下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンスなど様々な文化的事象を批評するサイト。

オフィスコットーネ レパートリーシアター「山の声 ―ある登山者の追想―」@Space早稲田

フィスコットーネ レパートリーシアター「山の声 ―ある登山者の追想―」@Space早稲田

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山の声
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 河野洋一郎(南河内万歳一座)、山田百次(ホエイ)による新コンビがよかった。この「山の声」の公演はそれこそ大竹野正典生前の初演時を始め、さまざまなキャスト、演出のものを観劇してきたが、オリジナルを超えるものはなかなか見ることができなかった。見た時の印象はどうしても初めての時が強くなるわけだし、それは仕方ないところもあるが、そういう中でも今回の出来栄えはよく、初演時に肉薄していたのではないか。
登山者1(加藤文太郎)を演じた河野洋一郎が役者としての年輪を感じさせるいい味を出している。ネイティブの関西弁がニュアンスに一味を付け加えているが、彼の役者人生の中でも屈指の作品となったのではないか。というか今後演じ継いでいけばそうなるポテンシャルを確実に持っていたと思う。河野の存在感に触発されて、登山者2(吉田登美久)の山田百次も好演だった前回公演をも凌駕した演技を見せている。この二人の野育ちを感じさせる俳優としての持ち味があり、この作品によく合致していたと思う。
 舞台はオフィスコットーネ レパートリーシアターと題され今後も海外も含め様々な会場での上演を想定して製作したものだ。今回はコロナ渦で予定されていた札幌公演を断念せざるをえなくなったのは残念だったが、今回のキャストはもっといろんな観客に見てもらいたい内容となった。コロナ感染の高リスク(高齢、糖尿病)であり、観劇を迷ったが、「これだけは見たい」と劇場に足を運んだ甲斐はあった。週末に上演が可能かどうか予断を許さない状況になりつつあるが見ることができる人はぜひ見るべき舞台だ。
作品で描かれるのは雪山で遭難した二人の男たちの極限的な状況だが、その息が詰まるような空気感は新型コロナによって引き起こされたなんとも重々しい現在の状況下で見ると平常時には感じられない緊迫感が漂ってくる。いささか不謹慎な物言いにもなるが、それが一層舞台のレアリティーを高めていたことも確かなのだった。

第16回OMS戯曲賞大賞作品
作:大竹野正典(くじら企画)
演出:綿貫凜

登山者1:河野洋一郎 / 登山者2:山田百次


作品概要

「人は死を賭けてまで何故、山に挑み続けるのか―――」

2009年不慮の事故により48歳という若さで世を去った大阪の劇作家・大竹野正典さん。彼の遺作であり 最高傑作である「山の声」を上演致します。

本作品は、小説「孤高の人」のモデル登山家・加藤文太郎の生き様と厳冬期槍ヶ岳の遭難事故をモチー フに描いています。昭和初期、社会人登山家としての道を開拓し、果敢に独り雪山に挑戦し続けた加藤文 太郎。いかなる場合でも周到な計画のもとに単独行動する彼が、岳友・吉田登美久と共に槍ヶ岳で消息を 絶ったのは、昭和11年の厳冬だった・・・。

「人は死を賭けてまで何故、山に挑み続けるのか―――」彼のこの果てしない問いかけはやがては「人は何故、生きるのか」という普遍的なテーマに繋がっていくのです。


山の芝居にしようと思い立って、久々に台本を書きました。
相も変わらずの殴り書きで申し訳ないばかりです。
最近、山登りばかりやっておって、この道も相当奥が深いわけですが、芝居も山登りも似たようなものだなァと最近、感慨深く思っておる次第であります。金にもならんしんどい事にどうしてこう血道をあげるのか、我ながら自分の業の深さにつくづく溜息付くのですが、しんどくないと面白くないから仕方ありません。
今回、芝居で取り上げた加藤文太郎という人物も、歩く事がこの上なく好きという変わった人物で、お前アホかと云うぐらい、山から山へと彷徨しております。
しかもそれが高じて普通の人ならば死ぬなと思う様なところばかり行ってしまうのも彼の業の深さの賜物だったのでしょう。
植村直己などは、彼の生まれ変わりだったのかも知れません。
という訳で紙数も尽きました。孤独な二人の役者にエールを送ってやってください。
本日は御来場頂きまことに有難うございました。

作・演出 大竹野正典

(『山の声』2008年12月 くじら企画第十五回公演 公演パンフレットより)

【※延期】 2020年3月14、15日 札幌・扇谷記念スタジオ・シアターZOO
2020年3月25日~29日 東京・Space早稲田

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SPACE早稲田

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