下北沢通信

中西理の下北沢通信

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映画「僕の好きな女の子」(原作又吉直樹、監督・脚本玉田真也)@アップリンク吉祥寺

映画「僕の好きな女の子」(原作又吉直樹、監督・脚本玉田真也)@アップリンク吉祥寺


映画『僕の好きな女の子』予告編

『僕の好きな女の子』オープニング本編映像
 玉田真也(青年団演出部)の映画監督としての第2作。前作「あの日々の話」*1はほぼ同じ内容の演劇*2が原作だったが、これは又吉直樹のエッセイが原作とはいえ、脚本も本人が手掛けたほぼオリジナル作品といえるかもしれない。
地味だが、とてもいい映画であった。老齢に入っている私にとっても遠い昔の青春時代の思い出を思い出させるようななんともいえない、せつなさ、懐かしさがある。
 そして主演のふたり(渡辺大知、奈緒)がとても魅力的だ。そして、そのことは二人の俳優としての資質のよさであるとともにその魅力をうまく引き出している玉田の手腕によるものともいえそうだ。
 玉田自身の演劇作品は恋愛を扱ったいても、どちらかというとコミックリリーフなどの役割を果たしていることが多くて、シニカルな作風が特徴でもあるのが、こういう新たな境地が引き出されたのは又吉直樹とのマッチングのよさかもしれない。
 前作にも登場、玉田企画演劇作品のレギュラー陣ともいえる山科圭太、野田慈伸、前原瑞樹もいつもの調子で軽薄な友人たちを演じて、玉田作品特有の空気感の醸成に一役買っていた。
 青年団演出部には劇作家、演出家のみでなく、深田晃司のように映画監督も所属し、前田司郎(五反田団)のように映画などの映像作品と演劇作品の両方を手掛けている先人もいる。『JOKER×FACE』で第8回市川森一脚本賞を受賞するなど徐々に結果を残しつつあり、今回の映画などを見ると、この映画の主人公同様、ヒットを狙う映画作家には距離があるかもしれないが、良質な作品を作り続けることで、彼らの後を追う存在となっていきそうだ。 

あらすじ
思い通りにならない君だけど、君と言う存在が僕の期待を裏切ったことは一度もない。 会うと些細なことで笑い合っている。バカなことをしてツッコんだりするけど、本当はエルボーとかキックとかじゃなくて君に触れてみたい。 ドラマの脚本も気付けば君を書いてしまう。友人たちにはキミの魅力も煮え切らない関係性も全く理解されない。だけど一歩踏み出してこの関 係が壊れてしまうなら、今のままの君との関係で十分幸せだ。


監督
玉田真也
脚本
玉田真也
原作
又吉直樹
出演者
渡辺大知 奈緒(本田なお)山科圭太 野田慈伸 前原瑞樹 萩原みのり 後藤淳平 福徳秀介 たくませいこ 児玉智洋