下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

0-01-01から1ヶ月間の記事一覧

エジンバラ演劇祭観劇リポート5

エジンバラはスコットランドの首都である。日本では英国といえばイングランドもスコットランドも一緒くたにされてしまいがちだが、現地に行ってはっきり分かるのはスコットランドにはイングランドとはまったく違う国民意識や愛国心があるということだ。「マ…

マレビトの会「血の婚礼」

マレビトの会は劇作家、松田正隆の率いる劇団である。今回は初の試みとして松田戯曲以外の上演に挑戦した。シリーズ「戯曲との出会い」vol.1と題しガルシア・ロルカの「血の婚礼」を松田が演出、上演したのである。 松田が優れた劇作家であることは岸田戯曲…

エジンバラ演劇祭観劇リポート4

エジンバラ演劇祭は本来、演劇(特にコメディーショー)を中心にしたフェスティバルでアビニョン演劇祭などと比較したときにはダンスのプログラムにはそれほど強くない。そういうなかでDANCEBASEとAURORA NOVA FESTIVALが開催されているSt.Stephenはレベルの…

ポツドール「顔よ」

「覗き見」の快楽。ポツドールの舞台をそう称したことがある。「顔よ」も見てはいけないものを覗き込んで見ている時のような背徳的な喜びを与えてくれた。裸体を見せるというような直接性はないが、だからこそ「エロチスムとはタブーの侵犯である」(バタイ…

砂連尾理+寺田みさこ「I was born」ACT原稿

砂連尾理+寺田みさこ「I was born」をこまばアゴラ劇場で見た。「明日はきっと晴れるでしょ」「男時女時」「「loves me ,loves me not」などこれまでの砂連尾理+寺田みさこ(じゃれみさ)の作品のテイストは日常性のなかに表れる男女の微妙な関係性をコミ…

山下残(演劇計画2008)「It is written there」@京都芸術センター

山下残(演劇計画2008)「It is written there」(京都芸術センター)を観劇。 出演 荒木瑞穂 今貂子 西嶋明子 福留麻里 森下真樹 構成・振付・演出/山下残 ブックデザイン/納谷衣美 舞台監督/浜村修司 舞台美術/西田聖 照明/三浦あさ子 音響/宮田充規…

エジンバラ演劇祭観劇リポート3

今回からはエジンバラフェスティバルズのもうひとつの中心であるフリンジフェスティバル(The Edinburgh Festival Fringe )について紹介してみたい。まず、最初に特筆すべきことは巨大(huge)としかいいようのないその規模である。それがどの程度のものであ…

五反田団「偉大なる生活の冒険」@こまばアゴラ劇場

五反田団「偉大なる生活の冒険」(こまばアゴラ劇場)を観劇。 作・演出:前田司郎 出演:安倍健太郎(青年団)、石橋亜希子(青年団)、内田慈、中川幸子、前田司郎 岸田国士戯曲賞を受賞したばかりの前田司郎(五反田団)の新作である。受賞後第1作となる…

Monochrome Circus

「水の家」は小さな机の上で森川弘和/森裕子が踊り続けるアクロバティックなデュオ。佐伯有香のソロ「怪物」はアゴタ・クリストフの小説に登場する美しい怪物を強靭で柔軟な身体を生かし踊った。「最後の微笑」は4人のダンサーによる作品で、こちらはサミ…

チェルフィッチュ「フリータイム」

「フリータイム」は、「三月の5日間」などこれまでの作品では相当に複雑だった戯曲の構造がものすごくシンプルになっている。朝、会社に行く前にファミレスに寄って1杯のコーヒーを飲みながら30分だけ自由な時間(フリータイム)をすごしている女性がいる…

LUCY/KOTA Project@京都芸術センター講堂

日本の山崎広太とオーストラリアのルーシー・ギャレン(Lucy Guerin)が互いに相手の国でオーディションにより集めたダンサーにより、それぞれ現地に滞在して製作した作品を持ち寄り初演した。山崎の振付家としてのよさに舞台空間にダンサーを複数配置しての…

「私が選ぶ2007年ベストワン」

機関誌「join」特集 「私が選ぶ2007年ベストワン」 お名前 中西理 ご所属のある方はお書き下さい 演劇・舞踊評論 2006年1月1日〜12月31日に上演された中からお書き下さい。 該当なしの場合は空欄にしてください。いただいた原稿はそのまま掲載いたしま…

エジンバラ演劇祭観劇リポート2

国際フェスティバルのもうひとつの特徴は毎年、若手の劇作家に新作を委嘱し、ワールドプレミアで上演することだ。今年見たなかではスコットランドのPlaywrite(劇作家)・Directer(演出家)であるAnthony Nielson(アンソニー・ニルソン)の新作をNational …

2007年年間ベスト(現代美術)

2007年年間ベスト(現代美術) 1、三沢厚彦「ANIMALS+」(伊丹市立美術館) 2、企画展「美術のボケ」(CASO) 3、「梅佳代写真展 男子」(HEP HALL) 4、「アートで候 会田誠・山口晃」(上野の森美術館) 5、「ビル・ヴィオラ はつゆめ展」(兵庫…

最後に青年団「バルカン動物園」のスペシャルレビューの試み あるいは誤読的深読みレビュー

青年団の「バルカン動物園」はなんとも企みのある題名が、この作品の本質をよく表現していると感心させられた。バルカンといえばもちろん作中欧州の戦争の引きがねになったと想定されてるバルカン半島のバルカンだろう。文化、宗教、人種といった人間の紛争…

