下北沢通信

中西理の下北沢通信

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悪い芝居「団欒シューハーリー」@金色の家屋公演2011

 作・演出:山崎彬 演出助手:進野大輔 演出部:吉賀恵里、森井めぐみ
 広報:渡邉真 制作:有田小乃美 
 出演
 池川貴  :茨木海(長男 祖父以来の家に住む)
 大川原瑞穂:茨木葵(長女)
 呉城久美 :茨木直(次女)
  
 植田順平 :九谷俊介(葵の彼氏 同居中)
 宮下絵馬 :堂本光一(俊介の友達 同居中)
 岡田太郎 :久保安信(俊介の友達 同居中)

 西岡未央 :高橋春子 
 山崎彬  :りょうちゃん

 
 悪い芝居は私がいまもっとも期待している若手劇団の1つ。一昨年上演された「嘘ツキ、号泣」がOMS戯曲賞佳作を受賞、前作「キョム!」が大阪(精華小劇場)、東京(下北沢・駅前劇場)で判になり普通だったら「さあ、勢いで打ってでるぞ」というところだろうが、一転して観客1ステージ12人という築80年の日本家屋での「金色の家屋公演2011」。ほかのポストゼロ年代の劇団と作風はかなりかけ離れているけれど、以前の劇団だったらメジャー路線まっしぐらでもおかしくないところを逆にこういう企画をやってしまうのが、ポストゼロ年代劇団といってもいいかもしれない。
劇場以外の空間で芝居をするというのは以前はもっとあった気がするのだが、トリのマークやポかリン記憶舎のように場所への見立てとして芝居を展開するような劇団が存在する東京ではともかく、関西では珍しいかもしれない。さらに言えば今回公演場所に選ばれたのは京都市内の古い民家なのだが、これはどうやら劇団の事務所として使われている場所のようだが、2階もあるからはっきりは分からないけれど劇団員の誰かが住んでいる場所という雰囲気も漂っている。思い出したが、20〜30年前の学生下宿というのはちょうどこんな風なところが多くて、私が住んでいたところは違ったけれど、京都にはこういうところがまだあるんだなあと感じさせる類の生活感のただよう場所で、こういう空間での演劇の公演というのはさすがにちょっと前例がないのではないだろうか。
 表題の「団欒シューハーリー」というのは「シューハーリー」という語感がなにやら呪文じみていてなんなのだろうと考えながら見にでかけたのだが、芝居の冒頭近くで登場人物のひとりで知的障害のあるらしい少年の口から明らかにされるのだが、「守破離」のことらしい。
 「守破離」とは何か。千葉周作に「剣法秘訣」という著書があり、それは稽古とは何かを説いたもので、そこに「序破急の拍子を追うよりも、守破離の筋目を通すことが稽古に欠かせない」という、守破離の思想にずばり突っ込んだ興味深い説明が示されている。
  
守破離といふことあり。守はまもるをいふて、その流の趣意を守ることにて、一刀流なれば下段星眼、無念流なれば平星眼にてつかひ、その流派の構へを崩さず、敵を攻め打つをいうなり。破はやぶるといふて、左様の趣意になじまず、その処を一段破り、修業すべきとのことなり。離ははなるるといふて、右守破の意味も離れ、無念無想の場にて、一段も二段も立ちたる処にて、この上なき処なり。右守破離の字義、よくよく味はひ修業肝要なり。