下北沢通信

中西理の下北沢通信

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しおこうじ玉井詩織×坂崎幸之助のお台場フォーク村!第117夜「Dearest BEATLES 無観客生配信」@フジテレビNEXT

しおこうじ玉井詩織×坂崎幸之助のお台場フォーク村!第117夜「Dearest BEATLES 無観客生配信」@フジテレビNEXT

私は若いころからのビートルズファンだ。さらに斎藤由貴の大ファンでもあり、ももクロまでは数少ない実際にライブにも行ったことがある女性アイドルでもあった。そしてSpotifyの昨年のアクセスランキングでは堂々1位だったアメフラっシから今回は鈴木萌花も出演ということになれば見る前から本当に楽しみでならない今月のフォーク村なのであった。
まず最初に残念だったのは斉藤由貴が声のコンディションが万全ではなかったことだ。もともとウィスパーボイスなどと言われるような少しハスキーなささやくような歌い方*1が彼女の特徴ではあるのだが、歌い声の語尾の部分がいつもほんの少しかすれているんじゃないかという違和感を感じたのだった。「さよなら」と「白い炎」をいずれも武部聡志のピアノによるアコースティックバージョンの新アレンジで歌った。特に「さよなら」は普段よりもテンポも落としたアレンジであったので、歌っている時はそのせいだろうかとも迷うほどの僅かな違和感ではあっのだが、歌い終わった後に話す声は風邪引きのようなかすれた声だったので、やはり万全ではなかったんだなというのが初めて確認できた。ただ、考えてみるともし他の人だったらこのぐらいコンディションが悪いと歌えないだろうと思うところを技術でこなしていたのは凄いと思った。しかし、それでも歌を聴くチャンス自体が少ない人なのでやはり万全の声で聴きたかったと思ってしまった*2
 番組の最初の3曲はこのところ、坂崎幸之助によるももクロ曲、玉井詩織によるTHE ALFEE曲、しおこうじ(坂崎幸之助玉井詩織)による外国曲というラインナップが定着した感がある。
 特に楽しみなのが外国曲。この日はサイモンとガーファンクルもカバーしたEverly Brothersの「Bye Bye Love」*3だったが、かなり、いい出来だと思う。ももクロメンバーのソロでの歌唱はほかの3人が非常に特徴的な声質、歌い方であるため、それと比べてしまうと玉井詩織は少し線が細く感じ、もの足りないと思ってしまうことが多い。ところが不思議なことにその声は誰かの声と重なると俄然魅力的に感じる。さらに加えて、相手の声をより魅力的に感じさせるという特性があり、ももクロの歌唱でもそうした特性が生かされている。だが、この日の「Bye Bye Love」は坂崎幸之助のメインボーカル、玉井詩織のバッキングボーカルなのだが、こういう組み合わせの時に魅力はむしろ生き、しおこうじはそういう意味では玉井詩織の魅力を十全に引き出すための発明だと思った*4
この日はビートルズの特集がメインディッシュで、それもあって杉真理が大人ゲストとなったが、その特集を挟み込むように杉真理の楽曲提供による2曲の新曲がいずれも初披露された。その1曲目がアメフラっシの鈴木萌花の「I'm your SINGER 」であった。鈴木萌花愛来と一緒にギターデュオ、あいらもえかとしての活動を続けてきたのだが、コロナ禍の中ではあるけれど主軸のアメフラっシの活動が軌道に乗ってきたこともあり、あいらもえかとしての活動は少なめになっていた。今は両者の活動は完全に分離されていて、アメフラっシの活動の中であいらもえか系の楽曲が披露されることはないのだが、アメフラっシはせっかく「変幻自在」と銘打っているのだから、個人的には数多くの化身の中のひとつとしてあいらもえかの楽曲も活用していくべきではないかと思っている。萌花の新曲自体はこの日はビートルズ曲への対応もあってフルバンドでの披露だったこともあろうが、「グループサウンズか?」という昭和感を感じさせるもの*5で思わず笑ってしまった。最近の最先端にアップデイトされたアメフラっシ楽曲と比べると対極的な曲想にも感じたが、アメフラっシもあいらもえかも様々なアーティストの楽曲提供を受けてており、楽曲の傾向にも幅があるのが特徴だから、こういう曲が入っているのもいいかもれない。歌詞も先輩であるももクロへの憧れをストレートに歌ったもので、正確なところはうろ覚えではあるが「あんな風にできるのはどれほどの努力をしたんだろう」などの意味合いの歌詞が入り、努力の人である萌花らしさを感じさせる*6ものだった。
 「Dearest BEATLES 無観客生配信」はアルバム1枚を収録順に歌っていくというライブ「Dear BEATLES」のコンセプトにはおよばないが、ビートルズのベスト盤である通称「赤盤」*7から坂崎幸之助が自らセレクトした10曲を続けて演奏するというものだった「All My Loving 」「A Hard Day's Night 」「I Feel Fine」 「Yesterday」 「HELP! 」「Nowhere Man」「IN My LIFE 」「Girl 」「Eleanor Rigby 」「Yellow Submarine」の10曲で、「A Hard Day's Night 」「Yesterday」 「HELP! 」のような初期の代表曲や個人的にも大好きな「Eleanor Rigby 」も含んではいるから、初めてのビートルズ特集としては悪くはないのだが、「赤盤」は「1962~1966」の副題にあるように初期楽曲から選んだものだった。
 演奏は格段に難しくなるという問題はあるけれど、私は後期の楽曲の方が好みということもあって、ないものねだりはあるけれど後期の楽曲を聴きたかった*8。さらにないものねだりをすれば今回はほとんどの曲を坂崎幸之助杉真理大野真澄が3声のコーラスで歌っていて、違ったのは玉井詩織の「All My Loving」と加藤いづみ鈴木萌花の「Girl 」、そしてドラムの清水淳がボーカルをとったリンゴ・スター曲「イエロー・サブマリン」だけだったが、せめて半分は女性メンバーもボーカルをとってほしかった*9
 とはいえ、この日のクライマックスはしおこうじ初のオリジナル曲「歌はどこへ行ったの?」の初披露であった。これはコロナ禍での思いを仮託したストレートにいい曲でもあった。終盤詩織が珍しく「この歌を引っ提げて武道館に行きましょう」と珍しく宣言した。台本にそう書いてあったかもしれないが、100%その気がなければ台本通りに読まない人なので(笑い)、この調子でオリジナル曲とレパートリーの英語曲を増やしてぜひ武道館公演を実現してほしいと思う。

