下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

したため「文字移植」@こまばアゴラ劇場

したため「文字移植」@こまばアゴラ劇場

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原作:多和田葉子 演出・構成:和田ながら 美術:林 葵衣


京都を拠点に活動する演劇ユニット・したためが、2016年に初演をおこなった代表作『文字移植』の再演に臨みます。
ドイツ語と日本語、ふたつの言語を往還しながら創作活動を展開する作家・多和田葉子の初期作『文字移植』は、読点のない地の文と読点のみで連ねられていく逐語的な翻訳文、そのふたつが交互にあらわれるという特異な構造をもった短編小説。多和田葉子の言葉を俳優に「移植」したいと望み、愚直な疾走に懸けた初演は、美術家・林葵衣の手がけた舞台美術と共に高い評価を得ました。
したため初の東京公演、どうぞご期待ください。

したため

京都を拠点に活動する演出家・和田ながらのユニット。

名前の由来は、手紙を「したためる」。日常的な視力では見逃し続けてしまう厖大な細部を言葉と身体で接写する、あるいはとらえそこないつまづくさまを連ねるように作品を制作する。

美術家や写真家、音楽家など異なる領域のアーティストとも共同作業を行う。

2015-17年、アトリエ劇研創造サポートカンパニー。2015年、和田が創作コンペティション「一つの戯曲からの創作をとおして語ろう」vol.5最優秀作品賞受賞。

出演

穐月萌 岸本昌也 菅一馬 多田香織(KAKUTA)

スタッフ

照明:吉田一弥
音響:甲田徹
衣装:清川敦子(atm) 
舞台監督:北方こだち
制作:渡邉裕史
芸術総監督:平田オリザ
技術協力:鈴木健介(アゴラ企画)
制作協力:木元太郎(アゴラ企画)

したため「文字移植」は冒頭からしばらくの部分は俳優が正面を向いて「語る」という形式を取る。このため一瞬、地点のフォロワーなのかと勘違いをする瞬間もあるのだが、公演全体を通してみるときわめてポストゼロ年代的。上演の様式はまったく違うが、劇団の固有のスタイルが上演されるテキストによらずもともとあるというのではなく*1
 和田ながらの演出舞台についてはこれまでアゴラ演劇コンクールでの「お気に召すまま」、「ヘッダ・ガブラー」を見た程度で実際の公演を舞台で見るのはこれが初めて。それゆえ、もう何作品か見てからではないと確かなことはいえないが、今回の「文字移植」は演劇のスタイルとしては先ほど言及した「語りの演劇」から、普通の会話劇に近い様態、パフォーマーが過負荷な状態で激しく動き回るきわめてポストゼロ年代演劇的な形式などさまざまな様式がコラージュされたようなものとなっているのだが、これは言語実験的な手法をいろんな形式で試みている奇異なテキストをいわば演劇に転換したことでこういうことが起こっているので、したための固有なスタイルがそうだと考えないほうがいいのだと思う。
ただ舞台からはいくつかのことを判断することが可能だ。発話や発声のニュアンスがこの作品において決定的に重要だということもあってか、出演する4人の俳優はいずれもいろんな台詞回しができる確かなスキルを持っていると感じさせること。しかも演出がそれぞれの発話に対してどういう風にやるかを俳優任せにはせずにきめ細かく丁寧にディレクションしてことが感じられることだ。おそらく稽古場でも相当に何度も何度も反復練習したのではないかと感じられる。このことは両面あることも確かで、舞台の完成度が非常に高いということを感じさせるとともにある種、個人に任された領域の自由さがないことによる窮屈さも感じる部分もあった。ただ、「文字移植」という今回のテキストはそういうパフォーマーまかせの緩さを許容しないようなところがあるというのも確かで、そういう意味ではこの作品はこの作品として評価しつつも先の「ヘッダ・ガブラー」でもチェホフでもいいからもう少し会話劇的なオーソドックスなテキストの上演ではしたためがどうなるのかというのも見てみたいという気にさせられた。
実は過去に和田ながらの演出作品を見たことはないと書いたのだが、好奇心からサイト内検索をしてみたところ木ノ下歌舞伎、マレビトの会、KYOTOEXPERIMENTマルグリット・デュラス作 「アガタ」 などの演出助手に名を連ねており、きたまりの主宰していたダンス企画「DANCE FANFARE」にも参加していた。
 実はアウトプットとしての作品から受ける印象はかなり違うのだが作品へのアプローチにおいて自らのスタイルよりもテクストありきの演出プランをという意味では木ノ下裕一と近いのではないかと感じていたがルーツ的にもそれはあったわけだ。一方でマレビトの会にも参加しており、特にマレビトの会「血の婚礼」に演出助手として参加していたというのは別の意味で興味深かった。
 「文字移植」は「血の婚礼」とは対極的な演出がされていると感じたからだ。松田正隆の演出はそれぞれの俳優の発話の方法論にはまったく拘泥しないもので当時の劇評に「確かに母親役の広田の演技は舞台上で独特のフレージング(台詞回し)の技法を見せ、様式において安定感を感じさせるが、それはあくまで個人的なものであり、その演技が規範となるという風にはなっていない。常連俳優である筒井も同様であり、この舞台には地点やク・ナウカに見られるような様式的な統一性はいっさいない。むしろ、松田の興味はテンションや語りの技法においてそれぞれにバラバラな演技、身体のありようをコラージュ、あるいはパッチワークのように張り合わせることで同時に舞台に乗せることにあるように思われた」*2などと書いた。
 それではしたため(和田ながら)はどうなのか。結論からいえばテクスト至上主義のあり方は木ノ下歌舞伎と非常に似ているといえるかもしれない。この「文字移植」でも言語実験的な多和田葉子の原テクストがまだあって、それを現代演劇として上演するためにはどのようなスタイルが可能かという順序で舞台「文字移植」は構築されている。
 木ノ下歌舞伎同様俳優は劇団固有のメソッドを訓練されているのではなく、それぞれがつちかった演技スタイルによって舞台に臨んでいるが、マレビトの会と大きく違うのはそれぞれのスキルを松田正隆のように放置するのではなく、テキストに基づき模索されたトーンに合わせるためにきめ細かく丁寧に調整されており、そうした細部の仕上げの力が和田ながらの最大の武器といえそうだ。それに加えて、どういう俳優を出演者として選ぶのかという時点での周到さも木ノ下歌舞伎を思わせる。
 この作品は舞台美術を普段は現代美術畑で活動している林葵衣が担当。それも美術家は単にオブジェとして美術装置を提供するにとどまらず演出家と共同で作品の空間構成・コンセプトワークにも携わるなど本格的な共同制作に参画しているのが、もうひとつの特徴だ。
 林は近作では「声の痕跡」というシリーズで、唇に絵具をつけて、平面(キャンバス、パネルなど)に押し付け、発語した時の唇の形を版画のように写し取る作品群をつくってきた。それは、発せられるとすぐに消え去ってしまう声という儚ない存在を、唇の形の痕跡として可視化しようというものだ。
 美術作品では絵画の形態をとることが多く、そえゆえVOCA展などにも出展された実績もあるが、本来コンセプトアートの色合いも強く、同じ京都の美術作家では気化して消えてしまうナフタレンの彫刻で時間を可視化する連作を制作した宮永愛子に連なるような系譜の作家ではないかと思う。
 その意味では、この「文字移植」ではそれぞれパフォーマーの正面に天井から吊るされる透明なアクリルパネルからなる舞台美術は舞台の進行中に口紅をつけた俳優が唇の形をそこに映していくというリアルタイムの行為とその痕跡として提示され、これは彼女の絵画作品以上にコンセプトをリアルに体現したものとなっていると感じさせられた。
 
