下北沢通信

中西理の下北沢通信

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嫁姑の強烈な津軽弁バトル 三上晴佳らが野趣風味豊かに ホエイ「ふすまとぐち」(1回目)@こまばアゴラ劇場

ホエイ「ふすまとぐち」(1回目)@こまばアゴラ劇場


津軽弁講座


野の上からホエイに変遷してスマートに洗練された感のある山田百次の劇世界だが、津軽方言が自在に話せるネイティブの実力派キャストが顔をそろえて、野趣風味豊かな舞台に仕上がった。
初演にも出演した俳優が3人(山田百次、三上晴佳、赤刎千久子)出演しているが、新興宗教「早起きの会」の勧誘員を演じた赤刎千久子以外は前回とは異なる役柄で登場。青森中央高校の伝説のOGと言われた元渡辺源四郎商店の三上晴佳が押し入れに籠もりっきりになる嫁(桜子)を演じて、姑キヨ役の山田百次と非常にの濃厚な津軽方言による強烈なバトルを展開してみせる。
 嫁姑の問題をモチーフとした作品はテレビドラマの世界では何度も繰り返して制作されてきたが、現代演劇の作品としてこれを上演することはコンプライアンス全盛の現在それほど簡単なことではないかもしれない。ただ、これは現在でも地方都市などでは核家族化が進んだ東京都市圏などと比較すれば卑近な問題であり続けているのだろう。これを何とか受け入れやすい形で観客に提供することができているのはこの作品がディープな津軽弁で上演されていて、東京の観客にとっては嫁姑問題という違和感よりも圧倒的にそこでの違和感が強いこと。それに輪をかけたようなどこかデフォルメされたような感のある山田百次と三上晴佳の演技もこれを成立させる要因になっているかもしれない。
 初演キャストの個性が強烈だったこともあり、再演が難しいと思われていた山田百次の得意とする津軽方言の演劇を今回上演できたことは今後のホエイの活動の方向を考える意味ではけっこう大きな意味合いを持つのは確か。これまでホエイでは山田百次の最大の武器ともいえる津軽方言を多用したような演劇はあまり上演されることがなかったが、今後はこうした作品群も上演が増えてきそうだ。

作・演出:山田百次(ホエイ|劇団野の上)
姑キヨの強烈な嫁いびりにより、とある場所に引きこもって暮らしていた桜子。
出戻りの義理の妹、幸子には心許せると思い、ようやくそこから出てきたが、事態はエスカレートしあらぬ方向へと突き進む……。
嫁、姑、小姑、さまざまな業がうずまく津軽弁エンターテイメント!!
劇団野の上(作・演出:山田百次)で2010年初演、2012年に全国ツアー(青森・札幌・大阪・三重・東京)を敢行した人気作。
2021年12月の豊岡公演を経て、いよいよ東京へ!


ホエイ
ホエイとは、ヨーグルトの上澄みやチーズをつくる時に牛乳から分離される乳清のことです。
産業廃棄物として日々大量に捨てられています。でもほんとは飲めます。
うすい乳の味がしてちょっと酸っぱい。
乳清のような、何かを生み出すときに捨てられてしまったもの、
のようなものをつくっていきたいと思っています。


『ふすまとぐち』2021年江原河畔劇場公演

出演
山田百次(ホエイ|劇団野の上) 赤刎千久子(ホエイ)
井上みなみ(青年団) 中田麦平(シンクロ少女) 成田沙織 三上晴佳 森谷ふみ(ニッポンの河川)

スタッフ
舞台美術:鈴木健
照明:黒太剛亮(黒猿)
照明操作:間瀬森平
舞台監督:鐘築 隼
舞台監督補:三津田なつみ
衣裳:正金 彩
制作:赤刎千久子
当日運営:飯塚なな子
プロデュース・宣伝美術:河村竜也

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