下北沢通信

中西理の下北沢通信

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Faith Healer@KINGS THEATRE*3

 内容ということも多少あるだろうけれど、着いたばかりの最悪の体調でしかも劇場後方の狭い座席で、開演直前に飛び込んで、何の前知識もなしに見るには最悪の芝居だったかもしれない。いまさらではあるが、もう少し来る前に英語の耳慣らしをやってくればよかったと後悔したが、後の祭り。3人の登場人物が出てくる舞台ではあるのだけれど、三幕(四幕)にそれぞれの人物が登場するモノローグ劇なのである。最初はなんとか聞き取って話の筋についていこうとしたのだけれど、すぐに睡魔との闘いになってしまった。
 作者はブライアン・フリール(Brian Friel) という劇作家で今年(2009年)のエジンバラ演劇祭はこのフリールの特集が組まれていて、 「Faith Healer」以外にも2本の戯曲が上演された。そういえば一昨年もシングが特集されていたし、エジンバラ演劇祭はアイルランドに入れ込んでいるところがあるのかもしれない。アイルランドの劇作家としてはベケットに次ぐ存在だというがこの1本しか見ることができなかった。ただ、ベケットのような分かりやすい前衛性はこの作家にはない。この「Faith Healer」という芝居は3人の登場人物がそれぞれ観客に向けてぶつぶつと独り言をつぶやいているような芝居で、その中から1人の人物の人物像が浮かびあがつてくるという体裁なので考えようによってはチェルフィッチュに少し構造が似ているという風に言えなくもないのだが、演技スタイルとしてはよりスタンダツプコメディに近いのではないかと思った。
 フランクという最初に登場する人物がFaith Healer(霊的治療者)として知られている人物でこの人が1幕目と4幕目に出てくるのだけれど、その間に挟まれた2幕目には彼の妻であるグレイスが、3幕目にはフランクのステージマネジャーであったテディが登場する。ちょっとチェルフィツチュみたいだと書いたのはそれぞれがこの「Faith Healer」の興行について自分の記憶に基づいて起こったと思っていることを語るのだけれど、それは互いに食い違っていて、そこで本当はなにが起こったははっきりしない。