artscape.jp

*1:そのぜひはここでは問わないが宮城聰、三浦基、あるいは上演自体は対極的だが平田オリザには彼ら独自の固有のスタイルがあるが、ポストゼロ年代演劇の木ノ下歌舞伎、柿喰う客にはそれがない

*2:wondeland劇評 マレビトの会「血の婚礼」 マレビトの会「血の婚礼」 – ワンダーランド wonderland

たこ虹(たこやきレインボー)夏の東西野音2DAYS「RAINBOW SONIC 2018」@東京・日比谷野外音楽堂

たこ虹(たこやきレインボー)夏の東西野音2DAYS「RAINBOW SONIC 2018」@東京・日比谷野外音楽堂


【期間限定】たこやきレインボー RAINBOW SONIC 2018

たこやきレインボー「RAINBOW SONIC 2018」
2018年8月12日 日比谷野外大音楽堂 セットリスト


01. ダイビング
02. かえして!ニーソックス
03. 絶唱!なにわで生まれた少女たち
04. なにわのはにわ
05. Whoop It Up!
06. サンデーディスカバリー
07. TACOYAKI's burning
08. まねー!!マネー!?Money!!
09. どっとjpジャパーン!
10. サマーゴーランド
11. survival dAnce ~no no cry more~
12. ナナイロダンス(アコースティックVer.)
13. ほなまたね サマー
14. ナンバサンバイジャー
15. ちゃんと走れ!!!!!!
16. オーバー・ザ・たこやきレインボー
<アンコール>
17. シャナナ☆
18. たのしかしまし大阪~おいでやす~
19. RAINBOW~私は私やねんから~
<ダブルアンコール>
20. ナナイロダン