2007年ダンスベストアクト

演劇ベストアクトに続き2007年ダンスベストアクトを掲載することにしたい。さて、皆さんの今年のベストアクトはどうでしたか。今回もコメントなどを書いてもらえると嬉しい。 2007年ダンスベストアクト 1,白井剛×川口隆夫×藤本隆生「true/本当のこと」@横…

下北沢通信完全版、あるいは深読み誤読レビューその2「月の岬」

(これは演劇情報誌Jamciに連載中の「下北沢通信」の9月号に分量の制約で載せきれなかった部分を完全版として、掲載するものです) 松田正隆の劇世界の特色は三角関係に代表される閉じた関係に表れる人間の心の闇をそれこそ微分するように細かく解析しえぐり…

ヨーロッパ企画「火星の倉庫」

欧米のリアリズム演劇に起源を持つ現代演劇においてはアウトサイダーと見える彼らの発想だが、日本においてこうした発想は実は珍しくないのではないか。鶴屋南北らケレンを得意とした歌舞伎の座付き作者は似たような発想で劇作したんじゃないだろうかという…

いるかHotel 「月と牛の耳」

いるかHotel 「月と牛の耳」*1(HEP HALL)を観劇。 畑澤聖悟(渡辺源四郎商店)が弘前劇場時代の2001年に上演した代表作を谷省吾(いるかHotel/遊気舎)が演出。 この物語の前半部分はこの特異なシチュエーションを活用してのかなりスラップスティック(ド…

2007年今年の収穫

◎「2007年今年の収穫」 中西理(中西理の大阪日記)http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/ 「悲劇喜劇」(早川書房)アンケート A=戯曲 1.前田司郎「生きてるものはいないのか」(五反田団+演劇計画2007) 2.畑澤聖悟「小泊の長い夏」(渡辺源四郎商店…

エジンバラ演劇祭観劇レポート1

世界最大の演劇フェスティバル。そう称されるエジンバラ演劇祭だが、日本では意外とその実態は知られていないように思われる。毎年、夏休みをとってエジンバラ詣でを始めてから5年目になるのだが、今年も8月に約10日間同地に滞在、ダンス、演劇など40本の…

振り返る私の2007

◎「振り返る私の2007」 中西理(中西理の大阪日記)http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/1.維新派「nostalgia」@大阪ウルトラマーケット2.五反田団+演劇計画2007「生きてるものはいないのか」@京都芸術センター3.MIYUKI YANAIHARA PROJECT…

JCDN原稿 LUCY/KOTA Project@京都芸術センター

LUCY/KOTA Project@京都芸術センター 日本の山崎広太とオーストラリアのルーシー・ギャレン(Lucy Guerin)が互いに相手の国でオーディションにより集めたダンサーにより、それぞれ現地に滞在して製作した作品を持ち寄り初演した。 「Setting」は日本人のダ…

松田正隆試論

「海と日傘」は岸田戯曲賞を受賞し存在を知らしめる大きなきっかけとなった作品で、故郷である長崎近郊を舞台に、病弱な妻とその夫である売れない小説家の看取る者と逝く者との気持ちを淡々と描き出す松田正隆の代表作である。 1990年代における日本現代演劇…

長谷川孝治の「アザミ」について

長谷川孝治(劇作家・演出家)と彼が率いる弘前劇場は青森県にその活動の拠点を置いている。日本では大阪・京都の関西圏など若干の例外を除けば芸術分野で東京ほぼ一極集中といってもいい状況があり、特に演劇においてその傾向は顕著なものとなっている。そ…

MIKUNI YANAIHARA PROJECT「青ノ鳥」@吉祥寺シアター

MIKUNI YANAIHARA PROJECT*1「青ノ鳥」*2(吉祥寺シアター=9月24日マチネ)を観劇した。インターメディア・パフォーマンス集団、ニブロールを率いる振付家・ダンサーである矢内原美邦はそれ以外にも最近はoff nibrollなど別働隊的な公演を行うことでその活…

ポかリン記憶舎「煙の行方」

90年代半ば以降の日本現代演劇を振り返ると群像会話劇の形式でその背後に隠れた人間関係や構造を提示する「関係性の演劇」が大きな流れを作ってきた。平田オリザや岩松了、宮沢章夫らがその代表である。2000年代以降それを凌ぐ大きな流れをつくっていくのが…

天才なのかアホなのか

きたまりのアンヴィヴァレンツな魅力について 関西で今もっとも注目すべき若手コリオグラファーの名前を挙げろ、といわれたら、まずなんといってもきたまり=写真右=の名前を挙げざるををえない。それぐらいここ最近の彼女の活躍は際立っている。2005年には…

Japan’s contemporary dance

text by OSAMU NAKANISHI Looking at Japan’s contemporary dance with the Westerners’ eye, SANKAIJUKU, Saburo TESHIGAWARA+KARAS, Dumb Type may stand out and form a representative image of it, but with a bird’s eye, this is not necessarily be …

維新派・松本雄吉氏に聞く「nostalgia <彼>と旅する20世紀三部作#1」を巡って

―――今回は先日大阪で初演したばかりで、今後埼玉、京都でも公演が予定されている維新派の新作「nostalgia」を巡って、主宰であり作・演出も担当する松本雄吉氏に話をうかがいたいと思います。まず、最初にこの「nostalgia」について「<彼>と旅する20世紀三…