下北沢通信

中西理の下北沢通信

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KARASアップデイトダンス「踊るうた2」(勅使川原三郎振付)荻窪アパラタス

KARASアップデイトダンス「踊るうた2」(勅使川原三郎振付)荻窪アパラタス

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勅使川原三郎振付

佐東利穂子出演

公演期間中には勅使川原三郎のみソロ出演の日もあるようだが、この日は全編佐東利穂子によるソロダンスの回となった。佐東のソロダンス作品もあるけれど、これだけいろんな曲想の楽曲を1時間近い時間、ひとりで踊り続けるということも滅多にないことで、佐東のダンス表現のいろんな側面を堪能することができた貴重な機会であった。
クラシックなどのいろんな楽曲が作品の中で使用されて、それに合わせて踊るということはもちろんよくあるのだが、ボーカル曲で踊ると特に日本語の歌詞の時は言葉の意味というものと身体表現との関係性を意識えないし、ボーカルであってもそれがスキャットであったり、外国語曲であったりすると、より「声」や「音」という側面が強調されることになってきたりして、踊る身体と音楽の関わり合いのあり方が変容してくるというのが興味深い。
「好きな曲に合わせてただ踊ってみた」というようなのとは違うと終了後の挨拶で説明がされたが、選曲はどう考えても佐東ではなく勅使川原がしたのだろうというのは明瞭だが、戸川純の楽曲が複数選ばれていて、こういうのは普段は勅使川原作品にはあまり使われないような音楽だから、かなり意外で興味深かった。

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「蛹化の女」は原曲はパッヘルベルのカノンだからクラシック曲で勅使川原三郎や佐東利穂子が踊っても何の違和感もない楽曲なのだけれど、戸川純によって紡ぎだされる歌声とこの歌詞に合わせて踊られるとそれはどこがどうとははっきりということは難しいのだけれど、音楽に対峙した時の身体のあり方が全然変わってくる。最近の勅使川原三郎作品は文学などの物語を原作とする作品と音楽と対峙したダンスの二種類に大別されるが、そういう意味では「踊るうた」はどちらの要素も併せ持った作品として、興味深い試みとなりそうだ。

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