たこ虹は歌、ダンスなどさまざまな要素で今年に入って急成長を遂げている。昨年9月の「オオサカアイドルフェスティバル2017 in TOKYO」以来約1年ぶりに日比谷野外音楽堂(収容人数3,119人)に帰ってきたが、あの時はネタものという制約もあり、フリーハンドでの完全燃焼がしにくかったこともあるが、今回はなにわンダーランドたこ虹バンドとのバンドセッション、DJKOOを迎えてのクラブセッションとライブパフォーマンス力の高さを存分に見せ付け、スタダ4姉妹のなかでもももクロはともかく、シャチエビに劣らぬ実力を持っていることを示してみせた。
 たこ虹の面白さはマネジャーの番長を中心にセルフプロデュースを旨にセットリストなどもメンバーの意見を取り入れてライブを制作していると思われるところで、最近のライブを見ても「夏S」「ももクロマニアの外周パーク」と今回の日比谷野音ではまったく違う印象を与えるセトリで挑んでいる。逆に言えば今年の春には曲調においていままで以上に広がりのある新アルバムも出したことで長い間レパートリーの核となってきた「絶唱!なにわで生まれた少女たち」「なにわのはにわ」などのヒャダインの旧作をやらなくてもいろんなセトリが組めるだけの自由度が持ち曲に出来たことがあるのだと思う。
 「夏S」ではそのうち「虹色進化論」「Whoop It Up!」とアイドル曲というよりはガールズ・ポップ・グループというような色彩の強い楽曲を並べて、一部ファンから強い批判の声を受けた。ところが今回の野外ライブではおそらく批判を受けたからはずしたというのではなく、こうしたどちらかというと盛り上がりではなく、音楽として聴くという曲を野外ライブという特性も考えて、はずした。新しいたこ虹の象徴として最近のライブではセトリの中心となっていた「虹色進化論」「卒業ラブテイスティ」を完全にはずしてしまったのが面白い。
 さらに驚かせたのは冒頭2曲に「ダイビング」「かえして!ニーソックス」という結成したもののまだ自分たちの持ち歌がなかった時代にカバーしていた曲を持ってきたことだ。これには一瞬、昔を思い出させ、古参の虹家族を「あのころはちっちゃくて可愛かったなあ」と和ませるようなところがあったが、ここでの油断は死を招く(笑い)。
 ここからはなにわンダーランドたこ虹バンドの演奏で「絶唱!なにわで生まれた少女たち」「なにわのはにわ」から「Whoop It Up!」「サンデーディスカバリー」「まねー!!マネー!?Money!!」と新旧を取り混ぜながら怒涛のパフォーマンスが続く。日比谷野外音楽堂に集まったほぼ満員の観客を殺しにかかるようなセットリストだった。
 さらに続いてはバンドがステージからはけるのとほぼ同時に今度は彼女たちにとっては所属レーベルavexでの大先輩でもあるDJKOOが登場。「どっとjpジャパーン」、何これという歌なんだけどもともとDJKOOとの共演で出した曲だけあって一緒にやるとやはり盛り上がる。そのままナナイロダンスに突入かと思って待ち構えていると何と「survival dAance ~no no cry more~」に続いた。この曲を聴いて感心させられたのはさすがavex所属と言うかこういうノリのいい曲を歌った時のたこ虹のメンバーの歌唱力の高さだ。
 以前数年前にフォーク村の公開放送に小室哲哉とマークパンサーがゲストで来た時にTMNETWORK、trf、grobeの楽曲をももクロメンバーがひとりずつカバーしたことがあったが、その時点で楽曲完璧にこなしていたのは杏果だけで、あーりん、れにちゃんは大苦戦していたのを記憶しているが、この日のたこ虹は冒頭でひとりづつソロ歌唱をつないでいくような歌割りでもこうした楽曲をほぼ全員が自分のものとして歌いこなしていて、不安定さが微塵もない。もちろん、最近フォーク村にたこ虹が来て「桃色空」を歌った時にはれんれんが緊張でガタガタになっていたから、何でもこなせるわけじゃないのも確かだが、ダンス音楽系の楽曲ではすでにももクロ以上の技量を見せている時もあるといっていい。
 一方、バラードなどではやはりももクロに一日の長があるといっていいが、この日は見せ場のひとつとしてアコースティックギターと竹上良のフルートで、アンプラグド版としてバラードに編曲した「ナナイロダンス」を披露。新境地も見せた。 本編は再び「ちゃんと走れ!!!!!!」、デビュー曲の「 オーバー・ザ・たこやきレインボー」と懐かしめの曲で締めくくり、新旧のバランスのとれたプログラムとなったのではないだろうか。
 続いて、アンコールはカバー曲ではあるが、野外で盛り上がる「シャナナ☆」、けっこう珍しいのではと感じた「たのしかしまし大阪~おいでやす~」の後、いまや「なないろダンス」と並んでたこ虹のレパートリーの中心曲に位置づけられている「RAINBOW~私は私やねんから~」で締めくくった。同曲はヒャダインの楽曲ではあるがノベルティソングの色彩が強い昔のヒャダインと異なり、LGBTをテーマにしたメッセージ性の高い楽曲。ヒャダインがアイドルの楽曲としてあえてこれを持ってきたことにもある意味驚きながらもぐっときた部分があり、もちろん、世間的には今でもヒャダインの代表曲といえば「怪盗少女」になるのではあろうが、個人的にはこの「RAINBOW~私は私やねんから~」とももクロの「Hanabi」はヒャダインの最高傑作だと思っている。
 このライブの最大のサプライズといっていいのはアンコールもその後のちょっとした挨拶も終わり、場内に終了のBGMが流れた後に急遽のダブルアンコールがあり、この日はアコースティックVerをすでにやっていたから、残念だけれどもうないなと諦めていた「ナナイロダンス」をバンド演奏付きで披露したことだ。BiSHで知られる松隈ケンタ作詞作曲のダンスナンバー「ナナイロダンス」はavexメジャー契約後のデビュー曲ということもあって発表時にはたこ虹はavexに魂を売ったのかなどとそれまでのファンから大反発を受けたが、現在はライブで盛り上がる定番曲として先に書いたように「RAINBOW~私は私やねんから~」と双璧のセットリストの柱となっている。この日のライブはダンスを完全に廃したアコースティックVerで、この日ならではのスペシャル感という意味ではよかったし、全体の出来栄えも満足できるものではあったが、最後の最後に披露されたこの曲は例えてみればジグソーパズルで最後のピースが見事にはまったというような満足感があった。simokitazawa.hatenadiary.jp

たこやきレインボー / ナナイロダンス(RAINBOW SONIC 2018)

