横浜ダンスコレクション　コンペティションII1日目@にぎわい座　横浜のげシャーレ

　若手を対象にした 横浜ダンスコレクション　コンペティションII（2月６・７日、横浜のげシャーレ)にどんな作品が登場するかも毎年楽しみだ。審査員による審査結果とは無関係に自分なりの評価をあげていくのもここ最近の楽しみ。今年もできるだけ感想をアップしていきたい。
　初日最も惹き付けられたのは黒田勇の「狼狽」＝写真下＝。男女(黒田勇・岡田玲奈)のデュオだが、それぞれの身体能力の高さと柔軟性を生かしたアクロバティックな動きの連鎖が相当に独創的。特に女性でありながらこの振り付けの身体的負荷について行けている岡田玲奈はすごいと思った。まだ、コンビを組んで1年少しらしいか、そうとは思えないほど息が合っていて、あまり男女の差にとらわれず相互にリフトし合うような変形リフトの連続は極めてスリリングだ。
　男女のデュオというと、ともにトヨタコレオグラフィーアワードのグランプリを獲得した砂連尾理＋寺田みさこ
*1
、セレノグラフィカ
*2が思い起こされるが、これらは２組とも男女の関係性を抽象化したようなダンスであった。黒田らによるものはまったく方向性が異なる。2人の身体が組み合わさって出来上がる造形は人間というより、未知の生物か動くオブジェのようにも見えた。こういうデュオは男同士ならともかは男女ではあまりないのではないか。そこが個性的だと思った。
　作品全体としては美術として使ったテープの使い方が雑に見えるなど改良の余地がある部分がないではないが、この日見た中では抜きん出ている。

f:id:simokitazawa:20200207131052j:plain — 黒田勇

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　甲斐ひろなは２年連続でのコンペティションIIのファイナリスト選出。昨年は「女性のソロダンス作品として応募してくるものにはありがちなのだが、ダンサーが音楽に合わせてただ踊っているということを超える世界観なり、踊られているもののキャラクターの強さに欠けている」などと辛めの感想を書いてしまったのだが、今年の『Dogs Have No Hell』は違った。犬と人間を交互に演じるという不思議な面白さを持つ作品で、なぜこういう作品になったのかが理解に苦しむところはあるのだが、奇妙な魅力があった。まだ、この人がどういうダンス作家なのかつかみかねている部分があるが、昨年と比べると格段の進歩ではないか。
　小林萌『machi』は女性２人のデュオ（odd fish=小林萌・渡邊華蓮）作品。手数やムーブメントのバラエティーは評価すべきだと感じた。毎年書いているが、デュオには時間がかかるので、まだこれからだと思うし、可能性は感じた。
　ただ、コンペ作品として考えるといかんせん照明が暗すぎる。ダンス系の作家によくありがちだが、顔の表情も分からないし、せっかくの細かいディティールが全然見えないのだ。この種のコンペで暗い照明はご法度ではないかと思ってしまった。
　惜しまれたのは髙橋灯『4’33″』。表題は当然ジョン・ケージの『4’33″』*3から取っているはずだが、実際の作品の方向性はジョン・ケージ的なコンセプトとはかけ離れていると感じた。
　ダンサーとしての力量もあるし、作品としてもそれなりの出来栄えのだが、やはり『4’33″』を表題としたのであればそれを踏まえた作品になっていないとだめなのではないか。それがなければ印象も違ったかも。それだけに残念だった。
　まだ19歳で英国のラバンスクールに通っているようなので頭でっかちにならないように頑張ってほしい。
　ヤマグチリオ『Little love』はヤマグチが一目見てとてもいいダンサーだなとは思った。ヒップホップやジャズの動きを自在に組み合わせたムーブメントにも個性はあった。だが、作品としてはぶつ切りで終わった感が強い。ただ頑張って踊っているという域を超えるような何かが感じにくかった。
　橋本ロマンス『サイクロン・クロニクル』は多摩美術大学出身というので、少しメディアアート的なものを期待していたが、意外とオーソドックスなダンス作品。冒頭はかなり面白くてどう展開していくのかとわくわくしながら、期待して見ていたのだが、繰り返し構造に終始する。構成的に単調過ぎたのではと思ってしまった。
　初日時点では黒田勇が圧倒的と感じたが、２日目にはどんな作品が登場するだろうか。期待したい。

横浜ダンスコレクション　コンペティションII
2.6 [thu]　19:00 ※上演順未定

甲斐ひろな『Dogs Have No Hell』
黒田勇『狼狽』
小林萌『machi』
髙橋灯『4’33″』
橋本ロマンス『サイクロン・クロニクル』
ヤマグチリオ『Little love』

2.7 [fri]　19:00 ※上演順未定
NISHIMURA KAIYA『NO ONE KNOWS ME』
木村素子『MATE』
佐伯春樺『Persona』
山田暁『幽の域』
山下恵実『互いに交わることのない、いくつかの』