下北沢通信

中西理の下北沢通信

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 今日はひさびさの休日。昨今の睡眠不足から回復するために4時半まで睡眠を取った後、伊丹のアイホール黄金企画×クロムモリブデン「ソドムの中」を観劇。クロムモリブデンは現在の私の関西イチ押し劇団ではあるのだけれど、今回は青木秀樹作演出ではなくて、青木の旧作を劇団員で役者である夏が演出した特別な企画で、これも青木=クロムモリブデンの世界には違いないが、私が買っている最近のクロムモリブデンの作品傾向とは一線を画すところがある。芝居のなかで提示されるイメージそのものには面白いところもあるのだが、作品世界全体の構造がもうひとつ明確に浮かび上がってこない嫌いがあって世界同士の論理的なつながりのある様が分かりにくいのである。

 「ソドムの中」では陪審員がいて殺人事件についての裁判を行っている世界がまず描かれるのだがこれはどんな世界であるのか。陪審員は密室に閉じこめられているようだが、これは本当に裁判なのか。この世界の外に殺人事件が実際に起こった外部の世界はあるのか。この物語の構想としては明確にこの場面同士の関係が提示されたうえで、その関係を一意に決定できないようなほころびを構造のなかに持ち込んでいるように思われるのに今回の上演は論理自体をどうでもいいと思っているのではないかというところがあって、それは違うんじゃないかと思ってしまった。

 それとこれはこちらにも責任はあるのだけれど、会場に着くのが開演ぎりぎりになったせいで入り口近くの客席に座ることになったのだが、この位置からだと役者が背中を向けての演技となることが多く、さらに照明が全体に暗いので登場人物の個別認識がしにくくて、それで疲れてしまったところもあった。ただ、それだけじゃなくて「直接KISS」などと比べるとそれぞれの俳優の突出したキャラクターというのがどうも伝わってきていないと感じた。