下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンスなど様々な文化的事象を批評するサイト。

「ポストゼロ年代演劇の新潮流  ゲスト山崎彬(悪い芝居)@三鷹SCOOL セミネールin東京Web講義録

「ポストゼロ年代演劇の新潮流  ゲスト山崎彬(悪い芝居)@三鷹SCOOL セミネールin東京Web講義録(兼当日用テキスト)

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メロメロたち
演劇動画配信サービス「観劇三昧」: 悪い芝居 / メロメロたち

 悪い芝居山崎彬を評するとすると私は「次世代のケラリーノ・サンドロヴィッチナイロン100℃)、松尾スズキと言いたくなります。山崎はポストゼロ年代演劇としてすでに先行してメジャーな存在となっている同世代の作家らと同じような作風も共有しますが、大きな違いは90年代の作家でも平田オリザではなく、娯楽性の高いケラや松尾の後継の香りも感じることです。
 作品ごとに舞台の印象がコロコロ変わるので、そのため作風を一口で説明することが難しいのです。それでも「らしい」作品はいくつかあって、最近でいうと「ラスト・ナイト・エンド・ファースト・モーニング」のような暴力的な犯罪の被害者などエキセントリックな登場人物のトラウマなどをモチーフとする重めの作品がそう言えるでしょう。こうした世界では松尾と類似の世界観を感じる部分もある。
 ところが再演された「アイスとけるとヤバイ」は一変してポップかつナンセンスかつキッチュな「笑える演劇」。作風が作品ごとに違うということを説明しようとしたときにナイロン100℃のケラのことも脳裏に浮かびます。冒頭の劇中劇や植田順平演じる人物が直接客席に語りかけることで舞台が進行するというメタシアター的な仕掛け、タイムトラベルとコールドスリープというSF的設定で、より強くそう感じるということがあるのだとしても、関西弁を多用した関西版ナイロン100℃とでもいいたくなるような作品となっていたのではないでしょうか。
 ままごと、ロロ、快快(ファイファイ)、マームとジプシーなどが東京での同世代の劇団。こうした劇団との間にはポストゼロ年代演劇としての共通点はあるのだが、前衛を志向せず大人計画ナイロン100℃の後継を思わせるような特徴が悪い芝居にはある。ここ十年間ほど木ノ下歌舞伎と並んで、関西を代表する若手劇団として挙げていたですが、2004年の旗揚げ公演から15年を経過し、最近は本拠地が東京に移りつつあります。現代演劇の中核をなす劇団のひとつに数えられるようにもなり、山崎個人としても各種プロデュース公演の作演出や俳優として中劇場、大劇場の舞台に頻繁に出演するなど活躍が目立ちます。ネクストブレーク確実な気鋭の作家、演出家、俳優の山崎彬とはいったい何者なのか。きょうは本人にいろいろ語ってもらうことで明らかにしていきたいと思います。
simokitazawa.hatenablog.com

ポストゼロ年代演劇の特徴
1)その劇団に固有の決まった演技・演出様式がなく作品ごとに変わる
東浩紀のいうデータベース消費に対応
2)作品に物語のほかにメタレベルで提供される遊戯的なルール(のようなもの)が課され、その遂行と作品の進行が同時進行する⇒ゲーム的リアリズム(=ゲームが構造構築のモデル、東浩紀の定義とは少し違う)
3)感動させることを厭わない(悪意の不在)⇒一番の問題点

 悪い芝居も上記の特徴が当てはまる部分もあり、特に上記の1)2)がよく当てはまるという意味ではままごと、ロロ、快快(ファイファイ)、マームとジプシーなどとの共通項があるのではあるが、その舞台から感じる印象に「悪意」が感じられるという意味では大人計画クロムモリブデンデス電所などの先行世代の劇団との共通点があります。


①黎明期

中西理(以下中西) 演劇を始めたきっかけを聞かせてほしい。
次に旗揚げの頃はどんな感じだったかというのを本人の口から聞いてみようと思います。立命館の演劇サークルの出身だと聞いているのですが。劇団サイトを見てみると実質的な旗揚げ公演だったという「詩人と大女」というのは路上演劇であったということのようなのですが、これはどんな公演だったのでしょうか。私が最初に悪い芝居を観たのは旗揚げから4年が経過した2008年の「なんじ」という作品でした。動画サイトにこの作品の抜粋が掲載されていたので、ひさびさに見て再確認をしてみたのですが、これをまず見てみましょう。

