谷賢一氏がパワハラ問題について事情を説明
劇作家・演出家の谷賢一氏が自分のホームページに日本劇作家協会のWSで起こったパワハラ事案について何が起こったのかの詳しい事情を明らかにした*1。劇作家協会のホームページでの協会側の謝罪文*2からはこのような事情は到底汲み取れず、むしろパワハラ事案を隠蔽したかのような印象を受けてしまう。実際のWSで起きたことについて、進行上の落ち度があったかどうかは今後も再発防止のためにも検証がなされなければならないが、協会の謝罪文はミスリーディングだったと思う。
谷氏の説明から汲み取る限り、今回の事案は演劇の指導のような場面で起こったパワハラではない。その事情について一部引用するが繊細な問題のためにぜひ谷氏の挙げた文章全文を参照してほしい。
2/17(火)〜2/19(木)にかけて開催された当該ワークショップの2日目、参加者の一人(仮にX氏とします)から質問があり、議論となりました。私はX氏の発言内容に大きな問題を感じたため、「データに基づかずに汚染を強調することは福島への風評被害に繋がる」「ネット配信もあるのだから福島への差別に繋がるような発言はデータを提示しない限り控えるべき」と繰り返し伝えました。しかしX氏は発言を続け、私との間で口論のような状態になりました。
事案は演劇の指導ではなく、福島問題に関する論争から起こり、「福島三部作」を見た人には誰でも分かるように谷氏のこの問題に関する根幹にかかわること*3であるから、適当に流すことはせず「データに基づかずに汚染を強調することは福島への風評被害に繋がる」という持論を相手に伝えたところ論争になったということらしい。相手の言い分も聞いてみないと確実なことは言えないが、私もトークイベントで私がそれまでに主張したことをまったく無視したような意見が出てきた場合はそれについて論じあうこともあるし、相手の主張を批判する過程で強い口調にも時にはなる。けれど、それを「パワハラだ」と言われたら、「それじゃ議論という行為自体が成り立たない」と思ってしまう*4。
もうひとつの問題はこのWSがオンラインワークショップで起こったということで、ワークショップ自体はそういう問題について論じあう場として設定されたものではないため、主宰していた劇作家協会側が発話者の発言機会を結果的に制限するようになったということもあるのかもしれない。ただ、私自身は公開されていたという映像も見ていないのでこれ以上のことに言及するのは避けたい。ひとつだけ確実に言えるのはほとんどの人に演劇の稽古の場でのパワハラ行為があったと誤解させた日本劇作家協会の謝罪文は明らかにおかしい。谷賢一氏の名前を伏せることで二重に谷氏の名誉を棄損していたとも感じる。なんらかの釈明があってしかるべきではないかと思う。
谷氏のコメントを読んで、今回の現場を知らないので当てはまるかは別にして、自分の言動が正しいかどうかはハラスメントとは全く関係がなく、むしろ自分の言動が正しければ正しい(と思っている)ほどハラスメントには気づきにくいことを改めて考えた。コアビリーフはハラスメントにつながりやすい。
— JunnosukeTada@JPN (@TDLTJ) 2021年5月8日
もちろん本人も謝罪しているので責めるつもりはないけども、個人的には今後谷氏のコアビリーフ=福島に関することで強い言動にならないような対策はお勧めしたい。ハラスメント防止も大切だけど、ハラスメント発生後の対応についても業界として考えていかなくてはいけないと思う。
— JunnosukeTada@JPN (@TDLTJ) 2021年5月8日
この問題について多田淳之介氏が谷氏を批判している。信念とパワハラは関係ないそうだ。だが、自戒の念として言うのは分かるけれどこんな風に批判したら事情がどうであろうとパワハラとされた方はいつも悪いということになりかねない。私は承服しがたい。もちろん、ハラスメントとは関係なく、礼儀として議論の際に相手を尊重することが大事なのはいうまでもない。とはいえ、ここで谷氏を擁護すれば「かばいあっている奴ら」のようにとられかねないので厳しい論調たらざるをえないのかもしれないが。