下北沢通信

MONOについて劇団結成10周年(1999年)に書いた文章

 MONOは京都に本拠を置く劇団で、89年にB級プラクティスとして結成され、その後、91年に現在の劇団名に改名したというから、今年は劇団結成10周年の記念の年となる。

 旗揚げ以来のメンバーである作演出の土田英生、水沼健ら個性的な俳優による少人数の質の高い会話劇が特色。こちらも最初に見たのは扇町ミュージアムスクエアの若手劇団発掘企画、アクトトライアルで大阪に初登場した時で、この時にはまだつかこうへいなどの影響を受けながら、自らの作風を模索している時期であったが、その後、京都のアルティで上演された「スタジオNO.5」でワンシテュエーションの群像会話劇に方向転換。都市に住む清潔なホームレスたちを描いた「路上生活者」、クリスマスを嫌う人たちが集まるイブのペンションを舞台にした「Holy Night」、大勢で詐欺にでかける詐欺師の集団を描いた「約三十の嘘」と実際にはありえないが、絶対にありえないわけではない奇妙な状況に置かれた群像を会話劇のスタイルにより、コミカルに描きながら、そこから現代がかかえる様々な問題を浮かび上がらせていく。

 元時空劇場の金替康博が正式メンバーとして参加したことで、一層パワーアップ、昨年、利賀フェスで上演された「きゅうりの花」、今年上演された「燕のいる駅」はいずれも年間ベストプレイの上位にランクされる好舞台であった。これまでは東京では以前に大世紀末演劇展に参加して「路上生活者」を上演したことはあるものの、松田正隆らの戯曲賞受賞で京都演劇界が注目される以前で一般の注目度はまだ低く、今回が満を持しての東京本格進出となる。奥村泰彦(一色正春の名前で俳優としても出演する)の美術ほか、スタッフワークのレベルの高さにも注目してほしい。

 「―初恋」は97年に京都、大阪で上演された舞台の再演。ホモアパートの名前で近所で呼ばれている「ハイツ結城」で集団生活している同性愛者たちという土田英生らしいひねったシチュエーションで起こるおかしくも哀しい恋愛事件が描かれる。微妙な会話のずれによって起こる笑いを交えて、進行していく芝居はエンターテインメント性がきわめて高く、単純に楽しむことも出きるが、それだけにとどまらずシニカルなものの見方を通じて社会に対する批評性をも合せ持っているのが土田の紡ぎだす世界の特徴である。G2プロデュースやM.O.Pへの戯曲の提供などで東京でも徐々に劇作家としては知られるようになっている土田だが、息のあった役者たちとの絶妙なアンサンブルはここでしか見られないもの。東京の演劇ファンにぜひ見てもらいたい公演のナンバー1である所以である。

 これも参考までにこれまで見たMONOの作品のうち私の個人ベスト3を挙げておくと

 1、「きゅうりの花」

 2、「燕のいる駅」

 3、「約三十の嘘

 3、「Holy Night」

 いちおう、1、2位をつけてはみたが、本当は「きゅうりの花」と「燕のいる駅」はコメディー色の強い「きゅうり〜」とドラマ色の強い「燕〜」と作品の方向性がかなり違い甲乙つけがたいといったところ。「約三十の嘘」は土田流ウエルメードコメディーの傑作。深みにこそ欠けるが、良質のコメディーとして、最上級といえる舞台だったんじゃないだろうか。「Holy Night」は女性の描き方などにやや不満もあるがストレートにMONOのよさが出た作品として、楽しめたし、奥村泰彦の天才的美術を堪能できた。