たこやきレインボー / TACOYAKI's Burning(RAINBOW SONIC 2018)

『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018』参戦記 ももクロライブレポート(ロッキン)

ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018』参戦記ももクロライブレポート


JAPAN JAM 2019 ダイジェストのダイジェスト

セットリスト:ももいろクローバーZ
1、BLAST!
2、Chai Maxx
3、ココ☆ナツ
MC2、Chai Maxx
3、ココ☆ナツ
4、Re:Story
5、走れ!
7、Z伝説 ファンファーレは終わらない
8、行くぜっ! 怪盗少女
9、クローバーとダイヤモンド

本日のDMB
#ダウンタウンももクロバンド
#宗本康兵 Key
#浅倉大介 Key
#柏倉隆史 Dr
#浜崎賢太 EB
#大渡亮 EG
#佐藤大剛 EG AG
#大郷良知 Sax

#半田信英 Tb

 ROCK IN JAPAN FESTIVAL参戦は昨年に続き2回目。昨年は知人の好意で車に同乗させてもらったのだが、今年は勝田駅経由のJRとシャトルバスを乗り継いでのひとりでの参加となった。目的はももクロのライブだが、その前にゴールデンボンバー(金爆)を見たいなとも思っていた。
 だが、シャトルバス乗り込みにけっこう時間がかかったせいで会場に着いてみるとちょうど目の前のLAKE STAGEで金爆と時間が重なっているでんぱ組がやっていて、それを2~3曲聴いているうちに時間がたってしまった。金爆とももクロのライブ会場は入り口から離れた場所にあるGRASSSTAGEだということもあり、そこに着いてみると金爆はとっくに終了し、ダウンタウンももクロバンド(DMB)の音声チェックを兼ねたリハーサルがはじまっていた。
DMBの存在はこうしたロックフェスでは本当に大きい。ロック通が多いロッキンの客層にはモノノフ以上にインパクトがあったようだ。特に今回は前週に千葉幕張のZOZOマリンスタジアムであったワンマンライブ「ももクロマニア」に参加したバンドメンバーが数人を除いてほぼそのまま参加していた。そこには宗本康兵、浜崎賢太、佐藤大剛のおなじみのメンバーに加えて浅倉大介access)、大渡亮元(Do As Infinity)、柏倉隆史も名を連ねており、特に浅倉の参加はももクロマニアでもかなりの反響だったが、ここロッキンではそれどころではなく、「何で?」「分かっていたらそちらの会場に行っていたのに」などと相当以上の衝撃を与えていたようだ。
  昨年のロッキンは初めてダウンタウンももクロバンドを帯同してフェスに乗り込んだこともあってももクロとしてそれまでの中で最高到達点といっても過言ではない出来栄えで、5人のももクロはロックファンに対しても大きなインパクトを与えたが、特に素晴らしかったのが有安杏果のボーカルから始まる「BLAST!」だった。果たして4人のももクロのパフォーマンスがそれに並ぶような結果を残すことができるのかという危惧は始まる前には若干あったものの夏菜子のパワフルなボーカルからその「BLAST!」がスタートするとそんな杞憂は一度で吹っ飛んだ。夏Sでもももクロマニアでも感じたことだが、4人とか5人とかを感じさせないような厚みのあるボーカル、それが4人そろってユニゾンとなるといまだかつてないような無敵感が醸し出される。ももクロについてはいまだに「歌が下手」などとくさす人が後を絶たないのだが、この日でんぱ組、あゆみくりかまき、チームしゃちほこといくつかのアイドルグループを続けて見てはっきり分かったことがある。それは小手先の歌の技術などではなく、ボーカルがその歌の世界で客席を支配する力において、ももクロと他のグループには比較にならないほどの違いがあることだ。そういうとファンの欲目みたいにみられるかもしれないが、将来はともかく現時点の力量において先に挙げたグループは会場を埋められるかという人気の差を度外視しても観客を巻き込んでいく空間把握力に明らかに差はあった。そして、それはスタジアム級の単独ライブを何度も経験してきたからこそつかんできた力なんだろうと思う。
 今年のももクロは「BLAST!」で観客を圧倒した後も、野外ライブで盛り上がる「Chai Maxx」「ココ☆ナツ」とアゲ曲を連発。特にヒャダインの「ココ☆ナツ」は初めて聴く人でもすぐに覚えてしまうような「ココココココココ」の連続をはじめ振付もインパクト抜群でこういう夏のアウエーでは抜群の威力を発揮するキラーコンテンツだ。この日も会場の後ろの方まで一体となっての大盛り上がりを見せた。
 ただ、この日の暑さではこれ以上激しい曲が続くと熱中症で倒れていたかもしれず新曲の「Re:Story」はそういう意味でもいい挟み込みのされ方だった。その後は「走れ!」「行くぜっ! 怪盗少女」と「ももクロといえば」という有名曲2曲によって初めてももクロを見た観客も満足させ、5人になりZになって最初の自己紹介曲を4人バージョンに改作した「Z伝説 ファンファーレは終わらない」で4人の新生ももクロの新たなる門出をアピールした。
 最後にはももクロ結成10周年を記念して発表された「クローバーとダイヤモンド」を歌い上げ、余裕を残してその存在感をまざまざと示した。
 先述したがこのライブを見ると、もはや国内にももクロにとってアウエーのライブ環境というのはないのではないかと思われてきた。このロッキンも昨年初めて参加した時は「ももクロってどうなの?」と懐疑的な観客もけっして少なくなかった。しかし、今回のライブを見ているとロッキンでもホームに近いような感覚を演出しつつある。それは昨年の評判でモノノフが増えたからというようなことではなく、会場に分散しているモノノフの力を借りながらもファン以外の観客を引き付けて味方にしてしまうような魅力がももクロにはあって、そこが他のグループと決定的に違うところだと思えた。
 それを象徴するのが間違いなくアドリブだと思うが、誰かが「ももクロのファンじゃなくて、興味もない人」と会場に呼びかけてある程度の数の観客が「そうだ」とウオーという声を上げたのに対して、高城れにが「そういう人もももクロを好きになってください」と突然卑屈にお辞儀をするような仕草を見せると一度は他のメンバーが「そんなみっともないことをするな。10年続けてきたプライドはないのか」と制止に入るが、それを今度は夏菜子が再び止めて、今度は全員で「ももクロのことを好きになってください」と深くお辞儀する。ここまでの一連の流れるような進行こそ、歌とダンス以上に「これがももクロだ」と思わせるもので、会場にはそれで興味を持った人も少なからずいたのではないかと思う。
 さらに言えば左側、右側、遠くの方などと煽りを入れるのはこうしたライブの定番となっているが、それに加え遠くに見える観覧車に向かって「観覧車のみなさん」などと声掛けをしたのも笑わせてもらった。確かにGRASSSTAGEについては観覧車から撮影したと思われる観客の集まり方の写真がよくネットなどにも上げられているから、風向き次第では音も聴こえるのかもしれないが、観覧車に向かって声掛けしたのはロッキン史上でもももクロが初めてじゃないだろうか(笑)。

