桃園会「a tide of classics」(大阪・ウイングフィールド)を観劇。
[キャスト]
紙風船 江口恵美/紀伊川淳
留守 森川万里/橋本健司/寺本多得子
可児君の面会日 亀岡寿行/川井直美/小坂浩之/加納亮子/寺本多得子/橋本健司/長谷川一馬/樋上真郁/江口恵美
驟雨 はたもとようこ/加納亮子/長谷川一馬/川井直美
[スタッフ]
舞台美術:池田ともゆき/照明効果:西岡奈美/音響効果:大西博樹/舞台監督:岡一代/イラスト:山田賢一/宣伝美術:白沢正
演出助手:森本洋史 松本雄貴/制作:桃園会[協力]
TANC!池田意匠事務所 劇団太陽族 他
東京ではナイロン100℃のKERAが岸田國士の一幕劇を独自に構成した「犬は鎖につなぐべからず」が上演されたばかりだが、関西でも桃園会の深津篤史がやはり岸田國士の一幕劇4本を1ステージ3本ずつ組みあわせて、日替わりのプログラムとした「a tide of classics」が上演された。ちょっとした岸田國士リバイバルのブームといった趣きである。
この日上演されたのは「留守」「驟雨」「紙風船」の3本で、7本の戯曲を自由に組みあわせてひとつの作品に仕立てあげたKERAとは対照的にこの順番通りに戯曲にはいっさい手をつけずに上演された。今回、桃園会の本公演として岸田國士に挑戦したのはひとつには昨年新国立劇場で深津が演出し上演された岸田國士作品の舞台が「動員挿話」*1が評判がよくさまざまなところで賞や今年の収穫に選ばれるなどしたこと。さらに深津が師と仰ぐ北村想が以前、アイホールプロデュースとして「紙風船」「命を弄ぶ男二人」を上演したことがあるのを意識してのことかもしれない*2。
3本のなかではまずこの集団の看板女優である江口恵美が出演している「紙風船」がいい。この作品は当時プロジェクト・ナビの看板だった佳梯かこが主演した北村想演出バージョンも以前観劇しており、忘れがたい好演との印象が強く残っている*3のだが、江口の演技も清楚な印象のあった佳梯とはまるで違うなまめかしさを感じさせるキャラつくりで印象的という意味では甲乙つけがたいものであった。
ナイロン100℃による上演の出来栄えが非常によかったので、こちらはどうだろうと思っての観劇であったが、持ち味のまったく違う2劇団らしく、今回の2つの上演もある意味持ち味としては対照的なものではあったが、特に女優陣の層の厚さに代表されるようにそれぞれに劇団の総合力のレベルの高さを感じさせた。特に「紙風船」は以前見た北村想の演出のものが印象的で期待していたのが、KERA演出ではこの戯曲は夫婦が空想上の鎌倉旅行を演ずる部分を中心に抜粋が演じられただけだったのが、少し物足りない思いもしたので、ここでは岸田戯曲特有の会話によって表現される夫婦の関係性の機微が存分に堪能できたことが嬉しかった。
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