下北沢通信

中西理の下北沢通信

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気鋭の若手落語家が三遊亭圓朝「牡丹灯籠」を連続上演。三遊亭わん丈「わん丈ストリートVol.31 三遊亭圓朝『牡丹燈籠』から 『お国・源次郎』『孝助の槍』 」@国立演芸場

三遊亭わん丈「わん丈ストリートVol.31 三遊亭圓朝『牡丹燈籠』から『お国・源次郎』『孝助の槍』」@国立演芸場

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三遊亭円朝の「牡丹燈籠」*1はこれまで歌舞伎や演劇*2 *3、映画などいろんなジャンルで上演されてきたが、落語としては現代ではあまりこれを演じる人はあまりいなかった。というのは全編を演じると30時間近くとなる大作であるためだ。とはいえ、調べてみるとまったくやられてないわけでもないようで立川志の輔が<志の輔らくごin下北沢2021「牡丹灯籠」>と題して「怪談牡丹燈籠」を2時間半程度にまとめた演目を本多劇場で上演。これは2006年から毎年行われているもののようだ。わん丈「牡丹燈籠」がこれを意識してないといえば嘘になるのだろうが、私は志の輔のを見ていないのでそれについてはなにもいうことができそうにない。
わん丈の「牡丹燈籠」はネットで調べてみると昨年4月に初演:牡丹燈籠より「お露新三郎」を上演し国立演芸場での隔月連続上演をスタート。この後「お札はがし」など怪談話として知られている物語を連続で上演した後、こちらはあまり知られていない孝助の仇討に関係する筋立ての方に取り組み、その終盤部分に差し掛かっているところである。今回の部分だけだとお話の語りとしてはそれなりに面白いのではあるが「牡丹燈籠」という表題から連想される怪異譚の部分はまったくなく、おそらく落語的にはかなり面白いのではないかと思う幽霊と取引して大金をせしめようという伴蔵と妻のお峰のようなところ*4もない。忠義がどうだとか主君への義理がどうだというような筋立てが目立つが現代では違和感は否めないだろう。歌舞伎みたいなものだと割り切ればいいとはいっても、現代の観客にストレートに伝わるには難しい部分を含んでいると感じた。派生作品としての演劇作品などでこちらの筋立てがほとんど切り捨てられているのはそういう事情もあるからだろうと推察はする。それをそれなりに飽きさせずに見せるということには相当な技量が必要だと思う。わん丈も今回のような部分の連続上演を終了した上で、これを取りまとめた落語の上演を計画しており、それがどのようなものになるのかについては楽しみなのである。

※前回までのダイジェスト有
2022.2.8(火)
開場18:30
開演19時
終演予定20:45
国立演芸場

*1:ja.wikipedia.org

*2:simokitazawa.hatenablog.comsimokitazawa.hatenablog.com

*3:goods-yamanote.shop-pro.jp

*4:加藤健一事務所の「牡丹灯籠」はこの辺りを捧腹絶倒のコメディーとしていた。