下北沢通信

中西理の下北沢通信

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劇団身体ゲンゴロウ5周年記念公演「ナマリの銅像」@新宿スターフィールド

劇団身体ゲンゴロウ5周年記念公演「ナマリの銅像」@新宿スターフィールド

劇団身体ゲンゴロウ5周年記念公演「ナマリの銅像」@新宿スターフィールドを観劇。1637年12月、島原・天草の農民たち(キリシタン軍)は原城(現・長崎県南島原市)に集結し、女性・子供・老人も含む総勢3万7千人が立て籠もった。これが俗にいう「天草四郎の乱」で「ナマリの銅像」はこの史実を基に製作されている。
 伝説では天草四郎ジャンヌ・ダルクのように自ら信じる思想に殉じた悲劇的な人物として描かれることも多いが、この「ナマリの銅像」ではマイクパフォーマンスの腕を買われ政治的な闘争に駆り出されることになるパチンコバイトの少年・四郎と重ね合わされ、何の変哲もない人間が状況に流されて英雄的な役割を演じざるを得なくなってしまう「普通の人の悲劇」として描かれていく。
 作品として少し分かりにくいのは最後の部分に戦争の勇士として銅像が作られた若者たちの像が戦争が終わり、用済みになったように壊されて廃棄され、ただの金属原料になってしまうというエピソードと途中でアジテーションをするパチンコ店の少年のイメージがどうもミスマッチで結びつかない感じがあることだ。ハンドマイクで反乱する闘志たちをあおる少年の姿は1960年代末の安保闘争を連想させる。それゆえ、この作品はいずれも多勢に無勢で敗北に追い込まれていく安保闘争における学生たちと幕府の武力の前に全滅に追い込まれる「天草四郎の乱」の島原・天草の農民たちを重ね合わせるというアイデアはそれなりの整合性があったとは思う*1が、これを最後の場面で太平洋戦争に従軍した若者たちに重ねあわせたのはいささか唐突な感が否めないと感じた。
 作品の表題からすれば作者が最後の場面が重要と考えているのは間違いなさそうなのだが、戦犯だとして戦時の英雄の像を廃棄するエピソードと島原の乱キリシタンのためにイコンとしての像を作り続けた少女の物語はやはりちょっと結びつきが弱いと感じざるをえない。  

《原案》菅井啓汰、武田朋也
《脚本・演出》菅井啓汰

《あらすじ》
ある日、少年は神にされたー
結成5周年を迎える「劇団身体ゲンゴロウ」の代表作、『ナマリの銅像』が大きくリニューアルして蘇る!

圧政強まる島原で、まもなく一揆と噂が走る。
パチンコバイトの少年・四郎は、口先達者の意気地なし。けれどマイクパフォーマンスの腕を買われ、神の子・天草四郎を演じることになり…

若者は、鉄砲見るまで無鉄砲。
母親は足並み揃えて改宗し、
親父がビクビクしながら竹槍を持てば、
傘連判の百姓共の右往左往の芝居の始まり。

四郎の口先は、神を人々に信じさせ始め…傘連番の人々の物語が走り出す。

運命に魅せられ、試され、殺された。
誰もが知ってる英雄の、誰も知らない物語。
教科書には描かれなかった、少年たちの青春譚再びー
《出演》
[A]初鹿野海雄、山﨑紗羅、新治龍之介、四家祐志、小林かのん、廣田直己、濵田創、越智愛
[B]初鹿野海雄、近藤璃乙、山本嵐太、四家祐志、小林かのん、廣田直己、濵田創、新治龍之介

《日程》
3/27(水) 19:00 A班 ◎
3/28(木) 19:00 B班 ◎
3/29(金) 14:00 A班 ◎ / 20:00 B班 
3/30(土) 13:00 A班 ☆A
3/31(日) 13:00 B班 ☆B / 18:00 A班 
◎…アフタートークあり。ゲストは公式SNSにて発表。
☆…本編終了後、アフターエピソードとして短編を上演。
出演:初鹿野海雄、新治龍之介(A)/山本嵐太(B)、山﨑紗羅(A)/近藤璃乙(B)、小林かのん、濵田創

上演時間:約2時間

《会場》
新宿スターフィールド
(東京都新宿区新宿2-13-6 光亜ビルB1F)
アクセス:JR新宿駅より徒歩10分、新宿三丁目駅より徒歩8分

*1:ただ、逆に言えば類似のアイデアの作品は大島渚作品など映画ですでに作られており、斬新さには欠けるかもしれない。