下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

KARASアップデイトダンスシリーズ No.52「白痴」@カラス・アパラタス

KARASアップデイトダンスシリーズ No.52「白痴」@カラス・アパラタス

2016年6月にアパラタスで初演され、同じ年12月にシアターXでも上演された作品の再演である。ドストエフスキーの小説「白痴」が原作であり、勅使川原三郎ムイシュキン公爵、佐東利穂子がナスターシャを演じているという意味で演劇的な要素が色濃い作品だ。
 一般に優れたダンサーによるダンス作品ではダンサーはその人そのものであるか、あるいは例えば大野一雄の「ラ・アルヘンチーナ頌」のように依りしろのように何かを演じるというということが多い。ところが勅使川原三郎はそうした中で例外的に自らの身体により、なにもない空間に世界を構築するような作品が数多く、それが勅使川原ワールドの魅力といえた。
 ところが、ここ数年(特にアパラサスを開設して以降)の作品では「トリスタンとイゾルテ」「ペトル
ーシュカ」など原作のキャラクターを演じるというタイプの作品が目立ってきている。これは佐東利穂子というダンス作品における共同制作者を得たということも大きいのかもしれない。この「白痴」もそうした作品の代表作といってもいいかもしれない。
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勅使川原三郎+佐東利穂子「白痴」

勅使川原三郎「白痴」フェスティバル・ドートンヌ招聘公演でヨーロッパ初演 - ステージナタリー

【出演 演出 照明】勅使川原三郎 【出 演】佐東利穂子
【会 場】カラス・アパラタス/B2 ホール 〒167-0051 東京都杉並区荻窪 5-11-15 F1/B1/B2

【料 金】一般 / 予約 3,000 円[当日 3,500 円] 学生 2,000 円 (予約当日共に)

【前売予約】updatedance@st-karas.com *全席自由

件名を「アップデイトNo.52」とし、ご希望の日付・住所・氏名・一般または学生・当日連絡のつく電話番号を記入のうえ送付
メール予約受付は各回とも前日の24時まで学生の方は当日受付で学生証を提示 *開演後の途中入場不可

【日程】2018 年 * 6 月 11 日(月)休演
6 月 7 日(木)20:00
6 月 8 日(金)20:00
6 月 9 日(土)16:00
6 月 10 日(日)16:00
6 月 12 日(火)20:00
6 月 13 日(水)20:00
6 月 14 日(木)20:00
6 月 15 日(金)20:00

地点『山山』@KAAT

地点『山山』@KAAT

作 松原俊太郎
演出 三浦基  

出演 安部聡子 石田大 小河原康二 窪田史恵 小林洋平 田中祐気 麻上しおり

舞台美術|杉山至(山・忘)
衣裳|コレット・ウシャール (山・忘)
照明|横原由祐(山)、大石真一郎 (忘)
音響|徳久礼子(山)、稲住祐平(忘)
舞台監督|藤田有紀彦(山)、小金井伸一(忘)

プロダクション・マネージャー|山本園子(山)、安田武司(忘)
技術監督|堀内真人(山・忘)
宣伝美術|松本久木(山・忘)
写真|石川竜一(山・忘)
制作|千葉乃梨子(山)、田嶋結菜(山・忘)

地点という劇団は少し苦手。というのは本当に名実ともに素晴らしいと思われる舞台と困惑して「うーん」と考え込んでしまう舞台が両方あって、チェホフの4大戯曲の連続上演*1などは前者だが、正直言って今回の舞台は後者。作家の松原俊太郎も評価が高いし、おそらくこの舞台を絶賛する人が一定数以上出てきそうだが、私には正直よさがよく分からないものだった。 
  杉山至の印象的な舞台美術を活用した空間造形など評価すべきところはなくはないのだが、この舞台は私にはどうも相性がよくないようだ。テキストを切り刻んでばらばらにしてしまうような三浦基の演出アプローチはそれがチェーホフシェイクスピアのような元テキストがよく知られたものについては物語の再構築という意味である種の効果をおよぼすことは確かだが、新人劇作家の新作上演にはあまり向いていないのではないか。

日本のラジオ「ツヤマジケン」@こまばアゴラ劇場

日本のラジオ「ツヤマジケン」@こまばアゴラ劇場

作・演出:屋代秀樹


今度は強い強い人に生まれてこよう、今度は幸福に生まれてこよう。

日本猟奇事件史のトップランナー
津山三十人殺し」を借景に
女子高演劇部の夏合宿を舞台にして、
少女たちの友情、鬱屈、愛、純真を
沈鬱かつユーモラスな世界観で描いた
佐藤佐吉演劇賞最優秀脚本賞受賞の
「さわやかな惨劇」再び

