映画『散歩する侵略者』@横浜ブルク13
監督:黒沢清
出演:長澤まさみ、松田龍平、長谷川博己、前田敦子、高杉真宙、恒松祐里、満島真之介、東出昌大、小泉今日子ほか
原作:前川知大「散歩する侵略者」
配給:松竹 日活
©2017『散歩する侵略者』製作委員会
イキウメの前川知大の代表作「散歩する侵略者」を原作に黒沢清が映画化した侵略SF映画である。侵略SFと書いたが、原案となっている舞台版「散歩する侵略者」*1
はもう少し作品の輪郭について意図的にあいまいさを残した舞台で、以前観劇した時に鴻上尚史の「トランス」と似ていると書いたのは「トランス」において何が精神疾患の人物の妄想で、何が真実なのかが二転三転するように、舞台版「散歩する侵略者」でも「概念を奪う侵略者=宇宙人」が本当に実在するのか、登場人物らによる想像上の存在にすぎないかが、曖昧な描き方になっていて多様な解釈が可能なものだった。
黒沢版では原案のこういう微妙な部分はほとんどなくなっていて、その分アクションやスプラッタ風味が増えてストレートに宇宙人侵略SFとして見られるようになっている。途中で奇妙な精神疾患が多発し、それを引き起こすウィルスの存在が疑われ、大勢の人々がおかしくなってパニックになる描写もあり、それが広域に起こるということと3体(3人)の宇宙人がいわば先遣隊として地球に送られて、情報収集の課程で「概念を奪う」という行為を行うことで、場合によっては相手の精神を廃人に近い状態へと毀損してしまうということの間には後者が原因で前者が起こることについて論理的には説明できないことが数多く残るなど整合性に疑問が残る部分も少なくない。
とはいえ、恒松祐里演じる若い女性に寄生(?)した宇宙人が自分たちに敵対する人間を次々と冷酷に虐殺していくことなどの描写において映画版では宇宙人の存在自体はもはや疑いようがない。