悪い芝居 vol.0
(悪い芝居 旗揚げ公演)『詩人と大女』
作・演出 山崎彬
2004年12月24日(金)・25日(土)@路上

悪い芝居 vol.1
『鈍い音』 作・演出 山崎彬
2005年3月 17日~19日(4 stage)
立命館大学内以学館二号ホール
悪い芝居 vol.6
www.waruishibai.jp

②初期悪い芝居


『なんじ』 作・演出 山崎彬
2008年4月2日~6日(7stage)
@精華小劇場(大阪)
中西理(以下中西) 私が悪い芝居を初めて観劇したのは「なんじ」という作品でした。とはいえこの時点ではあまり強い印象がありませんでした。ところが動画サイトに映像の抜粋があったので、最近見直してみてかなり驚きました。冒頭はSTOMPのように身体を使って音を鳴らす(クラッピング)のシーンから始まり、女性シンガーによるオリジナル楽曲の歌唱と最近も悪い芝居の特色となっていた音楽+演劇の融合はこの時点でもう行われていたからです。それできょうぜひお聞きしたいのは音楽劇というのはどういう経緯ではじめるようになったのでしょうか。
山崎彬(以下山崎) それは実は大学の卒業公演としてやった時から歌は入っていたんです。ピアノ弾き語りする子がいたので、それで入れたのじゃなかったか。2回目、3回目も音楽は入っていた。
中西 演劇をやる前から音楽活動していたということはないのですか。
山崎 いやそれはなかった。ただ、音楽に興味はありました。


悪い芝居vol.6『なんじ』DVD映像

悪い芝居 vol.8


『嘘ツキ、号泣』 作・演出 山崎彬 OMS戯曲賞佳作受賞
京都公演
2009年4月16日~20日(7stage)
@ART COMPLEX 1928
東京公演
2009年5月5日~6日(4stage)
@サンモールスタジオ
中西 最初に悪い芝居をポストゼロ年代を代表する若手劇団と認識、高い評価をした作品が「嘘ツキ、号泣」でした。冒頭シーンはヒロインが秋葉原の無差別殺人事件を思わせる自動車事故に巻き込まれるところから始まるのだが、面白かったのは漫画のカット割を連想させるような舞台美術とそれに合致する吹き出しのような会話で構成されていたこと。これは当時読んでいた本にあった「アニメ・漫画的リアリズム」の体現*1そのものに見えました。
 本当は舞台美術がよく分かるような、映像があればいいのですがとりあえずPR用動画を見てもらいましょう。

悪い芝居vol.8『嘘ツキ、号泣』CM映像第1弾



悪い芝居vol.8『嘘ツキ、号泣』CM映像第1弾

中西 これが最初に悪い芝居ならびに山崎彬という作家の才能を認識した作品でした。この年のベストアクトにも取り上げ、ここから悪い芝居を木ノ下歌舞伎と並ぶ京都を代表する若手劇団と推奨してきました。木ノ下歌舞伎も機会がもしあればいずれこのセミネールで取り上げてみたいと思っています。
simokitazawa.hatenablog.com
www.waruishibai.jp

悪い芝居vol.10
『らぶドロッドロ人間』

作・演出 山崎彬
京都公演
2010年5月19日(水)~23日(日)
(8stages)
@ART COMPLEX 1928
東京公演
2010年6月11日(金)~14日(月)
(6stages)
@王子小劇場
中西 『らぶドロッドロ人間』は山崎と同世代で関西を代表するダンサー・振付家であるきたまりを演劇ほぼ未経験なのにもかかわらずヒロイン役に抜擢しました。役柄もきたまりにあてがきしたような役であり、悪い芝居はこの後、現役アイドル(NMB48の石塚朱)、人気Youtuber(めがね)など演劇経験者以外の経歴の持つ主をヒロイン役に起用することになりますが、これはその先駆的な実例となりました。
 部屋の中とその外の世界(これは後に部屋で眠るヒロイン役の女性の脳内世界であることが分かる)が同時進行する物語構造を持ち、非常に興味深いアイデアだったと思い、何らかの形での再演が期待したい舞台でした。
stage.corich.jp

