下北沢通信

中西理の下北沢通信

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 早朝の飛行機でエジンバラに出発。フランクフルトで乗り換え、同日夕方5時半ごろ、エジンバラ空港に着く。タクシーでホテルに向かい、チェックイン。

 Cullberg Ballet公演「Home to Home/Fluke」★★★★(7時半〜、Edinburgh Playhouse)を観劇。

 Cullberg Ballet(クルベリバレエ)は4年前にエジンバラにマッツ・エックの「眠りの森の美女」を持って来ており、その時にぜひ一度生でみたいと思ったが果たせず(なぜそうなのか知りたい人はそのころの「下北沢通信」サイトの日記を覗いてみて)、今回は念願の生での初観劇となった。今年の秋に芸術監督が93年からこれまで芸術監督をつとめてきたマッツ・エック(Mats EK)からヨハン・インゲ(Johan Inger)に引き継がれるが、エックの作品はこれまで通りにレパートリーとして上演しながらも自分も含めて、これまで以上に若手振付家にチャンスを与えていくというのが新芸術監督であるインゲの方針らしく、その方針をすでに先取りして、このエジンバラ公演もJohan Ingerの作品「Home to Home」とエックの「Fluke」のダブルビル(2本立て)となっている。

 最初から今回の目的はEKの「Fluke」の方であったせいで期待度がそれほどじゃなかったせいもあるが、Johan Ingerの作品「Home to Home」は面白かった。Johan Ingerという人は作品を見たのははじめてだったのだが、ストックホルム生まれ、つまり地元出身ながらロイヤルスウェディッシュバレエ出身でここでソリストとして踊った後、NDTに入団、そこで振付家としてもデビューしている。この経歴からいってバレエ的あるいはキリアン的な作品を振り付けるのかと思ってみていると普通のバレエの技法はあまり使わぬ振付でその雰囲気がだれに近いのかというと重心を低くしてがにまたで動くようなムーブとか、壁のようなオブジェにダンサーがつかまったまま体操的な身のこなしで踊るなどあえていえばEKの振付に近いのだ。

 もちろん、これはこの作品だけ見たのでは判断しかねるところがないでもない。というのは本来はもう少し違うところにこの人のダンスのボキャブラリーはあるのかもしれないが、おそらく、このカンパニーのダンサーたちはこれまでEK作品だけじゃないにしてもEKの作品を中心にレパートリーを踊ってきており、その特異な身体性を生かすように振り付けたらたまたまこうなってしまったのかもしれないからだ。(続く)