カラス・アパラタス7周年記念 アップデイトダンスNo.73「タルホ 稲垣足穂の破片」(勅使川原三郎振付)
コロナ対策というよりは作品の一部ということなんだろうが、舞台の客席側に天井から床まで届く、半透明の紗幕が引かれていて、映像や照明がここに当たることで舞台の様相が千変万化した。勅使川原三郎はダンスの振付や演出も素晴らしいが、照明を駆使しての空間の構成力に定評があり、今回の「タルホ 稲垣足穂の破片」はそうした特色がよく生かされた作品となっていたといえるだろう。
最近の勅使川原三郎作品は「ロスト イン ダンス」など音楽を創作の手がかりとした作品と「白痴」「オフィーリア」など文学を創作の源泉とした作品の2つの柱があり、それからいうと「タルホ 稲垣足穂の破片」は小説家、稲垣足穂の作品を元にした作品であるから、後者の系譜に位置付けられるともいえるが、副題に「稲垣足穂の破片」とあるようにここにあるのはイメージの断片の羅列であって、特定の人物像や物語などをここから汲み取ることは困難だ。