日本のラジオ
読み方は「にほんのらじお」。代表である屋代秀樹が自作の戯曲を上演するため立ち上げ。
怪異や、実際あった猟奇事件を下敷きにしたものをよくやっています。
残酷な結末になることが多いですが、舞台上での暴力シーンはあまりなく、「観た後さわやかな気持ちになる」と言われることもあります。
ギャラリーでの公演を主として、照明や音響はほとんど使いません。台詞と役者の演技があれば大体大丈夫だと思っています。

淡々とした世界を、こっそり覗き見る感覚で観ていただけたらと思います。


出演

安東信助(日本のラジオ)、田中渚(日本のラジオ)
赤猫座ちこ(牡丹茶房)、久保瑠衣香(W.FOXX)、沈ゆうこ(アガリスクエンターテイメント)、瀬戸ゆりか、鶴田理紗(白昼夢)、土橋美月、永田佑衣、藤本紗也香、古田希美恵
大塚尚吾、野田慈伸(桃尻犬)

スタッフ

舞台監督:黒澤多生(無隣館)
照明:少年(劇団肋骨蜜柑同好会)
照明操作:伊藤将士
演出助手:田中優佳里
衣装:えいり(ネバアランド BIRTHDAY)
宣伝美術:郡司龍彦
制作:屋代秀樹

「ツヤマジケン」は2014年佐藤佐吉演劇賞にて最優秀脚本賞・優秀作品賞・優秀助演女優賞(三澤さき)を受賞した日本のラジオ代表作の再演。
女子高演劇部の合宿+津山事件という重ねあわせによるスプラッタホラー。内容からすると大人計画デス電所を連想させるのだが、演技のタッチはオーソドックスな現代口語演劇に近く、かなり異なる。
 部長役を演じた元無隣館の鶴田理紗(白昼夢)をはじめ女子高生を演じる女優たちがなかなかに魅力的で演技もうまい。

lal banshees vol.2「ムーンライトプール」@三軒茶屋シアタートラム

lal banshees vol.2「ムーンライトプール」@三軒茶屋シアタートラム

【振付・演出 / 出演】横山彰乃
【出演】asamicro 北川結 後藤ゆう 菅彩夏 菅原理子 仁科幸
2018/6/8(fri) - 10(sun) 
会場 シアタートラム

6/8(fri) 19:30 開演
6/9(sat) 15:00 開演
6/10(sun) 15:00 開演
【Ticket】一般前売り 3,300円 / 当日 3,800円
     学生前売 2,500円 / 当日3,000円 他

KENTARO!!が率いるダンスカンパニー「東京 ELECTROCK STAIRS」の主要メンバーである横山彰乃によるダンスカンパニーlal bansheesの2年ぶりの公演。
 東京 ELECTROCK STAIRSでは高橋萌登がこまばアゴラ劇場でソロ公演を終えたばかりだが、個々のメンバーの個人による個別の活動が盛んになってきている。
 前回公演の感想で「物語性は特にないが、単に音楽に合わせて群舞で踊るというようなありがちなものではなくて暗い森の中で何かよく分からない生き物たちが蠢いている、というような一種不可思議なイメージがあってこうした個性的な世界観が色濃く出ている」と書いたが、今回もそうした持ち味は受け継がれている。
人間が人間として踊る群舞というよりも、集団で群生する人間以外の生物の群れのようなものを集団で表現するような印象。実は集団表現による異世界生物の表現と言えば横浜ダンスコレクションの審査員賞を一昨年受賞した黒須育海(現ブッシュマン)の作品などを連想させるが、黒須の作品があくまで例えばスタニスワフ・レムに出てくるようなハードSF的な異世界異生物を想起させるのに対し、横山彰乃のはジブリに出てくるようなファンタジーなイメージが紡ぎ出される。
 ただ、前回も多用された舞台上にいるダンサーをソロ、デュオ、トリオなど変えてみせる構成は今回も健在。ただ、横山彰乃本人を含め、前回参加の5人のダンサーのうち今回も4人が参加したほか、新たに3人のダンサー(asamicro、菅原理子 、仁科幸)が加わったこと、劇場空間がこまばアゴラ劇場からシアタートラムへと大幅に拡大したことで、ダンスの構成は格段に複雑さを増した。
 

