下北沢通信

中西理の下北沢通信

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ホエイ『メヤグダ』@シアター風姿花伝

ホエイ『メヤグダ』@シアター風姿花伝


ホエイ『メヤグダ』@シアター風姿花伝を観劇。表題の「メヤグダ」というのは津軽方言で原義は「迷惑だ」が変異した言葉だと思われるが、「迷惑だ」以外に感謝の言葉「ありがとう」などの意味としても多義的に使われるらしい。
舞台となっているのは東京在住の青森出身者が集う「つがるふるさと県人会」の事務所。ここを舞台に津軽方言と東京の言葉が行きかう現代口語の日常会話群像劇として展開される。山田百次はこれまでも津軽の言葉を有効な武器として活用してきたが、実はこれまでは例えば家族同士の濃密な会話を描き出した「ふすまととぐち」、農村部の主婦らの会話で構成された劇団野の上「 臭う女〜におうひと〜」など地元以外の人には正確には言葉の意味が聞き取れないような言葉をあえて使うことで、独特の空気感を作り出すような作劇が多かった。
しかし、今回の「メヤグダ」は舞台が東京ということもあって、津軽方言と東京の言葉が行きかう現代口語の日常会話群像劇となっており、これは出身劇団の作演出であった長谷川孝治が得意とする手法でもあり、東京に出てきてそこで暮らす青森人の故郷との微妙な距離感を描いた今回の作品の主題とも呼応するがゆえにこうした手法を取ったとも思われるが、「原点回帰」の意味合いも感じられた。
 舞台は最初、下手の椅子に座った三上晴佳演じる女性が携帯電話で誰かと話をしているところから始まるが、その言葉はかなり訛りの度合いが深くて、それは電話の相手がおそらく実家の青森にいる誰か(おそらく母親)で相手との関係性でそうなっているということが分かってくる。ただ、この作品では他にディープな津軽方言を話すのは山田百次が演じたここを訪ねて謎の男だけであり、その他の人物は東京で暮らす東北出身者のほとんどがそうであるように多少の訛りは残っているとしても基本的には東京の言葉を使うという状態が示されて、それが最初の携帯でのやりとりと対比されることで、現在の彼らと故郷との距離感が示されるのだ。

あらすじ
都内。
とある地下鉄駅13 番出口から徒歩5 分、
古びたビルの一室にある「つがるふるさと県人会」事務所。
そこは、故郷に帰れない、帰らない人たちが集う場所。
事務所に迷い込んだ一匹の猫。
そこに出入りするようになった一人の男。
どちらも、すこし「メヤグ」な存在だった。

作・演出
山田百次

キャスト
赤刎千久子 河村竜也 山田百次(以上、ホエイ)
東さわ子(劇団東演) 尾倉ケント 中田麦平(シンクロ少女) 羽場睦子 三上晴佳

会場
シアター風姿花伝
〒161-0032  東京都新宿区中落合2-1-10  Tel : 03-3954-3355