下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンスなど様々な文化的事象を批評するサイト。

『池袋ウエストゲートパーク』@東京芸術劇場シアターウエスト

池袋ウエストゲートパーク』@東京芸術劇場シアターウエス

原作 石田衣良(『池袋ウエストゲートパーク』文春文庫刊)

脚本 柴 幸男
演出・美術 杉原邦生
振付 北尾 亘
作詞 柴幸男/杉原邦生/森翼RYUICHI(OOPARTZ)

作曲 JUVENILE(OOPARTZ)湯浅篤/齋藤優輝/兼松衆

出演

大野拓朗
矢部昌暉(DISH//)

塩田康平
海老澤健次
大音智海
尾関陸
加藤真央
小島ことり
笹岡征矢
高橋駿一
富田大樹
細川優
三井理陽
伊東佑華(Wキャスト)
徳永純子(Wキャスト)
田中佑弥

染谷俊之

  ヒップホップ系の群舞と歌によるミュージカル風の舞台という意味では池袋を舞台にした日本版の「ウエストサイドストーリー」といった趣きがある音楽劇。恋愛要素がほとんどないのが大きな違いだが、冒頭、ひとりの男が「20年も前の昔話だ」などと回想として語り始めて物語が始まるのは、「ウエストサイドストーリー」の原作でもあるシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」の「序詞」の趣向を取り入れたのかもしれない*1
  それでこの話は現代ではなくて原作の小説「池袋ウエストゲートパーク*2が描いた20年近く前の池袋を舞台として展開していくことが提示される。
本編の開演前にヒップホップ系ダンスチームによるダンスバトルがあって、毎回ゲストの他にチームヤクシャと称して出演キャストによるチームも参加している。
バトルは勝ち抜き戦でフリーダンスでのダンスバトル形式になっているが、私が見た回では出演者チームが勝利を収め、そのまま実際の舞台の冒頭シーンに流れ込み、回想シーンによる一端の中断はあるが、バトルで盛り上がった空気がそのまま青い衣装を着た集団のダンスへとつながっていく。

『池袋ウエストゲートパーク SONG&DANCE』開幕!
テレビドラマでは長瀬智也が演じた真島誠役を演じているのが大野拓朗。どこかで見た名前だと思ったら、現在放送中のNHK朝ドラ「わらってんか」で芸人のキース役を演じていた。冒頭の「回想のセリフ」の件「ロミジュリ」を連想したのは事実関係としては間違っていたのかもしれないが、大野拓朗はミュージカル版「ロミオとジュリエット」でロミオ役を演じたばかりでもあり、当然、柴はそれを知った上で戯曲を書いていそうで関連性がまったくないわけでもないようだ。
 実はダンスバトルがやられた場所は作品内でさまざまな出来事が展開される「舞台」でもあるのだけれど、これは通常の客席のほかに舞台の奥にも客席が設営されていて、2方向から観客に囲まれる風になっている。舞台上方には杉原邦生が用意した舞台装置として巨大な「IWGP」の文字が吊るされていて、これはもちろん「池袋ウエストゲートパーク」の頭文字ではあるのだが、私のような年寄りにはその下に広がる「バトルフィールド」と相俟って、新日本プロレスがかつて開催したIWGP(「International Wrestling Grand Prix)」を連想させる。
 すなわち、ここは格闘技が戦われるリングにも見えてくるし、一方で東京芸術劇場の隣に今もあり、物語の中ではカラーギャング集団「G-Boys」と「Black Angels(舞台版ではRed Angels)」の最終決戦が戦われる池袋西口公園池袋ウエストゲートパーク)でもあるのだが、そのすべてを「IWGP」の4文字が象徴するように作られているのだ。
 

*1:と考えたがこれはおそらく原作小説が一人称の回想体で書かれていたからと考えるべきだろう

*2:小説『池袋ウエストゲートパーク』は1998年文芸春秋社から刊行。有名なドラマ版は2000年放送