下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンスなど様々な文化的事象を批評するサイト。

ままごとの『ツアー』報告会(演劇付き)

ままごとの『ツアー』報告会(演劇付き)

柴幸男が率いるままごとの舞台「ツアー」のツアー報告会と「ツアー」里帰り公演。全体としてままごとならではの親密(インティメート)な雰囲気でとても楽しかった。
 「ツアー」は上演時間45分の短編演劇だ。横浜STSPOTで初演して以降、静岡(ストレンジシード)、新潟(越後妻有アートトリエンナーレ)、小豆島、沖縄と全国4カ所で公演したうえで、事務所を置いている蒲田駅近くのアトリエビル「HUNCH」にあるフリースペースに戻ってきた。
 ままごとは従来は劇団とはいえ公演ごとに出演者を集める形式を取ってきたため柴幸男のひとりユニット的な性格が強かった。これだと劇団としてのレパートリー作品は持てない。このため、昨年新らたに劇団員として俳優2人を加え、制作担当を含め7人とによる新体勢を固め、最初の1本として「ツアー」を製作した。
柴幸男の代表作「わが星」と「あゆみ」はどちらも「誕生と死」が語られていた。今回の「ツアー」はそれと比べたら長い射程を持つ物語とはいえないが 「死(喪失)と再生」が主題であり、上演時間45分の小品でこそあるが、2大傑作を彷彿とさせる部分は確かにあって、いかにも「柴幸男らしさ」を感じさせる作品であった。
幼い息子を亡くした女性(小山薫子)がその現実を受け入れることが出来ず突然車を飛ばして旅に出る。そして旅先で何とも不思議な女(端田新菜)と出会う。女は音楽フェスにやってきたバンド「ブレーメンズ」のメンバーだが、「仲間に置いて行かれて取り残されてしまった」という。
 そして、クラヤミと呼ばれる謎の怪物(人々の悪い念が実体化したものだなどとされる)に追われたり、逃げ回っているうちに深い森の中に迷いこんだりと不思議な冒険譚が綴られていく。

この物語がどことなく村上春樹の小説を彷彿とさせるのは主人公の女性らが追い掛け回される「クラヤミ」という存在が村上春樹の「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」に登場する怪物「やみくろ」を連想させるところがあるからかもしれない。もちろん、こうしたイメージも村上春樹がオリジナルというわけではなく、例えばミヒャエル・エンでの「果てしなき物語」に登場する虚無という存在とも響きあうようなところはある。
 柴自身に以前尋ねてみたところでは「村上春樹を意識して明確に引用したわけではなく偶然である」というのだが、この謎の怪物に追いかけられて食べられてしまうというイメージは多摩美術大学の卒業制作ととして柴が作った「運命」にも引き継がれていた。柴にとって重要なモチーフとして考えられるだけにそのイメージの意味合いは引き続き丁寧に解釈する必要性があるのかもしれない。  
 「ツアー」のもうひとつの重要なモチーフは旅である。さらに言えばここでいうと音楽フェスにやってきたバンド「ブレーメンズ」のメンバー(端田)がそうなのだが、「旅を通じて新たな友と出会う」ということでもある。この場合はままごとの活動を象徴していると書いたが、この作品のツアーという行為と「ツアー」という作品が二重重ねになるような構造になっているという仕掛けがある。
 実はこうした二重性は平田オリザの作品にもよく見られる特徴でもあるのだ。柴の作品は現代口語演劇や群像会話劇という平田の演技・演出の様式とは乖離があるのだが、私が「世界の写し絵としての演劇」などと呼称してきた作品の自己言及的な構造を平田の後継として受け継いでいるという側面はあるのではないかと「ツアー」という舞台から考えさせられた。

2019年3月20日(水)19:00 - 21:00(18:30 OPEN)@HUNCH
2018年4月に横浜で上演した『ツアー』。本作は春から秋に掛け、静岡、新潟、小豆島、沖縄へと旅をしてきました。この報告会は旅の様子をままごとのメンバーと共に振り返りつつ、『ツアー』の上演も行うイベントです。会場は、昨年よりままごとが拠点とする蒲田のアトリエビル「HUNCH」。是非この場所を紹介したいという想いも込めて。皆様とお会い出来ることを楽しみにしています!

出演:
小山薫子・大石将弘・端田新菜・柴幸男・宮永琢生・加藤仲葉・石倉来輝

『ツアー』出演:
小山薫子・大石将弘・端田新菜

料金:
一般=2,500円/高校生以下=1,000円(全席自由・1ドリンク付き|当日+500円)

チケット発売:
2月16日(土)10時よりままごとWEBにて販売開始

会場:
HUNCH(東京都大田区西蒲田7丁目61−13)
JR京浜東北線東急池上線多摩川線「蒲田」駅 西口から 徒歩6分


お問い合わせ:
ままごと(一般社団法人mamagoto)
TEL 090-2561-8730|MAIL mamagoto.org@gmail.com|mamagoto-tour.tumblr.com

STAFF:
作・演出『ツアー』:柴幸男
衣裳『ツアー』:瀧澤日以(PHABLIC×KAZUI)
制作:加藤仲葉、宮永琢生 
協力:HUNCH、醍醐ビル株式会社、ソシオミュゼ・デザイン株式会社
特別協力:急な坂スタジオ 
助成『ツアー』:芸術文化振興基金、公益財団法人アサヒグループ芸術文化財
企画制作・主催:一般社団法人mamagoto