セットリスト:あゆみくりかまき
1.ジェットクマスター
2.鮭鮭鮭
3.アイノウタ
4.KILLLA TUNE
5.心友フォーエヴァ
6.HAVE A NICE DAY,世界

 ももクロを見終わると次はGRASSSTAGEで予定されていたのはmiwaだったのだが、お腹も減ってこのままだと熱中症で倒れそうなこともあり、フードエリアで休憩、食事、飲み物をとり、次に見たのが近場のBUZZSTAGEのあゆみくりかまきだった。実はこのあゆみくりかまきとこの日の最後に見たチームしゃちほこはどちらも今回がロッキンに5回目(5年目)の出演。とはいえこのBUZZSTAGEではライブとライブの間に時折DJタイムが挟み込まれるため、あゆくまが最初に出演したのはこの同じ会場でもくりかまき時代のDJとしての出演だった。それがボーカルのあゆみが加わりあゆみくりかまきとなり、今回は初めて主催者側がセッティングした(?)と思われるバンドを帯同しての登場となった。
 それは彼女たちにとって相当に嬉しいことだったようで、いつもノリのよい彼女らのライブだがこの日は特にノリノリのステージだった。私はももクロファンだが、アイドルファンとは言えない。あゆくまも単独ライブに行ったことはないが、ももクロがライブ前に本会場の周辺に設営した会場で開催しているミニアイドルフェスの常連となっていて、特に野外ライブでの客の乗せ方(ステージング)のうまさにはいつも感心させられている。
 それゆえ、この日も観客の盛り上がりは十分でその中に自分も入っているともの凄く楽しいものではあったが、楽しんでいるオタクとそれ以外の観客の熱量の差は歴然としていて、外への広がりはあまり見られなかった。  
 ももクロのライブの後に見たせいもあるが、まず思ったのは3人で歌っていて、それぞれが交互にソロをとるスタイルなのだが、中にいると臨場感で楽しめても歌自体は歌詞があまり分からない。ももクロはある程度歌詞を知っているし映像と一緒に歌詞も流されるからということもあるがそれだけではない気がする。
 夏Sでももクロの後輩グループを見た時にも同じようなことを感じたが若いグループほど歌詞をシャウトしすぎたりしていて聞き取れないのだ。
 もちろん、あゆくまはそういう若いグループとは比べられないぐらい高い技術を持っているし、いわゆる歌唱力ということでいえばももクロよりも上だという見方をする人がいてもおかしくない。      
 GRASSSTAGEとBUZZSTAGEでは音圧や客の集まり具合も違うのだが、アイドルファン以外の観客への届き方は実力派のあゆくまでさえ、ももクロとは全然違っていて、両者の間に集客力だけではない差というものを感じてしまった。

セットリスト:チームしゃちほこ
SOUND OF FOREST

1 Song 2(Blur cover)
2. 雨天決行
3.抱きしめてアンセム
4.いいくらし
5.BURNING FESTIVAL
6.ザ・スターダストボウリング
7.ULTRA 超 MIRACLE SUPER VERY POWER BALL
8. START

