下北沢通信

中西理の下北沢通信

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花組芝居の役者が早替わりで母子らを熱演 渡辺源四郎商店 Presents うさぎ庵Vol.18「コーラないんですけど」@下北沢ザ・スズナリ

渡辺源四郎商店 Presents うさぎ庵Vol.18「コーラないんですけど」@下北沢ザ・スズナリ


ともに青森中央高校の出身者である三上晴佳と工藤良平が母子役を何度も入れ替わりながら演じるのが趣向。特に青森中央高校のOGとして後輩の間では伝説的な存在となっているという三上が幼児から老女までを自在に演じ分けるのが見せ所である。

初演の感想を上記のように書いた。「親子役を次々と入れ替わるように演じるのが趣向ということなら今回の花組芝居を代表する名女形である植本純米をはじめ同劇団の3人による上演は十分に理解ができるかもしれない。
 このように事前に書いたのだが、植本純米のこの舞台でのメインの役柄はどちらかというとこわもての民間徴兵企業の男性職員で複数の役柄を演じていくなかには小学生の少女など女性役もいくつかあったが、当初の予想とは異なり、初演で三上晴佳と工藤良平が演じた母と息子の役を桂憲一(花組芝居)と大井靖彦(花組芝居)が互いに役を入れ替えながら演じた。とはいえ、ちょっとした所作や姿勢の変化で若い男から老婆に変容したりする場面などがこの作品にはあるのだけれど、花組芝居独特の歌舞伎的な型を駆使した演技の応用などが今回の舞台では随所にあったのも見どころであった。
 前回の観劇で「なぜコーラなのかがはっきりとは分からない」と書いたが、結果としてそれは今回も同じような印象はあった。ただ、戦争ということのリアリティーに関してはウクライナへのロシアの侵攻などを経緯にかなり実感は強まったかもしれない。
 実は今年はコロナ禍の影響もあり、渡辺源四郎商店の公演を首都圏在住の俳優を主体として「親の顔が見たい」「コーラないんですけど」と2本立てで上演したのだが、ふと考えたのは具体的にどのような形で今回の稽古を進めたのかは分からないのだが、この形態での演劇上演が可能なのであれば青森の劇団員が主体の本公演とは別に渡辺源四郎商店プロデュースとして、キャストをより広く集めた公演が可能なのではと感じたのだ。そして、新作ももちろんいいのだが、そういう形式を取れば今回の「親の顔が見たい」もそれにあたるが、過去作品のうち現在の劇団員だけでは上演が困難な作品も上演することが可能なのでないか。あるいは畑澤作品、工藤作品以外でもぜひ一度は畑澤聖悟演出による舞台版「幕が上がる」なども見てみたいと思ったのである。

作・演出工藤千夏

出演
桂憲一(花組芝居)
大井靖彦(花組芝居)
植本純米(花組芝居)

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