下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

ウルティマ・ヴェスの『here after』〜映画で観るダンス作品〜

日本ではなかなか鑑賞することのできない、ベルギーのダンス・カンパニー“ULTIMA VEZ(ウルティマ・ヴェス)”の作品、『here after』(07年)を上映します。ダンス作品を映画化した、完成度の高い映像作品です。アフタートークでは、長年イニャーキ・アズピラーガ(ウルティマヴェス演出補佐)の日本国内各地にて、コンタクトパートナリングのアシスタント兼通訳を務めている j.a.m.森井淳氏と同じく j.a.m.演出家の相原マユコ氏をゲストに迎え、舞台と映像について語ります。



ウルティマヴェスはベルギーを代表するダンスカンパニー。今回上映する映画『here after』は、2004年の舞台作品「puur」を映画化したもので、その中身は単なる舞台記録ではなく、映画としてリメイクされた65分の大作。監督はウルティマヴェスの演出家、振付家のヴィム・ヴァンデケイビュス。振付家自らが映画監督として、舞台作品の映画化を実現。「この作品には「物語」があります。ダンスだけでは表現できない世界を映像で爆発させ、エネルギッシュなダンスとロックミュージックが絡み合う。何しろカッコいい。ダンスと映像の関わりを見事に作品にした名作!」 ――――― 飯名尚人



ULTIMA VEZ  http://www.ultimavez.com/

[アフタートーク ゲスト]
相原 マユコ AIHARA Mayuko(j.a.m.Dance Theatre 演出・振付)
森井 淳 MORII Jun(j.a.m.Dance Theatre ダンサー・振付アシスタント)
6月18日(金) 19:00〜21:00( 無料・事前申込み不要)
『here after』 2007年/65 分/日本語字幕入り/解説・アフタートーク付き




京都精華大学の学外向け講座ガーデンの一環として、ベルギーのコンテンポラリーダンスカンパニー、ウルティマ・ヴェスの映像作品「here after」(2007)が上演された。ヴィム・ヴァンデケイビュスの率いるウルティマ・ヴェスはローザスと並びベルギーならびに欧州を代表するカンパニーであるが、最近はケースマイケル率いるローザスが毎年のように来日し、公演する数少ないカンパニーとなっているのに対して、ウルティマ・ヴェスはしばらく来日公演がなく、映像作品という形ではあるが、今回をこの作品を見ることができたのは貴重な機会であった。
Woven Hand & Ultima Vez - PUUR

今回の上映会の企画主催者の飯名尚人氏の解説によると「here after」は、2004年の舞台作品「puur」を映画化したものということだったので、元の舞台の映像の抜粋でもないかとyou tubeで調べてみると、上の映像を見つけたのだけれど、どうやらこれは「puur」とクレジットされているけれど、今回見た「here after」自体の抜粋ではないかと思う。
 
こちらもそうで、おそらく別の部分の抜粋である。この作品の特徴はダンス映像とはいうものの、特に前半は演劇仕立てな感じで、ほぼ全編にわたって台詞があり、あまり「踊る」という場面はない。もちろん、ダンスにもあまり踊らないカンパニーはあるが、ウルティマ・ヴェスというカンパニーはどちらかというと暴力的な激しい動きを特徴とするダンスカンパニーであり、そういうのを期待していただけに少し肩すかし。ついつい睡魔に襲われてしまった。
 また、「この作品には物語があります」ということだったのでそれを読み取ろうとしたのだけれど、母と子、そして父親の葛藤のようなものを描いたものかなどという構図的なものは分ってもそれ以上のことはあまり読み取れず、乗越たかお氏の「コンテンポラリーダンス徹底ガイド」によればどうやらヘロデ王の故事をモチーフにしたらしいが、そういうことは全然分らず、幼児虐待かアダルトチルドレンの物語かなと思われる程度。退屈でついつい睡魔に襲われそうになった。
 しかし、後半になると激しい動きのこれこそヴァンデケイビュスだという動きの群舞が増えてきて、次第にスクリーンから目が離せなくなってくる。