下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

ベビー・ピー「七福神!」@京大西部講堂前広場

ベビー・ピー 第10回公演 「七福神!」
[構成・演出]根本コースケ
[出演]門脇俊輔 首藤慎二 根本コースケ 森上洋行 柳原良平(ぬるり組合) 松田早穂 丹生みほし
[STAFF]舞台監督:平林肇
舞台:吉田聡
美術:小西由悟
照明:ぷっちヨ(劇団愉快犯)
音響:井上まどか
イラスト:山さきあさ彦
制作:林保美、村田絢加、小澤希、菊地諒(劇団ケッペキ)
   ベビー・ピー
テント:唐仁原俊博

[協力]ニットキャップシアター、ぬるり組合、劇団愉快犯、中野劇団、西部講堂連絡協議会、イーリャダスタルタルーガス、KAIKA、劇団ケッペキ

 京大西部講堂前の広場に張られたテントで上演される野外劇といえばいわば季節の風物詩のようなもので以前は当時この西部講堂に拠点を置いていた遊劇体をはじめいくつかの劇団がここで公演をして、私も何度も見に来たものだが、その遊劇体が最後にここで野外公演をしたのが2001年9月のこと*1。その同じ年の11月には劇団犯罪友の会が「紫陽花の指絵」を上演しているが、おそらくこれが関西の地元劇団による西部講堂前での最後の公演でその後はここでの野外公演は東京の劇団が何回か来て上演した以外はやられていなかったのではないかと思う。
 そういう意味で今回10年前の上演などを知るメンバーはおそらくひとりもいないと考えられる若手劇団「ベビー・ピー」の手でここ西部講堂前での野外テント劇が復活、上演されたということは一種伝統の継承という意味できわめて画期的なことではないだろうか。というのはここ数年京都の若手劇団の関係者の間から野外のテント芝居が打ちたいけれどどうやったらいいのかのノウハウが分からないとの声を聞いていたからだ。もっとも今回のテント芝居の劇場のノウハウは遊劇体などかつてここを本拠地にしていた先輩劇団から受け継いだものというのではなくて、メンバーの何人かが出演していた劇団どくんごなどでの体験を基にして独自に工夫したものであるらしい。だが、そうだとしてもここで新たにテント劇場のノウハウを持った、あるいはノウハウを継承できる受け皿になりうる集団が現れたということは現在はあまり野外公演をやっていない先輩劇団にとっても嬉しいことだったのではないかと思う。少なくとも観客としてここでこれを見ることができた私はひさびさの経験がとても嬉しいものであった。
 もっとも、芝居の中身についていえばベビー・ビーの芝居にはアングラ臭の強いほかの野外劇上演集団と比べると少し違いがあった。表題の「七福神!」というのは出演している7人の役者たちのことであろうか。どんな話が展開されるんだろうと注目して見ていくのだが、どうやらこれは全体としてひとつの物語が紡がれるというよりはそれぞれの役者が演じるバラバラの短編が並べられたオムニバス作品であるらしいということが途中で分かってくる。
 コントのような場面もあればなにかロシアの小説と思われるテクスト(ドストエフスキー?)を抜粋し構成したひとり芝居、「ソクラテスの弁明」の一部分、月に上ってしまった女性を追いかけた男を描いたファンタジー風の物語、紙芝居風の芝居と内容はかなりバラエティーに富んでいて、(続く)
 

*1:タイタスプロジェクト(桃園会+遊劇体+他)「のにさくはな」 京大西部講堂前特設野外劇場