下北沢通信

中西理の下北沢通信

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ネタバレあり シベリア少女鉄道 vol.33『メモリー×メモリー』みんなで一緒に配信公演みようぜ!「メモリー×メモリー」同時視聴LIVEコメンタリー@シベリア少女鉄道のYoutube

ネタバレあり シベリア少女鉄道 vol.33『メモリー×メモリー』みんなで一緒に配信公演みようぜ!「メモリー×メモリー」同時視聴LIVEコメンタリー@シベリア少女鉄道Youtube

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シベリア少女鉄道「メモリー×メモリー同時視聴LIVEコメンタリー。配信もこうした企画もシベリア少女鉄道史上初めてで、自作の上演について土屋亮一自身も参加して、ネタバレコメントすることはこの劇団においてはほとんどなかったから、コロナ禍でStreaming配信も行ったからこそできたことではあるけれど、画期的なことじゃないかと思う。*1
舞台上演+映像配信という今回の形式はコロナ禍だからからこそ成立した形ではあると思うが、今回のようにアイドル客演に迎えるなど配信視聴がある程度見込める状況であるのなら、今後もぜひ続けてほしい。シベリア少女鉄道の場合、答え合わせではないけれどネタが分かった上でもう一度舞台を見直す機会を持てるのはけっこう貴重であるし、さらに言えば公演終了まで狭い仲間内だけのひそひそ話でしか話せない内容を出演者を交えて情報共有できる今回のような場というのは非常に貴重なものだと思うからだ。元ネタについいて言えば毎回メインとなってであろうものに加えて、様々な小ネタが散りばめられているわけだが、私なりにどうなんだろうと思っていたものの答え合わせができた楽しみがあった。とはいえ、本当の発想のもととなったのが「あれ」だったというのは思いもよらなかった。

以下ネタバレあり

今回の仕掛けというのが「メモリー×メモリー」の表題の通りに謎解きの刑事ものに見えたストーリーが後半になると突如、登場人物の過去の記憶が実体化させる能力を発動できる異能力者同士のバトルになるというものである。
モリー(記憶)の個々の場面そのものは前半部に登場人物が経験した過去の出来事として演じられたものだが、後半になるとまるで「ジョジョの奇妙な冒険」のスタンドのように*2、舞台上で次々と具現化して、相手に襲い掛かるのだ。これが面白いのはアニメでこれをやるのなら何の驚きもないところだが、次々と具現化される「メモリー」をシベリア少女鉄道では生身の俳優が演じていることで、次々と状況がエスカレーションしてくると人間の俳優の限界により次第に演じることが難しくなっていき、役者の動きが極度にアクロバティックになっていき、場を沸かせたり、ついにはスラップスティックの様相まで呈してくるわけだ。
 こうしたことが突き詰められた挙句、舞台のクライマックスではついに客席から「観客だ」と名乗る人物が舞台に駆け上がり、「観客である私は舞台上のすべてのシーンを記憶している」などと称して、登場人物の殺戮を行うというホラーめいた趣向にまで突入する。このようにメタから演劇を破壊すようなアイデアがいかにもシベリア少女鉄道だが、最後にアイドルである中山莉子がこの状況に介入、観客である男を劇場から放逐し、大団円を迎えるという幕引きが面白い。アイドルという虚実のはざまにいる存在だからこそ振り当てられた役割かもしれない*3

作・演出
 土屋亮一


出演
 中山莉子私立恵比寿中学
 小関えりか
 川井檸檬
 加藤雅人(ラブリーヨーヨー)
 浅見紘至(デス電所
 土田有未(ナカゴー)
 風間さなえ

 濱野ゆき子

 中山裕康


 ほか




声の出演

 小野賢章


日程2020年12月9日(水)〜13日(日) 全8ステージ+配信

simokitazawa.hatenablog.com
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*1:生じゃなくても、舞台のStreaming配信が行われている22日まではアーカイブで疑似的に同時視聴できるので試してみてほしい。そして、なんといってもさらに画期的なのはZOOMが使えることで中山莉子私立恵比寿中学)ちゃんも参加していることだ。

*2:HUNTER×HUNTER」も元ネタのようだが、こちらはあまり知識がないので、どうしてもジョジョに引き付けて解釈してしまう。

*3:もっともよく考えたら俳優だって虚実の間にいる存在なのだが。