セットリスト
M01:吼えろ (坂崎幸之助ももクロ)
M02:あなたの声が聞こえる 玉井詩織THE ALFEE)
M03:Bye Bye Love (坂崎幸之助玉井詩織/Everly Brothers)
M04:「さよなら」(斉藤由貴斉藤由貴)
M05:白い炎 (斉藤由貴斉藤由貴)
M06:Dont Stop the music (杉真理杉真理)

M07:最高の法則 (杉真理杉真理)
M08:I'm your SINGER (鈴木萌花鈴木萌花)
M09:All My Loving (玉井詩織Beatles)
M10:A Hard Day's Night (しおこうじ&大野真澄杉真理&萌花/Beatles)
M11:I Feel Fine (しおこうじ&大野真澄杉真理&萌花/Beatles)
M12:Yesterday (しおこうじ&大野真澄杉真理&萌花/Beatles)
M13:HELP! (しおこうじ&大野真澄杉真理&萌花/Beatles)
M14:Nowhere Man (しおこうじ&大野真澄杉真理&萌花/Beatles)
M15:IN My LIFE (しおこうじ&大野真澄杉真理&萌花/Beatles)
M16:Girl (加藤いづみ鈴木萌花Beatles)
M17:Eleanor Rigby (しおこうじ&大野真澄杉真理&萌花/Beatles)
M18:Yellow Submarine (清水淳&しおこうじ&大野真澄杉真理&萌花/Beatles)
M19:歌はどこへ行ったの? (しおこうじ&杉真理/しおこうじ)

ゲスト
杉真理
斉藤由貴
鈴木萌花

大野真澄
武部聡志

しおこうじ(玉井詩織×坂崎幸之助)

生演奏
ダウンタウンしおこうじバンド
音楽監督 宗本康兵
加藤いづみ/佐藤大剛/竹上良成/やまもとひかる//清水淳

*1:こちらはアルバム収録曲のうちこの日は歌わなかった「卒業」。
斉藤由貴「卒業 (from水響曲)」スタジオライブ(feat.武部聡志)

*2:彼女にとって大恩人である武部聡志の誕生日回であり、昨年は出られなくて手紙だけに無理を押して歌ったのではないかと推測する。

*3:
Simon & Garfunkel - Bye Bye Love

*4:この後の「All My Loving 」のように詩織がメインボーカルの時も坂崎が一緒にはもることで線の細さはかなりカバーされる。いずれにせよ一緒に歌う相手の声をつぶさないのが玉井詩織の一番の武器なのだと思う。

*5:番組中ではフィル・スペクターサウンドと表現されていた。

*6:アメフラっシでの推しは愛来なのだが、不器用だけれど努力の人である萌花のあり方はかつての「努力の天才」のことを思い出さざるをえなくなる。

*7:

*8:ただ、最後の「Yellow Submarine」へのコメントで練習を重ねなくともできるものと、詩織や萌花も参加しやすいものなどの条件を挙げていたから、それ以外の楽曲の選択にもそうしたことは考慮されていたのだろうとも思う。後期の楽曲はDMBの実力をもってすれば生演奏が可能だとは思うが、当時は再現不能と思われていた楽曲も多かった。

*9:ただ、この日はベースのやまもとひかりが風邪をこじらせて、体調不良で欠席となり、本来彼女がベースボーカルを担当するはずだった楽曲もあったはずだ。「Dear BEATLES」にはシンガーソングライター系の女性アーティストが毎年参加しており、いつか玉井詩織にも出てほしいが、実力からいって即戦力の候補者はやまもとひかりだと思う。