下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

演劇集団円「青い鳥」 岸田今日子記念 円・こどもステージ@両国シアターX(カイ)

演劇集団円「青い鳥」 岸田今日子記念 円・こどもステージ@両国シアターX(カイ)

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  円・こどもステージは岸田今日子の企画により1981年にスタート。「子どもたちはもちろん大人たちにも楽しめる作品」をコンセプトに「<不思議の国のアリス>の帽子屋さんのお茶の会」「青い鳥ことりなぜなぜ青い」などの別役実はじめ、谷川俊太郎阪田寛夫佐野洋子きむらゆういち和田誠らによる書き下ろし作品の上演を続けてきた。こどもステージの名称に相応しく、この日の客席の組み方も前方エリアに親子が一緒に座って楽しめる座敷席のファミリーゾーンが設けられているのだが、この日の演目でもこの客席に向かって演者が話しかけるような演技をするとビビッドに反応するのがここならではの空気感を作っていて素晴らしい。
 この日もっとも印象深かったのはチルチルとミチルが旅から戻ってきて、家に残していた青い鳥こそ「本当の青い鳥」だったのではないかという有名なくだりになって、病気の隣の子供にその青い鳥を譲ろうとしたところで、青い鳥が飛んで逃げてしまうという場面がラスト近くにある。そこでチルチル役の俳優が客席に向けて「皆さんの中で青い鳥を見かけた人がいますか」と語りかけると、その前のシーンで舞台上方から飛び出して客席に落ちた紙でできた青い鳥を持っていた最前列の子供たちがそれこそ一斉にそれを舞台のチルチルに向けて「ここにいるよ」とばかりに差し出したのだ。最初一瞬あまりにきれいに揃っていたため「これは仕込みかな」と思ったほどだったのだが、よく見るとやはりこれは事前に打ち合わせたりしているものではなくて、子供たちが心から自然に反応して、こうした動きをしたもののようだ。ここには40年近くも親子向けの舞台に取り組んできたからこそつかんだノウハウの存在を感じさせられた。

世界中で愛されている「青い鳥」を再構成する舞台。作品に描かれるさまざまな国での出会いと別れを通して、生と死、喜びと悲しみなど普遍的なテーマを詩的で豊かなイメージで伝えていきます。こどもたちを中心にご家族・ご友人とゆっくりとお楽しみ下さい。


キャスト
原作:モーリス・メーテルリンク
構成・演出:阿部初美

出演:谷川清美 大窪晶 薬丸夏子 乙倉遥 石黒光 新上貴美 井上百合子