 チームしゃちほこも5年連続の参加。毎年少しずつ主催側の評価を高めて今年はついにSOUND OF FORESTのトリを射止めた。ももクロあるいは欅坂もそうだが、ロッキン初出場にしていきなり最大のGRASSSTAGEというのは特例中の特例なのかもしれない。毎年出演し実績を積み重ねながらステップアップしていくのが普通なのだ。
 チームしゃちほこもそうした道を通ってここまで来たが、MCなどでそのことに触れることも一度もなかったが卒業を秋に控える伊藤千由李が今年で最後のロッキンということもあり、より一層熱の入ったものとなった。
 こちらも緩急などというものはいっさいなく最後まで攻めの姿勢を見せたライブパフォーマンスでしゃちらしさを出した。といえばそうなのだが、ももクロとの埋めがたい差を感じた。加えてここで1人欠けることはももクロ以上にきついかもなあと感じてしまったのも確かだ。
 救いは最後の最後にアンコールの声に催促されて再びメンバーが登場した際に咲良奈緒が「ロッキンではアンコールで出てきて歌うのが許されて歌えるのはGRASSSTAGEのトリだけというのが決まっている」と説明した後、私たちもGRASSSTAGEに行きたいし、いつかそこでトリを務めてアンコールにもこたえたい」とファンに向けての挨拶で闘志を見せたのにはちょっとやられた。やはり相当危機感を感じているに違いない。それでも夢を諦めたくないという強い意志を感じさせてくれたことにぐっと来るものがあった。しゃちほこのステージは笠寺・ガイシホールで一段落した感もあり、しばらく行ってなかったが、名古屋まで遠征はできなくてもチャンスがあればまた見に行こうという気にさせられたパフォーマンスだった。
simokitazawa.hatenablog.com]

オフィス上の空プロデュース 悪い芝居vol.20.5『アイスとけるとヤバイ』@築地本願寺ブッディストホール

オフィス上の空プロデュース 悪い芝居vol.20.5『アイスとけるとヤバイ』@築地本願寺ブッディストホール

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作・演出 山崎彬 音楽 岡田太郎

出演
中西柚貴 潮みか 植田順平 長南洸生 東直輝 佐藤かりん 北岸淳生 畑中華香 山崎彬(以上、悪い芝居)清水みさと(オーストラマコンドー) 岩井七世 鶴田まこ ほか

築地本願寺ブディストホール
2018年8月8日(水)〜12日(日)

悪い芝居の山崎彬の特徴は作品ごとに舞台の印象がコロコロ変わることだ。そのため作風を一口で説明することが難しい。それでも「らしい」作品はいくつかあって、最近は前作の「ラスト・ナイト・エンド・ファースト・モーニング」のような暴力的な犯罪の被害者などエキセントリックな登場人物のトラウマなどをモチーフとする重めの作品が多かったが、今回の「アイスとけるとヤバイ」は一変してポップかつナンセンスかつキッチュな「笑える演劇」だった。
 作風が作品ごとに違うということを説明しようとしたときにナイロン100℃のケラのことが脳裏に浮かんだ。冒頭の劇中劇や植田順平演じる人物が直接客席に語りかけることで舞台が進行するというメタシアター的な仕掛け、タイムトラベルとコールドスリープというSF的設定で、より強くそう感じるということがあるのだとしても、関西弁を多用した関西版ナイロン100℃とでもいいたくなるような作品となっていたのではないか。
○○に似ているなどという言い方は褒めていることにならない*1のであまり言わない方がいいのだろうが、悪い芝居を見ると真似をしたとかそういうレベルではないところで90年代に登場してきたナイロン100℃大人計画が持っていたエンタメ性と実験性をいずれも備えていた劇団の魅力と同質のものを感じるのだ。ところでこの両者には猫ニャーやブルドッキングヘッドロック、劇団本谷有希子など後継と目される劇団もいた(いる)が、そうした劇団とは全然似ていないということを考えれば独自性は大いにあるといえよう。
似ているということで言えば作品のタッチ自体が似ているというわけではないが山崎彬自身が影響を受けた劇団としてデス電所のことを挙げていて、そういえばデス電所もその活動の全盛期(~2012年)において作演出を務める竹内佑と音楽を提供した和田俊輔の共同制作のような部分があった。
 悪い芝居もオリジナル音楽を提供する岡田太郎(出演もする)と山崎のコンビが前述の竹内・和田コンビと重なるような部分がある。デス電所の場合、和田俊輔の退団後も劇団は継続したがそれまでの勢いを失ったような側面は否定できない。和田の退団の理由には外の仕事が増えてきたこともありそうだから、岡田太郎の場合も最近売れっ子になりつつあり、今後どのように活動のバランスをとって山崎・岡田コンビが活動を継続していけるかが、悪い芝居の今後を占う大きな要因になっていくかもしれない。
とはいえ、山崎の作家としての本線は漫画に例えるなら「アオイホノオ」というか、暴力的で破天荒な連中が目茶苦茶をするようなストーリーラインにあるのだと思う。これだって随分無茶苦茶じゃないと思う人もいるかもしれないが、表題の「アイスとけるとヤバイ」からも感じられるのはやはり夏の夜をすごしやすくするポップで軽やかな笑いの側面が強い。

*1:二番煎じ的な意味合いで受け取ってしまう

六本木ヒルズ・森美術館15周年記念展「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」@森美術館

六本木ヒルズ森美術館15周年記念展「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」@森美術館

世界が魅せられた日本建築、その本質に迫る!

