下北沢通信

中西理の下北沢通信

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NAPPOS PRODUCE『りぼん,うまれかわる』(脚本・演出:山崎彬)@六本木トリコロールシアター

NAPPOS PRODUCE『りぼん,うまれかわる』(脚本・演出:山崎彬)@六本木トリコロールシアター

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山崎彬(悪い芝居)*1が脚本・演出を務めた新作ということもあってNAPPOS PRODUCE『りぼん,うまれかわる』を観劇した。主演の深川麻衣*2を舞台で見たのは初めてだった。調べてみると乃木坂46の出身ということが分かり、先日「夜は短し歩けよ乙女」にやはり乃木坂46の久保史緒里が主演していて、乃木坂出身者の舞台での活動はかなり目立つなと考えたのだが、現役の久保史緒里は別として、深川の場合は乃木坂を卒業したのが2016年と5年も前で、卒業後はテレビ、映画、舞台とコンスタントに女優の仕事を続けているのだから、元アイドルという目で見るのはおかしいのかもしれない。それでも早見あかりでさえいまだに「元ももクロ」の肩書きが入るくらいだから、業界的にはこれはこれでそういうものなのかもしれない。
山崎彬は悪い芝居の前作「今日もしんでるあいしてる」では「いきること」「しぬこと」「あいすること」を描いたとしているが、この舞台のモチーフは「うまれかわり」。とはいえ、舞台を見終わって感じたのは前作で挙げられた3つの主題は作家、山崎彬にとってのメインモチーフであって、この「りぼん、うまれかわる」もそれは大きくは変わらないのかもしれない。
 プロデュースのNAPPOS PRODUCEは「本企画は、シリーズ化を想定した演劇作品を小劇場で創作し、物語を連鎖させながらロングラン化することを目指す。本作はエピソード1にあたる」としており、連作の第一作という限りにおいて「うまれかわり」ということが実際にある世界(しかも夢に見ることでそれが本人にも分かる)という基本設定は続くのであろう。作演出は毎回山崎彬が行うのか、それともNAPPOS PRODUCEで作演出を行ってきた成井豊ら複数の作家がリレー方式で受け継ぐのか、企画の詳細は現時点でも不明だが、基本的な世界観はプロデュース側が出して、それを第一弾を引き受けた山崎と詰めていったのではないかと思う。
 主演の深川はよかった。もちろん、本人の努力が大きいとは思うが、悪い芝居でも「NMB48」の石塚朱莉を起用したり、比較的舞台経験の多くはない女優をヒロインに起用し、その魅力を引き出すのは山崎の得意とするところなのかもしれない。
 深川演じるりぼんという少女は自分が見ている夢と同じ夢を見ている若い男(永嶋柊吾)に出会う。「うまれかわりがあるのかもしれない」あるいは「それを前提として生きている人がいる」という設定*3を入れた以外は割と王道のラブストーリーといってもいい。
 通常の悪い芝居の物語ならばここまでストレートに恋が語られることはないから、山崎彬ワールドの入門編としては最適かもしれない。しかし、その分悪い芝居のファンにとっては毒が薄まってしまったような物足りなさを感じてしまう部分もあるかもしれない。
 もっとも、山崎彬がこの連作を引き続き担当するという前提でここからは書くが、このちょっとした物足りなさこそがむしろ連作には向いているし、この続きを見たいという気にもなってくるのだ。
 

脚本・演出:山崎彬(悪い芝居)
出演:深川麻衣
永嶋柊吾
阿部丈二(キャラメルボックス
潮みか(悪い芝居)
清水由紀
中西柚貴(悪い芝居)
竹田洋平
粟根まこと劇団☆新感線

6/18~27◎六本木トリコロールシアター

株式会社ナッポスユナイテッドは、NAPPOS PRODUCE『りぼん,うまれかわる』を劇団悪い芝居と共催で上演する。

本企画は、シリーズ化を想定した演劇作品を小劇場で創作し、物語を連鎖させながらロングラン化することを目指す。本作はエピソード1にあたり、本年6月18日~27日、六本木トリコロールシアターにて上演する。

主人公・りぼんを演じるのは、今年1月に主演映画が公開され、大河ドラマ『青天を衝け』の出演が決まるなど、乃木坂46卒業後も女優として目覚ましい活躍を続ける深川麻衣。朗読以外の舞台は、初主演を務めたNAPPOS PRODUCE『SKIP』(原作:北村薫 脚本・演出:成井豊 サンシャイン劇場)以来、4年ぶりの出演となる。

すごーく地味ですごーくせまい世界をひっそりと生きてきた」と自他共に認めるりぼんは、ある日夢を見る。
そして夢から覚めた朝、人生で一番大きな声でつぶやいた。
「【悲報】今世は来世の前世…っ!!」

本作は、主人公「りぼん」」がうまれかわりの存在を知っていく物語。一見ファンタジックな自由を目の前に、そんな妄想じみたことなんか信じられなくなったものたちの悲喜こもごもの人間ドラマを中心に、もし人生がやり直せるなら、今の人生を捨てられるか」を描いていく。

*1:simokitazawa.hatenablog.com

*2:
www.youtube.com

*3:架空の設定ではあるがそういう思い込みをしている人はいないことはいないことはないからこれをSFあるいはファンタジーとみるかどうかは微妙なところだ。