KARASアップデイトダンスNo.71「永遠の気晴らし」(勅使川原三郎振付)@荻窪アパラタス
コロナ禍により、舞台の公演が相次いで中止となって以降、初めてでかける舞台公演となる。手足の消毒など対策を十分にとってのことではもちろんあるが、人数を絞ってであっても、観客を入れての公演ができたのは口からの飛沫がまずは飛ばないダンスの公演であることに加え、公演会場が自前のアトリエであり、ここでの公演では照明、音響などのスタッフも常時カンパニーの内部でまかなっていたこともあり、すべての判断を勅使川原三郎自らが担う状況を作ることができたということもあるかもしれない。
いくつかの音楽に載せて踊るソロ、デュオのダンス。最初はフルートで、ゆっくりと。そして、ピアノに乗せて軽快に舞う。さらにはビートの効いたロックからジャズは激しく。ただ、踊っているだけと言われてもおかしくないところだが、きわめて純度の高いダンス作品にちゃんとなっている。それは何だろうと考えさせられた。
勅使川原三郎のダンスのオリジナリティーは何よりもその独特なムーブメントにあるということは間違いないであろう。動きの素材としてはマイムとバレエの技術を基礎にしてはいるはずだが、そのどちらの動きとも根本的に違う。しかし、彼をここまで世界的な活動が可能な振付家としているのは身体(ムーブメント)、照明、舞台美術などをすべて自分自身でデザインしながら、何もないような空間に抽象、具象を取り混ぜた形象を立ち上げていくという構築力がダンス作家としてはそれまでにないほどに卓越しているからだ。
ただ、今回の「永遠の気晴らし」に関して言えば照明効果による空間構成も美術もほぼなく、四方を黒い壁で囲まれたアパラタスの空間に勅使川原三郎と佐東利穂子の身体が浮かび上がり、そのムーブメントと流れる音楽のみで構築されたひたすらシンプルな舞台と言っていい。
音楽もクラシックからロック、ジャズとジャンルは横断的であるものの、歌詞などはなく、すべての曲がインストゥルメンタルであり、それだけに観客である私たちもそこに言語として与えられる意味やイメージなどを見て取ることもなく、身体と音を体感することになる。
最近の勅使川原作品ではダンスアクトレスとして役柄を演じるのに長け、身体もよく動く佐東利穂子の良さが目立つものが多く、舞台を見ていてもそちらに目が行きがちになるきらいがあったが、この作品では勅使川原のダンサー、パフォーマーとしての良さが前面に発揮されたものとなった。特に冒頭近くのソロであまり激しい動きはしないでたゆたうようにゆっくりと動く部分でのディティールの美しさが素晴らしかった。
[公演概要]
アップデイトダンス No.71
身体の奥底のうごめき 無目的な戯れ
機能性から外れた無限再生遊戯
危機 ある晴れた日に
演出・照明 勅使川原三郎
出演 勅使川原三郎 佐東利穂子
【日時】
6月12日(金)20:00
6月13日(土)20:00
6月14日(日)16:00
6月15日(月)20:00
6月16日(火)休演日
6月17日(水)20:00
6月18日(木)20:00
6月19日(金)20:00
6月20日(土)16:00
*受付開始は30分前、客席開場は10分前
【料金】
一般 予約 3,000円 当日3,500円
学生 2,000円 *予約・当日共に
【予約】
・予約フォーム https://www.updatebooking71
・電話:03-6276-9136
・メール:updatedance@st-karas.com
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