2018.4.25(水)~ 9.17(月)

MomocloMania2018 –Road to 2020おかわりちゃん(DAY2)@渋谷TOHOシネマズ

MomocloMania2018 –Road to 2020おかわりちゃん(DAY2)@渋谷TOHOシネマズ

<DAY2>2018年8月5日(日)
両日共通:open 14:30 / start 17:00 / (20:30終演予定)
※雨天決行・荒天中止
※当日の公演内容によって終演時間が前後する場合がございます。

おかわりちゃんとは… 本公演の模様を、後日全国の劇場でお楽しみいただくディレイ中継イベント。

ロロが高校生に捧げるシリーズ いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三高等学校vol.6「グッド・モーニング」@早稲田小劇場どらま館

ロロが高校生に捧げるシリーズ いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三高等学校vol.6「グッド・モーニング」@早稲田小劇場どらま館

誰もが惚れ惚れするような「おはよう」を言ってみたくて、私はひとり朝練をしてる。まだ誰もいない駐輪場で、完璧な「おはよう」の特訓。昨夜を光に返してあげるための「お」と、朝霧に溶けて忘れさられる「は」と、チャイムにもかき消されない、あなたにだけ手渡す「よ」と、どこまでも伸びて夕暮れまで残る「う」を言えるように、ひたすら口角筋を鍛え上げていく。お、は、よ、う、お、は、よ、う。遠くから誰かのペダルを漕ぐ音が聞こえてくる。いよいよ本番だ。開口一番、私は青春史上最高の挨拶を決めて、きっとあなたは一目惚れをする。


脚本・演出|三浦直之

出演| 望月綾乃(ロロ)  大場みな

ロロが高校生に捧げるシリーズ いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三高等学校シリーズ(いつ高シリーズ)は第三高等学校という架空の学校を舞台設定にした連作演劇で、このシリーズは上演時間1時間以内、出演者が自ら10分間で舞台装置を組み上げるなど高校演劇の大会ルールに準じた舞台作品となっている。もうひとつの特徴は出演する俳優が演じる役柄以外に必ず別の人物が作品中で言及されることで、その言及された人物がシリーズの別の作品に今度は俳優が演じる役として登場することで、そうしたつながりによって1編1編は独立した作品であるとともには「 いつ高」サーガというより大きな世界観の一部ともなっている。
 そうした理由からそれまで登場しなかった人物が言及されたり、登場したりすることもあるのだが、今回のvol.6「グッド・モーニング」には深夜の教室で起こった出来事が描かれたvol.2の「校舎、ナイトクルージング」に登場した学校の音を盗聴し夜になるとそれを聞きにやってくる不登校の少女<逆>おとめ(望月綾乃)とvol.3などに登場する白子(大場みなみ)が描かれる。ダンスを踊る音を<逆>おとめが聞いて密かに思いを寄せている相手として「シューマイ」のことが語られる。
ロロの三浦直之の得意なモチーフといえばボーイ・ミーツ・ガール、つまりさまざまな形での恋愛の諸相なわけだが、実は「いつ高」シリーズの前回作vol.5「いつだって窓際でぼくたち」は4人の男の子たちのボーイ・ミーツ・ボーイの物語だった。実はその舞台には4人の登場人物のひとりとして「いつだって窓際であたしたち」以来ひさしぶりに「シューマイ君」が出ていて、私としては小太りで引っ込み思案なこのキャラを偏愛していたのですごく嬉しかったのだが、今回は<逆>おとめが彼の容姿は知らないのに小沢健二の歌に合わせて踊る足音から片思いじみた感情を抱いていることが分かって、嬉しくなった。
 さらにせつなくなったのは「いつだって窓際であたしたち」の冒頭部分では白子がシューマイの席に座ってうつぶせになって寝ていて、それに内気なシューマイが声をかけられないというところから始まる。女の子と話すのが苦手なタイプのシューマイが珍しく会話を交わせるのが、白子なわけで「いつだって窓際であたしたち」では初対面だからそうでもないけど何となく、白子のことを意識し始めている感じなのだった。それで白子の方がどうかというとそれは描かれていないから何ともいえないけれどシューマイのことを意識しているとは思えない。この作品では私はどうしてもシューマイに肩入れしがちなためにそんな風に考えてしまうのだが、それそれが自分のお気に入りのキャラに思い入れをしていろんなことを想像できる余地があるのもこの作品の魅力なんだと思う。

MomocloMania2018 –Road to 2020-DAY2@千葉県・ZOZOマリンスタジアム

MomocloMania2018 –Road to 2020-DAY2@千葉県・ZOZOマリンスタジアム

<DAY2>2018年8月5日(日)
両日共通:open 14:30 / start 17:00 / (20:30終演予定)

オープニング映像 DAY2

1.吠えろ
2.BLAST!
3.Z伝説
4.ワニとシャンプー
自己紹介(MC)
5.Zの誓い
6.ゴリラパンチ
7.ココナッツ
8.Z女戦争
男子ハーフマラソンスタート
9.GET Z, GO
10.何時だって挑戦者
オラキオのリポートの後スケボーと
BMX
11.境界のペンデュラム
12.ROCK THE BOAT
13.笑ー笑
14.バイオニックチェリー
15. Link Link
フリートーク
ももクリ&南ピーさんももいろ歌合戦発表
16.黒い週末
ハーフマラソンゴール
17.希望の向こうへ
ウィルチェアラグビー&バスケ2種
18.怪盗少女
19.笑顔百景
20.走れ
21.Hanabi
本編終了
アンコール
1.愛を継ぐもの
2.クローバーとダイヤモンド
3.スターダストセレナーデ
4. Re:Story
エンディング挨拶


