翔大、中杉 真弓、髙橋 ケンヂ、山﨑 結女
林 優花、松本 詩千、岡 浩之、三井田 明日香(劇団B級遊撃隊)、はしぐち しん(コンブリ団)

スタッフ

照  明 福田 恒子
音  響 杉田 愛憲
舞台美術 JJC工房
舞台監督 岡 浩之
宣伝美術 石川 ゆき
制  作 劇団ジャブジャブサーキット