下北沢通信

中西理の下北沢通信

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スターダストプラネット企画のアイドルガチバトル ライブスタイルダンジョン Vol.2@新宿BLAZE

スターダストプラネット企画のアイドルガチバトル @新宿BLAZE


【アメフラっシ】優勝発表場面@2019年10月3日 ライブスタイルダンジョン Vol 2

LIVE

【会場】新宿BLAZE (http://shinjuku-blaze.com/access)
【日時】2019年10月3日(木) open 17:00 start 17:30
【出演】アップアップガールズ(2)/ アメフラっシ / 桜エビ〜ず / はちみつロケット / monogatari
スペシャルMC】玉井詩織(ももいろクローバーZ) / 真山りか(私立恵比寿中学)
【審査員】Avecooさん(振付師)/ 井上朝夫さん(HUSTLE PRESS編集長) / 竹中夏海さん(コレオグラファー)/ 近田春夫さん(ミュージシャン)/ 吉田豪さん(プロインタビュアー) ...

ももクロが所属するスターダストプロモーションのアイドル部門「スターダストプラネットスタプラ)」が主催する対戦型アイドルイベントがライブスタイルダンジョンである。
 5組のアイドルがそれぞれの楽曲(パフォーマンス)を披露。その勝敗を5人の審査員がパフォーマンスの直後に自分が勝ったと思うグループの名前の書かれたプレートを挙げることで審査。この方式が結構シビアなのはほんのちょっとした差が5ー0のような一方的な判定を呼び込むことで、M1のように点数を入れるという採点方法じゃないため、例えば桜エビ~ずの「リンドバーグ」のような切り札的な楽曲を持っている場合それをどこで繰り出すのかなどの戦略が勝敗の鍵を握ることになる。さらに言えばこの勝負は何票をとるかの勝負であって何勝するかでないのがゲームとして面白いところなのだ。

「ライブスタイルダンジョン Vol.2」前半戦 MC:玉井詩織 真山りか

 つまり、出るからにはどのチームも勝利を狙ってくるわけだが、全勝してすべての勝負で5ー0でブッチギルような力の差があるのでない限りはここでの駆け引きがものをいうゲームでもあるのだ。
 実は第1回では桜エビ~ずが優勝してファンは実力の違いを見せつけたなどと囃し立てていたが、この時はおそらく桜エビ陣営が仮想ライバルと考えていたアメフラっシにいきなり「リンドバーグ」をぶつけて叩き潰し圧勝したという経緯があった。
 確かに上位2チーム、なかんずく桜エビ~ずはパフォーマンスの完成度が高くてディフェンディングチャンピオンでもあり、まさに難攻不落の構え。他のチームがこれを打ち破るのは不可能とも思えた。対してアメフラっシは最近の特に歌唱力の成長度が著しく、この2チームは抜きん出た存在とも思われた。
 いかにも運営に格闘技ファンが多いスタダらしいイベントで、第1回はスタプラ内のアイドルグループのみで行ったが「外部のアイドルグループにも広く参加を呼びかける」(川上アキラ)ということで第2回が開催された。このやってみなければ分からないアウェーの現場に文字通り乗り込んできたアップアップガールズ(2)、monogatariの2グループの英断にまず拍手を送りたい。そして、どちらの運営もおそらくこの企画に勝利できることを信じて乗り込んできたのではないか。優勝はできなかったことは悔しいだろうし、特にmonogatariは今回の結果に納得してない*1かもしれないが、どちらもグループとしてのパフォーマンスに実力があることを見せつけ、爪痕を残したと思う。
 それぞれのファンは異論をはさむかも知れないが、アメフラっシ が優勝、桜桜エビ〜ずが僅差の2位という結果自体については現地で見ていた印象で言っても十分に納得できるものであった。しかし、アメフラっシの勝利は簡単なものではなかった。アップアップガールズ(2)とmonogatariの実力が未知数だったこともあり、優勝候補の桜エビ~ずはmonogatariとの対戦でいきなり一番の切り札である「リンドバーグ」を持ってきた。
 実はスタダの中でこのライブスタイルダンジョンVol.2の源流となる伝説のイベントが「俺の藤井 2016 in さいたまスーパーアリーナ ~Tynamite!!~」でこれについてはSPICEにレポートを書いた*2ので興味のある人は参照してみてほしいが、あの時にももクロは最初の対戦で当面のライバルとなると思われる対戦相手の私立恵比寿中学を叩き潰すかのように第1曲目に普通のライブではそこで歌うことはありえない「行くぜっ!怪盗少女」を投入。そこから破竹の連勝で格の違いを見せつけた*3。今回の桜エビ~ずもその先例に倣ってか、まだ様子も分かっていないmonogatariに手痛い洗礼でいきなり5-0の勝利。その勢いでもって2回戦はちみつロケットも5-0と圧勝。前半戦にしてすでに盤石の戦いぶりで場内には「ああ、また桜エビ~ずの圧勝かな」という雰囲気が漂いはじめた。
 一方、対抗馬となるはずだったアメフラっシは満を持して出してきたはずであった3bjunior曲「バトルロイヤル」で初登場の実力派アップアップガールズ(2)に2-3の敗北。いきなり先行きに暗雲が垂れ込めてしまう。終了後のインタビューで愛来が「またダメかとあきらめかけた瞬間もあった」と振り返っていたが、このあたりの時点での心境を語ったのだろう。私個人はこの日はややアメフラっシ応援モードで会場入りしていただけにパフォーマンス自体はいい出来栄えで勝利を確信した後の審査結果に落胆が激しく、同じようなことを思ったのも確かなのだ。ところが勝負のあやというのは不思議なもので、この両チームのスタートに実は大逆転劇の種が潜んでいたのだ。