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五反田団「うん、さようなら」@アトリエヘリコプター

五反田団「うん、さようなら」@アトリエヘリコプター

作・演出:前田司郎
出演:上田遥、菊池真琴、後藤飛鳥、坂倉奈津子、端田新菜、望月志津子

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高橋萌登ソロ「未来永劫彼方へ」@こまばアゴラ劇場

高橋萌登 単独ソロ公演「未来永劫彼方より」(2回目)@こまばアゴラ劇場

2018年5月30日(水)~6月3日(日)
東京都 こまばアゴラ劇場

構成・振付・出演:高橋萌

初音ミク×鼓童 スペシャルライブ2018@NHKホール

初音ミク×鼓童 スペシャルライブ2018@NHKホール

M-00 Opening/鼓童
M-01 みんなみっくみくにしてあげる♪/初音ミク
M-02 ラズベリーモンスター/初音ミク

Hatsune Miku - Raspberry*Monster「Magical Mirai 2016」

M-03 ヒビカセ/初音ミク
M-04 ビバハピ/初音ミク

M-05 ロキ/鏡音リン 鏡音レン
M-06 いーあるふぁんくらぶ/鏡音リン 鏡音レン
M-07 三宅/鼓童
M-08 南部牛追い歌/鼓童 初音ミク
M-09 独りんぼエンヴィー/初音ミク
M-10 結ンデ開イテ羅刹ト骸/初音ミク
M-11 ワールズエンドダンスホール/巡音ルカ 初音ミク
M-12 ルカルカ★ナイトフィーバー/巡音ルカ
M-13 能管+平胴/鼓童
M-14 巴/鼓童
M-15 巡/鼓童
M-16 初音ミクの激唱/初音ミク
M-17 8HIT/鏡音リン 鏡音レン
M-18 リモコン/鏡音リン 鏡音レン
M-19 ワールドイズマイン/初音ミク
M-20 Tell Your World/初音ミク
MC
「アンコールは・・・ん~・・・あるかもね?」
M-21 ハジメテノオト/初音ミク

アンコール 「ミク」からの「ミク・こどう」
M-22 Satisfaction/初音ミク
M-23 千本桜/初音ミク
M-24 桜の雨/初音ミク
M-25 メルト/初音ミク 

初音ミク×鼓童」は昨年に続き2回目。昨年第1回*1を見て鼓童による和太鼓の生演奏と初音ミクのライブが予想以上にマッチングがいいということに気づかされて感心したが、よりスムーズな融合ぶり見ることができた。
昨年ともに和楽器とのコラボを試みて、2020年東京五輪開会式に向けてワンチャンスを狙っているという意味でももクロ初音ミクはライバルだと書いたが、式のメインの演出部分についてはMIKIKO+ライゾマティクスリサーチが携わるのはほぼ固まっているのではないか。そうなるとともにメディアアートでありライゾマ的なものとの親和性の強い初音ミクには一日の長があるのかもしれない。

高橋萌登 単独ソロ公演「未来永劫彼方より」@こまばアゴラ劇場

高橋萌登 単独ソロ公演「未来永劫彼方より」@こまばアゴラ劇場

2018年5月30日(水)~6月3日(日)
東京都 こまばアゴラ劇場

構成・振付・出演:高橋萌

KENTARO!!が率いるダンスカンパニー「東京 ELECTROCK STAIRS」の主要メンバーである高橋萌登によるソロ公演。
 東京 ELECTROCK STAIRSでは個々のメンバーの個人による個別の活動が盛んになってきているが、これもそうしたもののひとつである。
 舞台の最後の方に出てくる歌詞付きの曲こそ、師匠のKENTARO!!の提供曲を高橋が歌ったものではあるが、それ以外の劇中曲は全て高橋が自分で作曲・制作した楽曲であり、いままで以上に作品のどこを切っても高橋萌登ワールドという彼女ならでは世界観が濃厚に示されたものとなった。

高橋萌登『未来永劫彼方より』Trailer
 前半はどちらかというと抑制された静かな動きの中で、インストゥメンタルの音楽と照明効果により空間を構成していくような構成。物語りも舞台設定の具象性もいっさいなく、どちらかというともすれば重くなりかねない、シーンのつなぎだが、高橋の小動物を思わせるようなコミカルなキャラと動きがそうなることをふせぎ独特の軽味を作品に付け加えている。

スヌーヌー vol.1「ドードー」@三鷹SCOOL

スヌーヌー vol.1「ドードー」@三鷹SCOOL

作・演出 笠木泉

出演 踊り子あり(はえぎわ)

料金

前売:1500円
当日:1800円
学生:1000円(要予約・学生証提示)