【ももクロMV】ももいろクローバーZ「Re:Story」Music Video

「桃響導夢」では4人のももクロがどのように5人のももクロを乗り越えていくかという物語であった気がしたが、今回の「MomocloMania2018 –Road to 2020」ではそういうことはもはや問題ではなく、ももクロが成長を続けどのような新たな表現を身につけていくかということが試される場となった。
 それを象徴するような楽曲として提示されたのが振付もミュージカルを思わせるようなショーダンス、ジャズダンス的な要素を取り入れたかに思えた「ROCK THE BOAT」。ももクロが今後も大人の表現に挑戦していくのに際して、玉井詩織の存在の重要性を改めてクローズアップさせたという意味でも注目曲となった。
 歌における高城れにのプレゼンスもより目立つものとなってきており、中でも圧巻だったのが「希望の向こう」「Hanabi」の2曲だった。もともと高城曲のイメージの強かった「希望の向こう」ももちろんよかったが、今回驚いたのは1番を夏菜子、詩織、あーりんで回し、2番にようやく夏菜子の歌い上げるようなボーカルを引き継いでれにが登場した時の「ついにラスボスが現れた」感。こういうのはももクロではこれまでほとんど夏菜子が担ってきたのだが、もともと持っていた声のよさを生かしてれにがこういう部分も担うようになったことで、4人になったことで下手をすると「ももクロ夏菜子だけ」となりかねないところを他の3人の個性もより強調されて、バランスはかえってよくなった感はある。ここではあえて触れなかったがあーりんも新あーりん曲の「ゴリラパンチ」をはじめ、自らのツボにはまった時の爆発力はもちろん健在である。

simokitazawa.hatenablog.com

MomocloMania2018 –Road to 2020-DAY1@千葉県・ZOZOマリンスタジアム

MomocloMania2018 –Road to 2020-DAY1@千葉県・ZOZOマリンスタジアム

<DAY1>2018年8月4日(土)
<DAY2>2018年8月5日(日)
両日共通:open 14:30 / start 17:00 / (20:30終演予定)
※雨天決行・荒天中止
※当日の公演内容によって終演時間が前後する場合がございます。

ももクロ恒例の夏ライブ。今年は昨年に引き続き「Road to 2020」と2020年に開催される東京五輪に向けてアイドルとスポーツの融合がテーマとなった。
 昨年は五輪におけるメジャー種目である陸上競技が中心的モチーフであったのに対して、今年はハーフマラソンは実施されたもののメインはスケートボード、BMXなど新たに五輪種目に追加された新種目の紹介をしようというのがひとつのテーマ。新種目の中では比較的メジャーなスケートボードはともかくとしてBMXのパークなどは私も初めて競技者のテクニックを目の当たりにしたがちょうどスキーのエアリアルモーグルのようにアクロバティックなところもあり、冬季五輪でスノーボード平野歩夢が脚光を浴びたようにもしメダリストでも出れば人気が出るのではないか。
 ウィルチェアー(車いすラグビーも紹介されたのだが、ライブからそれほどたってない日に世界選手権で優勝した。初優勝の快挙だが、五輪金メダル候補といってたのを「どうせまた」と聞いていたのごめんなさい。けっして誇張ではなかったんですね。
 ライブのセットリストは下記のようだが、「ワニとシャンプー」「ココナツ」などの夏ライブ定番曲に加えて、4人verがまだ発表されていなかった「愛を継ぐもの」「ROCK THE BOAT」「デモンストレーション」など比較的新しめの楽曲が目立った。
 特に「ROCK THE BOAT」 を椅子を使ったショウ成分多めの大人の振付で披露したこともあり、今ライブの白眉といってもよかったかもしれない。この曲は「揺らしちゃう」というセリフ部分を担当していることでもともと玉井詩織の曲という印象は
強かったが今回のセンターポジションで椅子に座って始まる冒頭からして代表的な「詩織曲」となったといってもいいだろう。
 もうひとつがニューヨークヤンキースの田中将投手の登場曲として制作された楽曲群で昨年惜しくもワールドシリーズ出場がならなかったまーくんの心情をファンキー加藤が盛り込んだ最新曲の「吼えろ」をはじめ泣ける歌は数多いのだが、ハーフマラソンのスタート直後に歌い始めた「Get Z Go!!!!」などランナーへの応援歌に聞こえた*1


セットリストを確認して書き写そうと思ったのだが、twitterに載せていた人がいたので、転載することにした(転載まずいということであれば連絡してください)。

*1:これで思い出したのだが、大阪国際女子マラソンの最後の勝負どころで流れるテーマ曲を30年近く毎年アルフィーが提供していたのが今年1月が最後になった。この後釜もし決まってなかったらももクロにもらえないかしら

玉田企画「バカンス」@五反田アトリエヘリコプター

玉田企画「バカンス」@五反田アトリエヘリコプター

作・演出: 玉田真也

出演:
奥田洋平青年団
島田桃子(ロロ)
神田朱未
浅見紘至(デス電所
小日向雪
山科圭太
玉田真也 舞台監督:宮田公一、杉山小夜
舞台美術:濱崎賢二(青年団
照明:山口久隆
音響:池田野歩、渡邉藍
衣装:アレグザンドラ早野
演出助手:川井檸檬
制作:市川舞、井坂浩、足立悠子、小西朝子
宣伝美術:牧寿次郎
宣伝写真:馬込将充
主催・企画制作:玉田企画
協力:アニモプロデュース、イトーカンパニー
レトル、青年団デス電所、ロロ