悪い芝居vol.11『キョム!』
作・演出 山崎彬

大阪公演
2010年12月18日(土)~26日(日)(11stages)
@なんば・精華小劇場
東京公演
2011年1月14日(金)~16日(日)(4stages)
@下北沢・駅前劇場

悪い芝居vol.11「キョム!」
<バンド+演劇 新たな音楽劇への悪い芝居の挑戦>


悪い芝居vol.16『スーパーふぃクション』
作・演出 山崎彬
文化庁委託事業
平成26年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」
日本の演劇人を育てるプロジェクト
新進劇団育成公演
演劇動画配信サービス「観劇三昧」: 悪い芝居 / スーパーふぃクション


悪い芝居vol.16『スーパーふぃクション』PV
演劇動画配信サービス「観劇三昧」: 悪い芝居 / メロメロたち
2時間39分

2014年9月11日(木)~16日(火)
9stages
@HEP HALL

2014年10月21日(火)~26日(日)
7stages
@赤坂 RED/THEATER
悪い芝居vol.18『メロメロたち』
中西「メロメロたち」はOMS戯曲賞の受賞作品。しかもこの年の岸田戯曲賞をほぼ満場一致で受賞したヨーロッパ企画「」を打ち破っての異例のグランプリ獲得であり、この作品は素晴らしい作品だからこれが受賞したことには何らの異論はないけれども、選考自体にはどうしてこういうことをするのかという若干の違和感を持っている。もっとも、逆に言えば「メロメロたち」は岸田戯曲賞の最終選考に残ってもいないわけで、このあたりには最近の同賞のあり方にも異論がなくもない。
www.osakagas.co.jp
simokitazawa.hatenablog.com


悪い芝居 vol.12 『駄々の塊です』 ~オープニング映像~

舞台セリフ「◯ン玉」多過ぎ事件。

作・演出 山崎彬

2016年7月15日(金)~20日(水)
9stages
@HEP HALL

2016年7月26日(火)~31日(日)
8stages
@赤坂 RED/THEATER
simokitazawa.hatenablog.com

www.waruishibai.jp
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悪い芝居vol.24
『アイスとけるとヤバイ』
【作・演出】山崎彬
【音楽】岡田太郎

【出演】
中西柚貴
潮みか
植田順平
東直輝
佐藤かりん
畑中華香
山崎彬
(以上、悪い芝居)
 ・
清水みさと(オーストラ・マコンドー)
岩井七世
鶴田まこ(Cheeky)
久道成光(劇団4ドル50セント)
吉田雄樹(丸福ボンバーズ)

【仙台公演】
@せんだい演劇工房・10-box
8月31日(土)~9月1日(日)
31日(土) 18:00
1日(日) 13:00

【東京公演】
東京芸術劇場シアターウエス
9月4日(水)~9月8日(日)
4日(水) 19:00
5日(木) 19:00
6日(金) 14:00/19:00
7日(土) 13:00/18:00
8日(日) 13:00

【大阪公演】

8月16日(金)~8月18日(日)
16日(金) 19:00
17日(土) 13:00/18:00
18日(日) 13:00

【チケット発売】
7月13日(土)12:00~一般発売スタート!
https://w.pia.jp/t/waruishibai/

v2.kan-geki.com

■出演/テレビドラマ
●放送90年ドラマ
経世済民の男 小林一三
NHK/2015年)
●土曜オリジナルドラマ 連続ドラマW
グーグーだって猫である2 -good good the fortune cat-』
(WOWOW/2016年)
大河ドラマ
真田丸
NHK/2016年)

■出演/映画
●『色即ぜねれいしょん
(原作 みうらじゅん 監督 田口トモロヲ/2009年)

■作・演出/舞台
●演劇ガールフューチャ旗揚げ公演
『ミライライライオーライライ』(2016年)
●演劇計画Ⅱ-戯曲創作‐
『また愛か』(2015年)
●Patch Stage vol.5
『観音クレイジーショー』(2014年)
メイシアタープロデュース
『グッド・バイ』(2014年)
ほか

■演出/リーディング
乱暴と待機』(作 本谷有希子/2015年)

■脚本/ラジオドラマ
NHK FMシアター
『春はこない』(2014年)

■構成参加/コント番組
MBS侍チュート」(2009)


悪い芝居vol.21『メロメロたち』 ~目を閉じればどこにだっていける~


悪い芝居の新作は“ヘンテツしかないラブコメ”「アイスとけるとヤバイ」 - ステージナタリー