シベリア少女鉄道 vol.33『メモリー×メモリー』 @草月ホール
ある地方の田舎町に同僚と一緒に刑事(浅見紘至)がやってくる。十数年前に起きた未解決の殺人事件の捜査のためだ。
一方、ひさしぶりに故郷に帰ってきた女(小関えりか)は廃墟となった建物の外にたたずむ少女(中山莉子)と出会う。少女はかつていじめを受けていたのを助けられなかった同級生のことが忘れられず、彼女の死を知って心を痛めていたのだ。さらに少女は同級生のいじめを認めずに見捨てた女性教師のことを許すことができなかったが、その女性教師はやはり教師であった帰ってきた女の母親のかつての教え子であり、女が尊敬する教師でもあった。このように前半部分では互いに矛盾し合うそれぞれの登場人物の記憶の齟齬が明らかにされる。
実際には過去に何があったのか?せめぎ合う錯綜した過去の記憶の中にどんな真相が隠されているのか。黒沢明監督の「羅生門」を思わせる謎解きを予感させる前半だが、もちろん後半部分では土屋亮一ならではの「仕掛け」が爆発。仰天動地の展開が待っている。息苦しいマスクでの観劇でも苦にならないシベリア少女鉄道ならではのエンターテインメントであった。
中山莉子は大事にされていた。土屋亮一のエビ中愛を感じさせる舞台だった。土屋亮一×私立恵比寿中学の演劇プロジェクト「シアターシュリンプ」*1 *2は松野莉奈の急逝で中断したたままだが、なんらかの形で復活してほしいとの思いが募った舞台でもあった。
作・演出
土屋亮一
出演
中山莉子(私立恵比寿中学)
小関えりか
川井檸檬
加藤雅人(ラブリーヨーヨー)
浅見紘至(デス電所)
土田有未(ナカゴー)
風間さなえ濱野ゆき子
中山裕康
ほか
声の出演
日程2020年12月9日(水)〜13日(日) 全8ステージ+配信