下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

第2劇場「麦藁バンド」@ウィングフィールド

第2劇場「麦藁バンド」 ウィングフィールド)を観劇。

◆作     四夜原茂
◆演出    阿部茂
Cast
青山誠司 大東広志 伊藤晃 桂久美子 清水翼 平野洋平 三宅直 渡辺優 高家洋代 住野亜梨紗 阿部茂
Staff
舞台監督      林直樹
照明        東直樹
音響        堀之内克彦
舞台        三宅直
小道具       高家洋代
衣装        住野亜梨紗
宣伝美術      マスター伊藤
制作       (有)DNG


 創立30周年記念公演というのだけれど、それでこんな人を食った芝居をやるとは(笑い)。そこがなんともこの劇団らしいところではあるのだ。こんなことでいいのかと心配になってくるが、こういういい意味での「えーかげんさ」が2劇という集団の特徴であり、魅力なのだ。この作品一言で言えば阿部茂(四夜原茂)の台本が出来ないっていうのを延々の反復のうちに芝居に仕立て上げたものだ。劇作家というものは書けなくなるとなにを書くかというと書けない作家そのものを書き始めると自らに照らし合わせて言ったのは北村想だけれど、これもその類なんだろうか。だが、阿部はけっして書けない自分自身をそのまま芝居にしたりはしない。劇団の30周年記念に合わせてか、これをメタシアター仕立てにして、第2劇場という劇団の戯画化された自画像として、フェイクドキュメント風に描き出すのだ。
フェイクドキュメントとかメタシアターって書いたけれどどこか違う。普通そういうのってもっと本当らしく虚実ない交ぜでやると思うのだけれど、この舞台の場合まずそれ自体が圧倒的にうそ臭い。冒頭でまず開演前から何人かのスタッフ(役者?)が舞台に出てきて、いろいろ下準備をする風に舞台装置や照明などのあちらこちらをいじっているのだけれど、この時点で「こりゃなにかメタシアター系の仕掛けがあるな」とすぐに気がついたもの(笑い)。
 もっともそういう風にすることで、「これは作家が本が書けないという虚構の設定をしたメタシアター」という風に考えさせながらも、公演中止を阻止しようとした劇団員が2001年年に初演した第2劇場のもうひとりの劇作家、音間哲による「人心地のよい車」の再演を強行するという形で公演を続行しようとするという話になるが、その他人の旧作台本を入れ子に使いながら、ここで阿部が捏造していくのはない台本を演じながら芝居をなんとかでっち上げようという劇団員の群像劇で、かといってここには例えば三谷幸喜の「ショー・マスト・ゴー・オン」のような感動はまったくかけらもなく、ただひたすらに馬鹿馬鹿しいばかりなのだ。