下北沢通信

中西理の下北沢通信

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KARAS「インダストリアル ブック」(勅使川原三郎構成・振付・演出)@荻窪アパラタス

KARAS「インダストリアル ブック」(勅使川原三郎構成・振付・演出)@荻窪アパラタス


KARAS「インダストリアル ブック」(勅使川原三郎構成・振付・演出)@荻窪アパラタスを観劇。これまで見た勅使川原作品の中でも際立った出来栄え。精華ともいうべき作品であった。
まず卓越していたのは自らデザインした照明による空間構成を身体の配置、そのムーブメント、音楽的な構成要素との呼応(シンクロニシティ―)と組み合わせて構築された極度に洗練されたデザインワークであったことだ。ダンス作品としては勅使川原三郎のダンス作品の魅力はそのダンスムーブメントの他にはない特異性(ユニークネス)をまず挙げなければいけないが、それはただダンサーがそうした動きを体現するというのにとどまらず、アートパフォーマンスとしての完成度の高さを舞台空間全体のデザインを照明効果と舞台美術によって体現、全体の視覚効果の鮮やかさにほかのダンスアーティストとは一線を画した特徴があるといえるかもしれない。たいていの振付家、演出家はそれを照明家、舞台美術家、音楽家とのコラボレーションにより具現化するが、勅使川原の場合はそのすべてを自らがデザインすることでパッケージとしての完成度の高さを実現しているのが素晴らしい。
「インダストリアル ブック」の場合、暗闇の中に照明効果によって形成された複数の矩形の中をいずれも黒の衣装をまとった勅使川原三郎、佐東利穂子という鍛え抜かれた身体能力を持つパフォーマーが高速で移動、さらに舞台上に大きな姿見を置き、照明の塩梅により、そこに光が反射したり、ダンサーの踊る姿が映し出されたりと刻々と舞台の印象が変化していくという複雑な構成となっており、それが舞台音楽として絶えず流れ続けるクラシック系のピアノ音楽とそれに重なり合うようなノイズ音と重なり合うことで千変万化の変容を見せていくのである。


アップデイトダンスNo.118
新作「インダストリアル ブック」

演出・照明:勅使川原三郎
アーティスティックコラボレーター:佐東利穂子
出演:勅使川原三郎 佐東利穂子