下北沢通信

中西理の下北沢通信

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新アルバム「祝典」ツアーの終着点 完成度の高さ見せつけたライブ『ももいろクローバーZ “祝典” ツアーファイナル』@武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ

ももいろクローバーZ “祝典” ツアーファイナル』@武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ



ももクロの新アルバム「祝宴」の全国を回ってのアルバムツアーのファイナルは武蔵野の森総合スポーツプラザのメインアリーナ。2か月近くをかけて全国14都市で計17公演のももクロとしてはかなり大規模なツアーではあったが、個人的な事情で遠征が難しく、日本武道館での公演は抽選に外れチケットが取れなかったこともあり、このファイナルが初めてのライブ参戦となった。
アルバムツアーは以前にも「AMARANTHUS」「白金の夜明け」二枚組みアルバムを出した際のドームツアー*1には行ったことがあるのだが、最初のアルバムツアーとして行った「5TH DIMENTION」ツアーは抽選にすべて外れていくことができず、ツアーではないけれどもアルバム「MOMOIRO CLOVERZ」の際の企画ライブも東京キネマ倶楽部という狭い会場で行われた超レアな公演だったこともあり、痛恨の極みではあるがどちらも映像で見ることしかできなかった。実はももクロのライブの演劇的趣向のライブとしてはこの二つが最高峰だったのではないかと映像を見て悔やんでいたのだが、その意味では今回のライブは見逃すわけにはいかないものと考えており、最後の最後とはいえ今回のライブをやっと見ることができたのは非常に喜ぶべきことであった。
 ライブの本編はアルバム「祝宴」の曲順どおりに進行するが、このツアーの間に何度も繰り返し演じられてきたこともあり、ライブはアルバム音源を超えたようなパフォーマンスの完成度の高さを感じさせた。個々の楽曲を見ても「ショービズ」「孤独の中で鳴るBeatっ!」「なんとなく最低な日々」のように結成14年を迎え、全員が20代半ばを超え、大人の女性としての等身大の表現ができる現在のももクロだからこそできる表現が髄所に見られ、アイドルのグループでは滅多にない表現の到達点に立っていることを感じさせた。
 「祝宴」というアルバムは表題からしてセレモニーとか通過儀礼のような儀式的な意味合いを感じさせはするが、同じくコンセプトアルバムとされた「5TH DIMENTION」「AMARANTHUS」「白金の夜明け」がそれぞれかなりガチガチの世界観を反映させたトータルコンセプトを強く打ち出したアルバムであったのに比べると楽曲の内容もよく言えば多彩、否定的な評価をすれば統一的なイメージはあまりなくて、むしろ「幕の内弁当」的にも見えかねないところがある。
 「幕の内弁当」などと評すると大抵は悪口にもなりかねないのだが、あえて料理の比喩で説明するならば収録楽曲にも「満漢全席」という曲があるが、中華料理のフルコース」のようなところがあるのである。
 例えばこのアルバムのリード曲は「MYSTERION」であり、この曲およびにそこで行うパフォーマンスが生み出している楽曲イメージの宇宙観というか壮大さは「5TH DIMENTION」の「NEO Stargate」などの系譜を感じさせるところもあるのだが、「NEO Stargate」がアルバム「5TH DIMENTION」全体のイメージを牽引しているような役割は「MYSTERION」はこのアルバムで果たしているとは到底思えないところがある。
 「祝祭」というアルバムならびにこのライブの全体的なイメージを牽引しているのは「ショービズ」「孤独の中で鳴るBeatっ!」「なんとなく最低な日々」のようなより自然体で現在の心境を歌った歌ではないかと感じたのである。実はこのライブレポートを書くに際して、「DOME TREK 2016」のファイナルの時の感想を見返してみたら「名古屋、京セラ、西武プリンスの3会場6ステージに参戦することができたのだが、感心させられたのはメンバー全員歌がうまくなったなあということだ」と書いていて、逆に驚いたのはももクロというグループの本当の凄さはそれから6年たっても似たような感想が思い浮かんでいたということにあるかもしれない。つまり、ライブを重ねるごとにいまだにうまくなり続けていること。
 今回特に印象に残ったのは高城れにの進化。彼女はもともと声質がいいので、それがももクロの歌に独特の癒しの感覚を付け加えていたけれども、最近は安定に加えて、アタックした時の高音部の力強さには格別なものがある。「孤独の中で鳴るBeatっ!」などはその典型だが、ももクロをそのエモーショナルな歌唱で創成期から印象付けてきたセンター、百田夏菜子に肉薄する存在となりつつあると感じた。
 佐々木彩夏の高音部の抜けもこのところ著しい成長があったが、この日はドスが効いたような低音の響きも素晴らしく、ストレートの声質に一層の磨きがかかってきた玉井詩織も含めて、4人それぞれのソロ歌唱は「うまくなったなあ」とつくづく思わせた。特にそのことを実感させたのが、本編最後に歌った「また逢う日まで」だった。歌唱力を外部に向けてアピールする意味ではこれからも折に触れ歌ってほしいと思わせたカバー曲であった*2

ももいろクローバーZ「MOMOIRO CLOVER Z 6th ALBUM TOUR “祝典”」2022年6月25日 武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ セットリスト
SE. Opening Ceremony -阿-
01. PLAY!
02. ダンシングタンク♡
03. MYSTERION
04. 満漢全席
05. BUTTOBI!
06. ショービズ
07. HAND
SE. Intermission -闍-
08. momo
09. なんとなく最低な日々
10. stay gold
11. 月色Chainon
12. 孤独の中で鳴るBeatっ!
13. 手紙
14. また逢う日まで
SE. Closing Session -梨-
<アンコール>
SE. overture ~ももいろクローバーZ参上!!~
15. あんた飛ばしすぎ!!
16. 笑一笑 ~シャオイーシャオ!~
17. 走れ! -ZZ ver.-

6月25日(土) 16:30開場 / 18:00開演
東京・武蔵野の森総合スポーツプラザ

【チケット情報】
全会場・全席種共通:8,900円(税込) / 2枚まで
販売席種
・指定席 / 2枚まで
・着席指定席 / 2枚まで※公演中は着席でご観覧いただきます。
※全会場・全席種共通:中学生未満のお客様はご入場できません。

simokitazawa.hatenablog.com

*1:simokitazawa.hatenablog.com

*2:ベストはFNS歌謡祭で披露してくれることだが、これ1曲だけ歌うんだとなんだかんあと感じる難しさはある。