下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

横浜ソロ×デュオ<Competition>+(結果)

 「若手振付家のための在日フランス大使館賞」岡本真理子(ソロ×デュオ部門から選出)
 「未来に輝く横浜賞」(群舞部門から選出)東野祥子(群舞部門から選出)
 「ナショナル協議委員賞」濱谷由美子、三浦宏之、チェ・スジン(両部門から選出)
http://www.yokohama-dance-collection-r.jp/japanese/program/soloduo.html
 忙しくてなかなか更新ができず、結果報告が遅れてしまったが、2005年の横浜ソロ×デュオ<Competition>+は上記のような結果になった。個々の作品の感想については後ほど少しずつ執筆していくつもりだが、全体としては今年は順当な結果といえるのではないだろうか。話題では昨年のトヨタコレオグラフィーアワードに続いての東野祥子の連続受賞(黒田育世に続いてのダブルクラウン)ということになるだろうが、個人的に嬉しかったのはクルスタシア(CRUSTACEA)の濱谷由美子がノミネート4回目(トヨタもいれると5回目)にして、初めて賞をとってくれたことだ。
 本人たちにとっても苦節10年なのだが、私にとっても彼女らの旗揚げ公演を偶然横浜STスポットで見て、「これは面白い、いつかオオバケするぞ」と思って密かに応援しはじめて(そのうちあまりに理解者が少ないので、応援に熱が入り、密かにではなくなっていく)から10年になるわけだ。これまで今回こそなにか賞にひっかかるだろうと確信して、結果を心待ちにしているとその期待を審査員に見事に裏切られたことが再々あったので、今回は「賞なんかもういいからやりたいように頑張れ」と思いながら見ていたのだが、とれて本当によかったと思う。
 今回の作品「スピン」は見ているうちにいろんなことが脳裏に迫ってきた。技術的にはへろへろだったし、ダンス作品として冷静に見れば欠点もいっぱいあるとは思うのだけれど、そこからは嘘じゃないダンスへの思いが感じられた。まるでもがいているように踊り続ける彼女らを見ていると人間が生きるとはどういうことなのかというような根源的な問いがダンスを通して問われているようで、それには答えはないのだけれど確かに切実なものがそこにはあった。そして気がついたときにはなぜだか涙が出てきて止まらなくなった。こういう経験はダンスを見ていてもそんなにあることではないし、ダンスに感動したのかと言われると個人的な思いもずいぶんあるから微妙なところもあって、だから終わって後、「よかったよ。涙がでてきた。なぜだか分からないけれど」と本人に話しかけたのだけれど、でもやはりこれは作品がよかったからには違いないと思う。
 もちろん、砂連尾理+寺田みさこ、東野祥子がトヨタアワードを受賞した時にも書いたように賞はゴールじゃなく、スタートである。今回連続受賞の東野もそうだが、これを糧にしていい新作を作ってもらいたいし、それがますます楽しみになってという意味ではいいコンペであった。