下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017』参戦記 ももクロライブレポート

ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017』参戦記 ももクロライブレポート

ももいろクローバー
セットリスト
overture
M1:行くぜっ!怪盗少女
M2:マホロバケーション
M3:サラバ、愛しき悲しみたちよ
MC 自己紹介
M4:BLAST!
M5:もっ黒ニナル果て
M6:ワニとシャンプー
MC
M7:労働讃歌
M8:ChaiMaxx
M9:桃色空

 

Perfume
セットリスト
M1: FLASH
M2:GLITTER
M3:Magic of Love
M4:If you wanna
M5:I still love U
M6:PTAのコーナー
M7:FAKE IT
M8: Miracle Worker
M9:チョコレイト・ディスコ
M10: TOKYO GIRL

サカナクション
セットリスト
新宝島
M
Aoi
『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』
三日月サンセット
SORATO
ミュージック
アイデンティティ
多分、風。

アンコール

目が明く藍色

 

ももいろクローバーZ 「BLAST!」(ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017 DAY-3)-動画[無料]|GYAO!|音楽 https://gyao.yahoo.co.jp/player/11038/v00020/v0000000000000000623/ #GYAO
 ロックフェスに初めてダウンタウンももクロバンド(DMB)が降臨した。パフォーマンスの準備が始まって、楽器が並べられ出した瞬間にすでに今回はバンドと一緒だと気持ちが昂ぶった。周囲のももクロファン以外の観客からギターのそしてホーンセクションのタイトな音質に随所で驚きの声が上がっていた。ももクロをあまり知らないロックファンの客層に対し、サウンドチェックの一環として、「ゴールデンヒストリー」を演奏してみせた時点でこの日のパフォーマンスの成功は決定づけられていたかも知れない。
そして、「overture」が始まった。ネットの書き込みに「ももクロのステージは大勢集まったがほとんどがももクロファンだ」というような意味の書き込みがあったが、現地にその時にいて感じていた実感は全く違う。私のももクロライブの初体験はあの伝説の大阪サマソニだったのだが、現地はあの時以上のアウエーだった。というか氣志團万博イナズマロックフェスももはや限りなくホームに近いももクロにとってはひさしぶりに遭遇したアウエーの会場がROCK IN JAPAN FESTIVALだった。それゆえにこそ、このグループがもともと持っていてそれこそが最大の武器であったが最近は発揮する場がなかった「場を支配していく力」をまざまざと見せたライブだったのではないか。
 名刺代わりの1曲。「行くぜっ!怪盗少女」でまず「これがももクロだ」の挨拶を済ませ、最近のももクロを代表する「マホロバケーション」で「怪盗」だけではないももクロの音楽的な幅広さを見せつけた。続いて今度は知名度が高く布袋寅泰作曲ということでロック色も強い「サラバ、愛しき悲しみたちよ」を披露。「サラバ~」では西川進がひずませたギター音をかき鳴らしたイントロ部分で大歓声が起きた。新曲の「BLAST!」さらに先の味の素スタジアムのライブでドームツアー以来ひさびさに披露した「もっ黒ニナル果て」はともにラップ要素が強い曲だということもあり、次に「KICK THE CAN CREW」を控えそれ待ちのファンも多かっただろうこの日の客層におおいに受け、盛り上がりを見せた。この日はやらなかった「5THE POWER」「堂々平和宣言」などももクロの楽曲にはラップ曲に好曲が多くて、これも私にとってはももクロライブの楽しみのひとつなのだ。ダウンタウンももクロバンドはいつもももクロの音楽性を支えてくれる大事な存在だが、その技術の高さはこの日参加したどのバンドと比較してもピカイチじゃなかったろうか。もちろん、個々に一流アーティストのサポートメンバーや時にバンドマスターとして活躍してきた人材を集めて結成したバンドだからそれは当然のことだが、この日ほどその最強のバンドがももクロの後ろについていてくれるということを心強く思ったことはなかった。
 サマソニの時と全く違っていたのはスタジウム級の単独公演を何度も経験していること。そうした経験のあるグループのみが持つ、巨大空間の把握力、初めて彼女らを見た観客を含め、会場全体に熱を感染させていく力が並みのバンドとは違っていた。その点ではこの日最後にパフォーマンスを行ったサカナクションがステージから遠い場所へも音楽的支配力を伝播させていく力として群を抜いていたが、Perfumeももクロを比べればこの日のような野外フェスではももクロに軍配が上がったのではないだろうか*1
 ネット上にはももクロが会場を埋めたのは次に始まるPerfumeを待っている客だったなどというデマ情報が流れていたが、これは完全に事実誤認。ももクロの後はPerfumeではなく、KICK THE CAN CREWだった。ただ「BLAST!」→「もっ黒ニナル果て」という流れが大いに受けて盛り上がったのはKICK THE CAN CREWを待っているラップ系音楽好きの客層の琴線に触れた可能性がある。ももクロKICK THE CAN CREWのインターバルでは前方の観客はかなり入れ替わっていた。事実、私と一緒にいた連れもここで1度離脱して、Perfumeの前にステージに戻った。
 Perfumeのライブも以前大阪サマソニで雷の中断後、一部を見ているが、その後、映像を見る機会はあっても生で見るのはそれ以来で非常に楽しみしていた。映画が好きでYoutubeなどを何度も見ていたこともあり最初の曲が「FLASH」だったのはとても嬉しかった。ももクロPerfumeではパフォーマンスの方向性はまるで違う。というか正反対と言ってもいい*2が、タイトな音楽性と隙のないムーブメントが組み合わせられたPerfumeのライブは水準の高いものだった。ももクロの特徴が爆発的な熱量だとすれば、Perfumeのあくまでクール。とはいえ、クールや洗練だけというわけではなく、時折挟み込まれるあーちゃんのとぼけたトークや煽りがこのグループのアクセントとなって魅力の一端を担っていることがこういう作り込まれているというわけではないライブで見るとよく分かる。とはいえ、野外ライブで見るのに向いたパフォーマンスかと問われればそうではないだろうと思う。
 今年見たロッキンのライブでもっとも驚かされたのはサカナクションであった。ストレートにかなりいいバンドだというのはテレビの音楽番組などで紹介されて知ってはいたのだが、ライブと映像ではここまで違うのかとびっくりした。エレクトロダンスミュージック風の打ち込み音楽とロックバンドと両方の顔を持っているのだが、共通するのは初見であっても一緒に踊れて、歌えるという魅力であろう。ももクロPerfumeで相当体力的に消耗していたこともあり、少し後ろの方から見たのだけれど、周囲も盛り上がっていたし、ステージとの距離感を感じるということはほとんどなく楽しめた。ここ数年毎年「氣志團万博」に行っているせいで、巨大なライブ会場のいろんな場所からいろんな種類のバンドを見る機会がけっこうあるのだけれども、こういうことを体験したことは他にほとんどなくて、稀有のことだった。

simokitazawa.hatenablog.com

*1:もちろん東京ドームのように制御された巨大室内空間ではまだまだPerfumeの方が1枚も2枚も上だろうというのは考慮に入れてのことである

*2:多田淳之介インタビュー Perfumeももクロhttp://simokitazawa.hatenablog.com/entry/10001231/p1