「Midnight Cowboy 真夜中のカウボーイ」(Assembly Rooms, Edinburgh)*1 *2
ジョン・ヴォイトとダスティン・ホフマンが共演したアメリカン・ニューシネマの傑作、映画「Midnight Cowboy 邦題・真夜中のカーボーイ」で有名なJames Leo Herlihy の小説の舞台化である。Assemblyというのはエジンバラフリンジフェスティバルを代表する劇場の1つでここを皮切りにUKツアーや米国、オーストラリア、ニュージーランドなどの英語圏各国へのツアー、あるいはロンドン公演を前にした試金石的にワールドプレミア(世界初演)をここで行うという演目が多数含まれ、ここで上演される演目はそういう意味でかなりレベルが高い。
ただ、最近人気になっている演目を見ると2003年には「12人の怒れる男たち」、2005年には二ール・サイモンの「おかしな二人」*3、後、年は忘れたが「カッコーの巣の上で」など映画化もされて有名になった作品のリバイバル上演が多く、今年の「Midnight Cowboy 真夜中のカウボーイ」もそういう流れのなかの1本ということができるかもしれない。
この日までは2日目に見た「Realism」を除けばあまり現代劇のストレートプレイは見ていなかったために英語は大丈夫だろうかという若干の心配はあったのだが、この芝居は分かりやすく、普通に楽しむことができた。映画の方はずいぶん以前に見たためにストーリーなどはほとんど忘れてしまっていたのだが、それでも全然大丈夫。主演の2人もカウボーイ(Charles Aitken)、ラッツォ(Con O'Neill)ともになかなかの好演でもあった。
ところがそのことで逆説的にどうしようもなく浮かび上がってきてしまったことがある。それは映画がベトナム戦争という時代背景のもとに製作され、イギリス人の監督が皮肉な目でテキサスの田舎からニューヨークに出てきた青年の挫折を通じてアメリカンドリームの終焉のようなものを描き、そこに映画のアクチャリティーはあったのであるが、この舞台からはそういう背景もはぶかれてしまったこともあって、ここには「今のリアル」はほとんどないのである。その結果、単なるウェルメードな芝居に堕してしまい、「Midnight Cowboy 真夜中のカウボーイ」をなぜ今リバイバルで上演するのかという意味合いはこの舞台からはあまり感じることができなかった。
もっとも、これは明らかに前衛ではなくて日本流の言い方をすれば例えばパルコ劇場(あるいは大阪ならシアタードラマシティ)でかかるような商業演劇なのでそれにそういうことを望んだりすること自体が木によって魚を求むようなところがあるのだけれど、ただ、それが「12人の怒れる男たち」や「おかしな二人」ならおそらくそんな理屈を考えもせずに素直に楽しめたと思うし、ここではこの演目だけというわけではなく、この同じ劇場を使って、時間で区切って複数の演目が上演されるため、舞台装置などは簡素なものにならざるをえず、そういう意味での制約はあったのだが 演劇としてのクオリティーは日本語の上演だったとしたら、パルコ劇場クラスの劇場で上演されたとしてもなんの遜色もないものであった。
それでも、あえてそういうことが気になるというところに演目の選定における「Midnight Cowboy 真夜中のカウボーイ」という題材の微妙さがあるのかもしれないと思った。
SCOTITISH BALLET(Edinburgh PlayHouse)
ORCHESTRA OF SCOTTISH OPERA
Nicholas Kok ConductorAGON
George Balanchine Choreography
Igor Stravinsky MusicAFTERNOON OF A FAUN
Jerome Robbins Choreography
Claude Debussy MusicTWO PIECES FOR HET
Hans van Manen Choreography
Erkki-Sven Tüür and Arvo Pärt MusicIN LIGHT AND SHADOW
Krzysztof Pastor Choreography
J. S. Bach Music
「Clan of Devorces」(C)
「Strange Games」(C)