5.31 - 20:00
6.1 15:00 20:00
6.2 14:00 19:00



「スヌーヌー」の「ドードー」についてのノート
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笠木泉です。
一人で舞台を作るにあたり、
「スヌーヌー」という新しい名前をつけました。アラビア語で「つばめ」の意味です。この名前に決まるまで結構悩みました。
第二候補は「マグパイ」でした。 「マグパイ」は英語で「カササギ」。
まあ、私がカサギだからです。その他「泥棒かささぎ」「劇団ギーカサ」など、様々な意見も出ましたが、結果「スヌーヌー」に落ち着きました。今後、この名前でふっと現れては活動すると思います。

今回の舞台の題名は「ドードー」です。絶滅してしまった鳥なので、いろいろよくわからないのですが、よくわからないことを考える舞台にしたいと思っています。ドードーは飛べません。じゃあまあ仕方ないかとドードーと同じく飛べない我々は歩いてみます。ひとまず進んでみて、とあるドアを開ける瞬間。そこに何かあるのか、ないのか、わからないけれど、そこまでの1人芝居です。しかし同時に、この演劇は、彼女にとって幸か不幸かわかりませんが、舞台上でたった1人で立つことになった踊り子ありさんを起点に、まず私、そしてそこから、隣人、友人、家族、お客様、時代、場所、海、電車、土地などなど、そしてそこからもどんどん拡張し、転がり、流浪し、たくさんの方となんだか繋がっている感覚を持てるような、そんな演劇になったらいいなと思っています。

 スヌーヌーは遊園地再生事業団ミクニヤナイハラプロジェクトなどで女優として活躍してきた笠木泉の個人ユニット。今回は旗揚げ公演で作・演出を笠木泉が務めるはえぎわの女優「踊り子あり」の一人芝居となっている。
 実は会場で当日パンフを読むまでは笠木泉の一人芝居で、踊り子(ダンサー)として何人かがゲスト出演するんだとばかり思っていたのだが、踊り子ありというのはこれで芸名で女優さんなのだった。
 最近、若い劇作家たちの作品にダイアログが減ってきてモノローグが多いことが、気になっている。綾門優季はこれについてTwitterなどが影響しているのではないかという仮説を提唱している。

「ポストゼロ年代演劇の新潮流① チェルフィッチュと身体 ゲスト山縣太一」@SCOOL セミネールin東京vol.4

「ポストゼロ年代演劇の新潮流① チェルフィッチュと身体 ゲスト山縣太一」@SCOOL セミネールin東京vol.4

 前売り完売。当日券若干枚出しますが、立ち見になる可能性があります。
【日時】2018年5月29日(火)p.m.7:30~
【ゲスト】山縣太一(オフィスマウンテン)
【場所】三鷹SCOOLにて (JR中央線三鷹駅南口・中央通り直進3分 右手にある「おもちゃのふぢや」ビル5階)
【料金】前売:2000円(前売り完売)
当日:2500円 (+1drinkオーダー) 当日の有無は追って掲載。
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 2010年代が終わりを告げる時期が近づいてきたが、演劇においては平田オリザの現代口語演劇、群像会話劇のくびきを離れ、後に私が「ポストゼロ年代演劇」と総称することになった若手の作家群の先駆けとなったのがチェルフィッチュ岡田利規)だった。チェルフィッチュにはちょうど10年前に大阪で開催した「チェルフィッチュという現代」を嚆矢に数度のレクチャーを行ったが、これまで論じたのは主として作家・演出家である岡田利規と彼が生み出した作劇・演出の方法論についてであった。
 一方で初期のチェルフィッチュには怪優、山縣太一をはじめとして個性豊かな俳優陣がおり、身体的なノイズを多用するようなそのユニークな身体論は彼ら俳優との共同作業から生み出されたものだった。今年は岡田利規がKAATで若い俳優を集め、その代表作「三月の5日間」のリクリエーション版の上演を行ったが、それと呼応するかのように初演のオリジナルキャストの山縣太一演出による「三月の5日間」も上演された。今回は山縣をゲストに迎え、初期チェルフィッチュにおいて俳優はどのような役割を果たしていたのか、あるいはチェルフィッチュから離れ、オフィスマウンテンを設立した山縣が追求し続けていることは何かについても考えてみることにしたい。

【予約・お問い合わせ】
●メール simokita123@gmail.com (中西)まで お名前 人数 お客様のE-MAIL お客様のTELをご記入のうえ、 上記アドレスまでお申し込み下さい。ツイッター(@simokitazawa)での予約も受け付けます。
電話での問い合わせ
090-1020-8504 中西まで。

chelfitsch Theater Company: Five Days in March


チェルフィッチュ「三月の5日間」熊本公演 2011年12月9〜11日

【特報】チェルフィッチュ「三月の5日間」ドキュメンタリー制作決定
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チェルフィッチュ「ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶」 – ワンダーランド wonderland