下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

KARAS「読書 本を読む女」@東京・両国 シアターXカイ

KARAS「読書 本を読む女」@東京・両国 シアターXカイ

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あらかじめ録音された佐東利穂子による本の朗読のテキストを劇伴音楽のようにして勅使川原三郎、そして時には佐東利穂子も踊るダンス作品。「読書 本を読む女」の表題に相応しく、暗転から照明がソファを明るく照らすと黒い衣装でドレスアップした佐東が本を目の前で広げて読んでいる。そして、舞台には本を朗読する声が流れてくる。そこで読まれた本は当日パンフによればゲーテ「形態学論集・植物編」、泉鏡花「外科室」などとあるが、最初の何か哲学的な言葉を多用した論考のようなテキストがゲーテなのであろうか。これは実はあまりよく分からないのが正直なところだ。
ただ、次に読まれるのは小説の一部らしい文章で、外科室という言葉もそのまま何度か繰り返されて出てくるのでこれが泉鏡花の「外科室」であることは間違いない。
私の個人としての定義では身体所作(ムーブメント)が言語テクストと渉りあう関係そのものが「演劇」だと考えている。そういう意味ではこれは演劇だと言いたいところだが、「外科室」のテキストと並行して提示される勅使川原三郎の身体所作は言語テキストの内容そのものを反映しているわけではない。両者がどのような関係をなしているのかを説明するのは簡単」ではないが、少なくとも両者は互いに独立した存在としてそこにあり、身体所作(あるいはダンス)が直接テキストで語られることを説明する動きになっているわけではない。そのため小説の意味内容はそこに独立して存在し、独立してあるイメージを喚起することはあるが、ダンスはそのイメージを反映しているわけではない。だからこそ、これはダンスなのだと思わされたのである。夏目漱石夢十夜」、川端康成「片腕」と官能性を感じさせるテクストがダンサーの新しい魅力を引き出していた。

「読書 本を読む女」上演にあたって
              
              佐東利穂子

劇場にはその場所ごとに個性、特徴があるけれど、近頃はずっとアパラタスでの活動を続けていただけにシアターXの空間で公演をすることをとても楽しみにしていました。というのも、ここは創作に集中しやすい場所であるとともに、舞台と客席との距離が近く、そこを行き来することで作品の題材を...

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「読書 本を読む女」


密閉された本の頁を開く
暗闇だった紙面が明るくなり目が言葉に触れる
声が言葉を飲み込む 
落ちるように本の中に吸い込まれる女
無時間の文字空間に身体を失い浮遊 
動揺や謎をまとい 理解と無理解に遊ぶ

言葉と音調の密着と分離の繰り返し 
読書を止めると沈黙に身体は掴まれ

現実に放りされる

静寂に押しつぶされるが 再び本に戻る 
言葉の響きと透明の動きを重ね合わせて

自在に時間を伸縮変形させる
真空を呼吸しダンスする者



勅使川原三郎

ー 公演概要 ー



「読書 本を読む女」

構成・振付・演出・美術・照明・衣装 

勅使川原三郎

出演 佐東利穂子 勅使川原三郎



日時:2021年

6月24日(木) 19:30

6月25日(金) 19:30

6月26日(土) 16:00

6月27日(日) 16:00

客席開場は開演の15分前

客席はチケット記載の整理番号順にご案内します



劇場:東京・両国 シアターXカイ

〒130-0026 東京都墨田区両国2-10-14 両国シティコア1階



料金(全席自由・税込・入場整理番号付)

一般:前売5,000円、当日5,500円

 学生・シニア(65歳以上):前売3,500円 

*学生券・シニア券は各日各10枚ずつ限定、