下北沢通信

中西理の下北沢通信

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サラダボール「三人姉妹 monologue」@こまばアゴラ劇場

サラダボール「三人姉妹 monologue」@こまばアゴラ劇場


サラダボール「三人姉妹 monologue」@こまばアゴラ劇場を観劇。もはや古典だということもあるが、海外の演劇作家の中ではチェーホフシェイクスピアと並んで、様々なバージョンの舞台の観劇経験が豊富な作家であり、「三人姉妹」もどちらかというとオーソドックスな加藤健一事務所、東京乾電池蜷川幸雄演出版の上演舞台から数度にわたる地点「三人姉妹」、朝鮮半島に舞台を移した東京デスロックの「亡国の三人姉妹」や平田オリザのアンドロイド演劇版「三人姉妹」などというちょっと変わり種の作品もあり、そういうものの中では「三人姉妹 monologue」は女優3人だけですべてを演じるということから、原テクストをカットした部分がかなりあることは否定しないけれど、ヴェルシーニン、トゥーゼンバフ、アンドレイらも女優らがひげなどをつけて扮装して演じ分けていくので「三人姉妹 monologue」という表題から想像していたのよりはオーソドックな内容の舞台となっていた。
 原作は三幕構成だが、今回の上演では途中休憩が一度だけはいる二幕構成となっていて、一幕と二幕では舞台のテイストが一変するのが面白い。一幕ではいくつもの場面で出演者3人が女性コーラスグループのように歌を歌う場面があって、ところどころボードヴィル調の演出も取り入れられるなど娯楽色が強い楽しい舞台となっていたのが、第二部の冒頭の火事の部分以降は静寂のなかで3人の女優が滔滔と語るようなシリアス味の強い舞台となっていき、その中でかつては期待されていた兄アンドレイの凋落ぶりと、その妻ナターシャの傍若無人ぶりが浮かび上がってくるような仕掛けとなっている。そして、それは当地に駐屯していた部隊がこの地を去ることになり、ヴェルシーニンとの別れを迎えるマーシャの失望感や校長としての勤務を全うするためにこの地を離れる長女オルガ、結婚相手が決闘により突然亡くし、ひとり旅立つことになるイリーナと三人の姉妹が永遠にこの家を去っていく場面までなだらかに滔滔と演じられるのである。

脚本・演出:西村和宏
原作:チェーホフ 翻訳:神西 清 振付:阪本麻郁
「もう渡り鳥が飛んで行く……白鳥かしら、それとも雁か。
可愛い鳥たち。いいわねえ、お前たちは……」
歌って踊って語って、また語る。三人の俳優によるチェーホフ『三人姉妹』

生まれ故郷のモスクワを離れ、田舎で暮らすプローゾロフ家の三姉妹たち。将軍の娘として過ごした華やかな生活も今は過去。それぞれに満たされぬ思いを抱きながらモスクワに帰る日を夢みている姉妹たち。そこにモスクワからこの町に新しく駐屯する軍人たちがやってきて……。姉妹の生活がゆっくりと動きはじめる。

西村和宏
演出家、サラダボール主宰、四国学院大学准教授、青年団演出部、ノトススタジオ芸術監督。
1973年生、兵庫県出身。1999年より川村毅氏が主宰する劇団第三エロチカで俳優として活動。2002年にサラダボールを立ち上げ、以降すべての演出を手掛ける。2005年より平田オリザ氏が主宰する劇団青年団の演出部に所属。2011年より四国学院大学身体表現と舞台芸術メジャー(演劇コース)にて教鞭を執る。これを機に活動の拠点を香川県に移し、高校生向けのワークショップや市民劇創作、子供向け音楽劇など四国内で幅広く演劇教育や創作活動を行っている。

サラダボール
演出家・西村和宏が、古典戯曲から現代戯曲まで様々なジャンルの作品を上演する場。座付作家・鈴木大介のシュールな不条理現代劇からシェイクスピア三島由紀夫岸田國士まで多様な戯曲を扱い、上演ごとに作品の色合いが大胆に変化する。コメディ色の濃い作品から、歌にダンスのエンタメショー、疾走感溢れる群像劇、言葉の妙を味わう対話劇、親子で楽しめる子ども参加型演劇など、多彩な作品を生み出す演劇のるつぼ、サラダボール。「拠点四国」として地域社会に根ざした芸術活動を行う。


出演
鈴木智香子(青年団/サラダボール) 滝 香織(あいテレビアナウンサー) 高橋なつみ(サラダボール)

スタッフ
舞台美術:カミイケタクヤ
舞台美術アシスタント:武智奏子
照明:西山和宏(ミュウ・ライティング・オフィス)
音響:高橋克司(東温音響)
音楽アドバイザー:山本太郎
舞台監督:前田浩和(だるまど〜る)
衣装:西村ひとみ
⾐装アドバイザー:⼩松陽佳留
宣伝美術:hi foo farm
写真:加藤晋平
イラスト:山本一博
制作:太田久美子(青年団) 宮地真優 上田英治

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