下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンスなど様々な文化的事象を批評するサイト。

ももクロ夏ライブ観戦レポート 「MomocloMania2019 –ROAD TO 2020- 史上最大のプレ開会式」2日目@埼玉県・メットライフドーム

「MomocloMania2019 –ROAD TO 2020- 史上最大のプレ開会式」2日目@埼玉県・メットライフドーム

【公演詳細】
MomocloMania2019
–ROAD TO 2020- 史上最大のプレ開会式
会場:埼玉県・メットライフドーム

<DAY1>2019年8月3日(土)
<DAY2>2019年8月4日(日)
両日共通:open 14:30 / start 17:00 / (20:30終演予定)

DAY2
01. ロードショー
02. 愛を継ぐもの◎
03. ワニとシャンプー◎
04. イマジネーション
05. BLAST!★
06. ココ☆ナツ
07. The Diamond Four
08. 行くぜっ!怪盗少女 -ZZ ver.-◎
09. GODSPEED
10. 背番号
11. 青春賦(ギターアレンジ)
12. Nightmare Before Catharsis
13. リバイバル
14. キミノアト(ギターアレンジ)
15. ニッポン笑顔百景
16. ももクロの令和ニッポン万歳!◎
17. あんた飛ばしすぎ!!
18. 何時だって挑戦者
19. 走れ! -ZZ ver.-
20. 私を選んで!花輪くん / 佐々木彩夏&みぎわさん feat. 花輪くん◎
21. Guns N' Diamond
<アンコール>
22. 華麗なる復讐
23. GET Z GO!!!!
24. 勝手に君に
25. 吼えろ

 この日のライブの最大の驚きは新曲でも演出でもなく、毎年地方自治体と一緒に開催する春ライブ「春の一大事」を福島県のJ-VILLEGE(Jヴィレッジ)でやることを発表したことだ。
 「春一」の自治体と組んで地方で開催するというライブ開催趣旨を聞いたときから東北の東日本大震災被災地でライブを行うだろういうことは予測できた。その会場がまさかJヴィレッジという震災並びに福島の原発事故を象徴する場所であえてやるということに胸が熱くなった。
 Jヴィレッジは震災後の原発事故では復旧拠点となった場所だ。福島第一原子力発電所からは20キロの警戒区域にある。もちろん、現在は十分に安全ということでの今春の活動再開ということではあるのだが、この問題に関しては絶対に安全を認めない人も一定数おり、それゆえ「あえて、火中のクリを拾う」という言葉があるが、これはそういう行為で、当然ももクロを知らない人から非難を受けかねない行為であることは十分予測できることだ。ただ、少し考えるだけにここに3万人以上の人が集まり、現地の雰囲気を直に体験し、場合によってはそれを発信もするという行為の意味はこれまでの開催自治体とは比べ物にならないほど重要な意味があるんだということは言うまでもないだろう。
 今回の夏ライブ「MomocloMania2019 –ROAD TO 2020- 史上最大のプレ開会式」にはいくつかの最高の瞬間があった。その中でも特筆すべきなのは元宝塚の娘役トップの妃海風との共演による「華麗なる復讐」だったかもしれない。

《Full ver.》ももいろクローバーZ / 『華麗なる復讐』MUSIC VIDEO from「MOMOIRO CLOVER Z」
 難曲ぞろいの新アルバム曲のなかでもオペラやミュージカル風の歌唱まで取り入れたももクロ版「ボヘミアン・ラプソディー」を思わせるような壮大な楽曲で、東京キネマ倶楽部での生歌唱披露はありはしたものの、通常のライブで生歌唱が本当に可能なのかの疑問もないではなかったが、メットライフドームではコーラス部分などを声量豊かに歌い上げた妃海の強力なサポートを得て、1曲だけであたかも良質なミュージカルのクライマックス部分を聞いたような満足感を覚えた。
 妃海とはミュージカルDYWD以来の共演となったが、改めて感じたのは宝塚出身者とももクロの相性のよさである。この日のパフォーマンスを見て感じたのはこれまでのキャスト座組みから考えてイケメン系若手男優との共演を避けるということもできるし、次の舞台演目として宝塚出身者のキャストとのコラボによる本格的ミュージカルの上演というのはいいのではないか*1
 直前に発表されクラッピングから始まることからこちらは同じクイーンでも「We will Rock you」を彷彿とさせたのが「Nightmare Before Catharsis」だが、これも重厚なロックナンバー。昨年ぐらいから4人のボーカルのアタックの力が格段に増してきたことからこういうストレートなロック曲もまかせられるようになっているのだが、もちろん、これは今回のライブの主題歌として作られたのは間違いはなかろうが、今年は夏以降バンドを引き連れて降臨すると宣言しているロック系のフェスが相次ぐスケジュールからダウンタウンももクロバンドの超絶演奏力を全面的に誇示するための曲ではないかとも思わされた。
 今回のライブが「ロードショー」でスタートしたのは予想の通りではあったのだが、「全曲を生演奏」という仕切りの中ではもともとEDMであり、打ち込みによる曲を超絶技巧のテクニックで演奏した浅倉大介の雄姿に痺れた。「ロードショー」はスタート曲としてはベストフィットの楽曲でもあり、ももクリの「PRIDEのテーマ」→「OVERTURE」(アンコール)に並び夏ライブでの「ロードショー」→「OVERTURE」(アンコール)も今後恒例となってくるかもしれないと思わせた。

