今泉力哉と玉田企画「街の下で」(3回目)@こまばアゴラ劇場
映画監督の今泉力哉と劇作家・演出家の玉田真也による合同公演である。
前回の感想レビューで「今泉、玉田の2人がどういう分担だったのかは関係者に話を聞いてみないと分からない」と書いたのだが、実際に今泉、玉田の両者に話を聞き、確かめてみたところ全体を通してのプロット(流れ)を二人で打ち合わせたうえで、後は前半を今泉が、後半を玉田がそれぞれ脚本も演出もそれぞれが担当。どちらかが先行するというのではなく、同時進行で製作したということであった。
前半部分は劇作家・演出家を主人公とした現代口語演劇であり、ただ、一場劇ではなく、暗転なしに次々と場面転換しながら、スピーディーに進行していく様式は映画的と言えなくもない。当初の予想の通りに今泉がこの部分は1人で作り、特に後半炸裂する玉田の仕掛けを意識してはいなかったというが、興味深いのは全体像が分かった上で通して見てみると前半の舞台があたかも後半の仕掛けを前提としてわざと隙を作って描いているようにさえ思われてくることだ。
一方、玉田の担当する後半の特徴はメタシアター的な構造である。玉田はユーロライブでのコント公演でも同種の仕掛けが使用しているので、これが始まった瞬間その後の展開は予想できるものではあるが、芝居自体は笑えるし、玉田の面目躍如といえよう。
作・演出:今泉力哉、玉田真也
終電がなくなった後の時間帯を男女が過ごす話を書くつもりだ。それが誰のための何の時間になるのかはわからない。私は今この文章を終電が過ぎ去ったとある駅のホームで書いている。雨がしとしと降っている。あと5分もこうしていたらきっと駅員がやってきて「もう電車は来ませんよ」と私に声をかけるだろう。あ、やって来た。「あの、もう電気消しますんで」意外な言葉。そういうの描きたいと思ってます。帰って寝ます。(今泉力哉)
今泉さんとこの企画を立ち上げる時、まず最初に2人で考えたのが団体名です。いろんな団体名が浮かんでは消えたのですが、僕は「チームおもしろ」というのはどうかと提案しました。赤塚不二夫やタモリがその集まりにつけたという「おもしろグループ」という団体名があり、その名前からインスパイアされるという高度に文化的な背景から出た提案だったのですが、今泉さんは「そんな団体名はダサい。面白い人たちがチームおもしろなんてつけるわけがない。ていうか名前からしておもしろくない」という無知極まりない理由で却下してきました。そして「今泉力哉と玉田企画」という無味乾燥な団体名に落ち着いたわけで、僕としては内心怒り心頭だったのです。しかし今では思います。当時の僕は頭がどうかしていたのだと。今泉力哉と玉田企画をよろしくお願いいたします。(玉田真也)
1981年生まれ。2010年『たまの映画』で商業監督デビュー。2014年『サッドティー』で知られ、2019年『愛がなんだ』で、より知られる。今年9月、最新作である伊坂幸太郎原作の映画『アイネクライネナハトムジーク』(9/20)が公開予定。
玉田真也
青年団演出部所属。玉田企画主宰・作・演出。自身の劇団、玉田企画のすべての作品で作・演出を担当。映画『ジャンクション29 ツチノコの夜』脚本(2018)、フジテレビ『JOKER×FACE』脚本(2018)等、映画やドラマの脚本を手がける。玉田企画の舞台原作の映画『あの日々の話』で初監督、第31回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門にて正式出品。映画『僕の好きな女の子』監督・脚本(原作:又吉直樹)2020年初頭一般公開予定
出演
青木柚、川﨑麻里子(ナカゴー)、小竹原晋、志田彩良、芹澤興人、長井短、師岡広明
スタッフ舞台監督 杉山小夜
舞台美術 福島奈央花
照明 井坂浩(青年団)
音響 池田野歩
衣装 アレグザンドラ早野
制作 足立悠子、小西朝子、井坂浩、飯塚千夏
宣伝美術 牧寿次郎芸術総監督:平田オリザ
技術協力:鈴木健介(アゴラ企画)制作協力:木元太郎(アゴラ企画)
企画制作:今泉力哉と玉田企画/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場