下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンスなど様々な文化的事象を批評するサイト。

ドキュントメント「Changes(チェンジズ)」(山本卓卓監督)@あうるすぽっと

ドキュントメント「Changes(チェンジズ)」(山本卓卓監督)@あうるすぽっと

監督 山本卓卓(範宙遊泳)

出演 田中美希恵
映像統括・録音 須藤崇規
カメラマン 中里龍造、樋口勇輝、佐々瞬
撮影アシスタント 小西楓

音楽 大野希士郎
衣裳・メイク 臼井梨恵

制作 加藤弓奈(急な坂スタジオ)、荒川真由子(フェスティバル/トーキョー)
インターン 円城寺すみれ、小堀詠美、山里真紀子

製作 フェスティバル/トーキョー
共同製作 ドキュントメント、急な坂スタジオ
主催 フェスティバル/トーキョー
日程 11月13日(火)19:30
11月14日(水)13:00/17:00

受付開始は開演の30分前、開場は15分前
上演時間 80分(予定)
言語 日本語上映(字幕なし)

最近範宙遊泳を退団した元劇団員、 田中美希恵についてのドキュメンタリー映像なんだと勘違いして見始めたのだが、どうも勝手が違う。田中は太っていてコミカルであるという身体的な特徴を武器に範宙遊泳のみではなく、いろんな劇団に相次ぎ客演しているなかなかの人気女優だが、本作品では過去に太っているという体型が理由でオーディションで不当に扱われて落とされたことがあり、そのことがある種のトラウマになっていた。そこで体の体型をダイエットによって変えようと考えていると語る。その模様を映像として記録することにして映像作品を作るというのが作品の冒頭だ。
 ところがこの後、実際のオーディションの場面になると面接をしているのが、武谷公雄、松本亮だというのが分かってくるとこれはいわゆるテレビなどによくある「再現シーン」ではないかというのが分かってくるが、この演技がどことなく嘘くさい。さらにそれについて映像の作者であるはずの山本卓卓が作品中に出てきて、田中美希恵本人に向けて彼女がトラウマになったとしていたオーディションを「こんな風だったのではないか」と突っ込み、それに対し田中は積極的に肯定するというわけでもなく、「まあ」などと曖昧に否定しないが、第三者から見るとオーデションはそれほどおかしなものではなく、対象の役柄にはイメージがあり、彼女はそれに当てはまらないのがすぐに分かったのではずされたにすぎないと見えてくる。
 「Changes(チェンジズ)」はこのようにドキュメントなのかフィクションなのかが曖昧なのがひとつの特徴で、後半の横浜の公園で田中が3人の若者にちょっかいを出され、それに対してそこで映像収録をしていた山本卓卓が介入していく場面などは3人の若者は俳優が演じている仕込みであり、つまり、演技なのでこれが本当にドキュメンタリーであるならば「やらせ」とされてもおかしくない内容だが、こうした虚構をリアルなドキュメンタリー部分に挿入して混ぜ合わせてくることで、テキスト全体を虚実ないまぜの重層的な構造にしているのだ。
 面白いのは作品の最後で舞台上手に映像でなく実際に田中が現れてランニングマシーンで走っていたことだ。実は映像の最初の方でスクリーンに映写されたこの作品の冒頭部分を見ている田中の姿が映像と一緒に映し出された映像があり、この作品における「入れ子構造」が観客の前に提示されるのだが、この最後の部分は映像とその外側にいる田中という意味ではそこと呼応しているのだけれど、ここでは田中は実物の田中(というか演技している田中ということだと思うけれども)として我々の眼前にいる。ということはドキュントメントのことを映像作品と思わせるようなことを前に書いたけれども、ここではランニングマシーンで走っている田中もドキュントメント「Changes(チェンジズ)」の一部と考えることができるから、それを演劇と呼ぶべきかどうかは若干躊躇せざるをえないのだが、少なくとも映像作品ないしドキュメンタリー映画などと簡単に呼ぶことはできないのだろう。