《Full ver.》ももいろクローバーZ / 『ロードショー』MUSIC VIDEO from「MOMOIRO CLOVER Z」
 今回のライブは「地上最大のプレ開会式」と銘打ってはいるけれども「応援」というのがテーマだったようだ。
 事前情報から「模擬開会式」のような内容を期待していたので、はぐらかされるような結果になり、ライブ後は多くの疑問が脳裏に浮かんだのだが「おかわりちゃん」でライブを見直したところ「応援」のテーマに沿って、メインをこれまでの「ROAD TO 2020」のようにスポーツ競技の選手ではなくて、チアダンス(217人が参加)に代表されるように「応援する人」に主眼を置いたんだということが氷解して少しだけ納得できるものとなった*2
 その「応援」というのは五輪やパラリンピックに出場する選手に対するエールというのはもちろんだが春ライブ「春の一大事」を福島県Jヴィレッジでやるように「被災地への応援」そして「日本への応援」へと広がりを見せていく。
 「応援」ということで言えばモノノフがまーくん曲と呼んでいるヤンキース田中将大投手の登場曲「背番号」「何時だって挑戦者」「 GET Z GO!!!!」「 勝手に君に」「吼えろ」は今回のライブで骨幹をなす楽曲となった。ライブ直後に田中投手が大量リードを背負いながらも打ち込まれてKOされてしまったのは皮肉だが、チーム成績からいって今年こそ念願のワールドシリーズ優勝にチャレンジできる大きなチャンスであるのは現在も変わっていない。私としてはまだ音源化されていないまーくん曲を集めたアルバムを発売してほしいが、それがヤンキースワールドシリーズ制覇記念と銘打って出せるならそれこそ最高と思っている。未音源曲の中にはGReeeeNファンキー加藤の提供曲も含まれており、すべてがクリアーされた時の話題性は相当なものだと思うのだが。これらの楽曲はいい曲がそろっているのだが中でも「何時だって挑戦者」「吼えろ」は本当によかった。田中投手も頑張ってくれ。
 実は5年前にももクロ論考を書いた時にももクロがなぜ奇跡のようなブームを引き起こすことができたのかについて、震災後の沈んだ日本に現れた一筋の光明のようなことを書いて一部ファンの批判を受けたことがあったが、いまでもその分析は正しいと思っている。ももクロの結成はもっと以前のことであっても、彼女らが震災直後の中野サンプラザももいろクローバーZになり、その後、「ニッポン笑顔百景」「ももクロのニッポン万歳!」のようなももクロ流の震災復興支援ソングを擁して、震災により傷ついた人たちを応援するために縦横無尽の活躍を見せたのはいまさら言わないでも分かるだろう。
 その意味でも今回の「MomocloMania2019 –ROAD TO 2020- 史上最大のプレ開会式」と来春のJヴィレッジでの春一は震災以来の彼女たちの活動「笑顔の天下取り」においてひとつのクライマックスをなす集大成であるのは間違いないかもしれない。
 もちろん、ももクロの活動はそれだけではなく、「5TH dmention」のライブから「幕が上がる」プロジェクト、ミュージカル、「東京キネマ倶楽部」とつながっていく総合エンターテインメントの追求もある。その意味では次の明治座がどんな風になりそしてそれが今度はどこにつながっていくかというのも興味深い。まだまだももクロの楽しみは尽きないようだ。
 ただ、蛇足のようだが最後にひとつだけ今回のライブへの不満も述べておこう。せっかくわざわざ駆けつけてくれたグレート・ムタの扱いが中途半端だったこと、これもわざわざ来てくれた五輪パラリンピックの候補選手への扱いがいかにも雑に感じさせられたこと。桃神祭やももクロマニアのこれまでのライブを通じて、ショーの完成度における佐々木敦規の演出力を高く評価してきただけに今回のライブ演出は十分には評価できかねるものと感じてしまった。いろんな要素がからんでの方程式は困難を極めたとは思うが、それができちゃうのが「あつのりん」だと思うので、先に書いた集大成の来春、来夏は最高のものを見せてほしいと思う。

*1:明治座を終えて、一気に頂点を狙いにいくなら帝国劇場か東京宝塚劇場だろうが、現実的には新橋演舞場か、東京芸術劇場あたりか?

*2:実は「おかわりちゃん」で今回参加していたチアのチームの技の技術の高さと演技の完成度に感嘆したがサイドのスタンドから観戦した現地では十分に実感できない部分があった。参加したチアのチームも大学生と高校生のチアのトップチームからなる選抜だったようだが、単純なチーム名だけではなく、もう少し詳細な紹介が欲しかった。そういえば、会場には土屋太鳳や早見あかりが来ていたようだが、彼女らはそれぞれチアをテーマにしたドラマや映画に出演した経験があり、今回のチアを取り入れたライブ演出をどんな風に思ったか聞いてみたいところだ。