【アメフラっシ】バトルロイヤル@2019年10月3日 ライブスタイルダンジョン Vol 2 審査員投票場面あり

 プロレスや格闘技に例えるならばセメント(ガチ)の戦いを仕掛ける桜エビ~ず、アメフラっシに対して、戦いそのもののエンターテイメント性を追求する独自の戦い方を追求しているのがはちみつロケットである。このグループの存在がこのイベントを深みのあるものにしている。ツイッター上では勝つ気のないものは参戦するななどの声も挙がっていたが、そういう人はプロレス興業のこととかをあまり知らない人ではないのかと思う。
自分の得意技を最初から出して対戦相手を圧倒するというのが桜エビ~ず、アメフラっシの戦い方だとすればはちみつロケットのパフォーマンスはそうではない。最初の戦いではライブスタイルダンジョン Vol.1で唯一の黒星をつけられたリベンジとばかりに第2の切り札曲「それは月曜の9時のように」を持ってきた桜エビ~ずの闘志を空回りさせるように「はちロケダンス体操 集まれダンスピーポー」という演目を持ち出す(笑)。
結局、審査員判定ではavecooさんが「これはいったい何を見せられたのでしょうか?」、竹中さんが「はちロケちゃんは勝ちにいかない所大好き」と0-5と一方的なワンサイドで敗れるのだが、これで桜エビ~ずが2戦終わった時点で10-0と断トツ1位になってしまったことがアメフラっシへの判官びいきの感情を審判に引き起こし奇跡の逆転劇への伏線となったのが面白い。
 はちみつロケットの第2戦は格闘技に例えるならば突如相手の得意な戦法を繰り出すという変則殺法。初戦でアメフラっシを打ち破ったアップアップガールズ(2)に対し、胸に「(仮)」と書かれた公式Tシャツで登場。姉貴分にあたるアップアップガールズ(仮)の持ち歌で勝負を挑み、負けはしたものの接戦に持ち込むことに成功。はちロケはふざけているだけに見えかねないのだが、この日は比較的歌唱力の高いメンバー2人を欠場しており、戦力的に飛車角落ちが否めない中で如何に戦うのかを考えての作戦といえるかもしれない。それだけに変則的な戦いから突如戦法を変えて、自らの持ち歌で対戦したアメフラっシ戦で0-5となすすべもなく完敗したのははちロケにとっては大ショックだったのではないか。それでも最後のmonogatariとの対戦ではメジャーデビュー前からの楽曲「フレンドリーム」でそれまでに見せなかったような本格的なアイドルらしさを見せ、そのギャップの魅力もあり、5-0の圧勝。巻き込まれてしまったmonogatariは災難というしかないけれど、変則的な戦いに徹しなからも第1回で桜エビ~ずに唯一の黒星をつけたアイドルとしての底力は見せつけたといえよう。

*1:審査にというのではなく自分たちのパフォーマンスについて、もっと戦えたのではないかということについて

*2:spice.eplus.jp

*3:対戦方式は変形の勝ち抜き戦で今回のものとは違った