下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

「TOYOTA CHOREOGRAPHY AWARD 2008」セカンドステージ 出場振付家 決定 !!

TOYOTA CHOREOGRAPHY AWARD (トヨタコレオグラフィーアワード)2008」セカンドステージ

セカンドステージ出場振付家・作品

石田陽介「壁」
磯島未来・加藤若菜・須加めぐみ(Pink)「子羊たちの夕焼けボート」★☆
栄華「もっと真面目に生きなさい」
神村恵「斜めむき」
川崎歩「ためいけ」☆
きたまり(KIKIKIKIKIKI)「サカリバ007」◎★☆
北村成美「うたげうた」★☆
KENTARO!! 「泣くな、東京で待て」★(横浜ソロ×デュオ・フランス大使館賞)☆
鈴木ユキオ(金魚)「沈黙とはかりあえるほどに」◎
ストウミキコ・外山晴菜「たまごが先か、にわとりが先か」
得居幸(yummydance)「Bring Me a PPPeach. (もももってきてちょうだい?)」◎★☆
不動まゆう 「マリアの子」
古家優里・長内裕美・梶本はるか・三浦舞子・三輪亜希子(プロジェクト大山)「てまえ悶絶」★☆
ボヴェ太郎「implication -風景として響きあう空間と身体- 」◎☆
明神慈(ポかリン記憶舎)「夜奏」*1
山賀ざくろ・泉太郎「天使の誘惑」◎☆

[五十音順/上演順未定・実演時間各15分以内]

※次週よりTCA webにて振付家情報などをご案内します。
http://www.toyota.co.jp/tca/

 トヨタコレオグラフィーアワード2008のセカンドステージの進出者が発表になった。応援している、きたまり(KIKIKIKIKIKI)、KENTARO!! 、得居幸(yummydance)が入ったことである意味順当な結果といいたいところだが、矢内原美邦「青ノ鳥」が岸田戯曲賞の最終候補にノミネートされたのを見つけたのと同じぐらいに仰天したのは明神慈(ポかリン記憶舎)「夜奏」がダンスとしてノミネートされていたことだ。個人的には明神慈ならびにポかリン記憶舎を以前から評価してきたものとしてはすごく嬉しいのだけれど、私の知る限り、ダンス関係者のなかで、ポかリン記憶舎を評価していたのは2人ぐらいしか思い浮かばず、その2人のどちらかが推薦したんだろうか。今年は毎年開催から隔年開催になって初めての開催。制度も少し変わって、セカンドステージ、ファイナルステージの2段階の選抜となり、どんな候補が選ばれるのだろうと気になってみていたのだけれど、16組のうち、以前にもファイナリストに選ばれた経験がある振付家(表の◎)が5組。JCDNの「踊りに行くぜ!!」に選ばれていた作品(★)が6組。ストウミキコ・外山晴菜、栄華、不動まゆうといった知らない名前もあるにはあるのだけれど、隠しだまというか、あっと驚くような人がいるわけではなく、どちらかというと予想された顔ぶれといえるかもしれない。
 もっとも、明神慈(ポかリン記憶舎)は以前の岡田利規チェルフィッチュ)同様に演劇分野からの選考だが、岡田のは一応、コンテンポラリーダンスの公演向けに製作したダンス作品でノミネートされたのに明神はそうじゃないから、ダンス畑の人にとってはまったくノーマークでこの人はだれっていうことになっているのかもしれない。外国人がポかリン記憶舎をどう評価するんだろうというのはすごく興味があって、その意味ではアワードを受賞するのは無理でもファイナルに残ってほしいなと思う。
 嬉しいのは今回は関西組が多くて、石田陽介、きたまり、北村成美、ボヴェ太郎と松山の得居幸も含めて、関西勢が数多く選ばれた*2ことだ。そういう意味では石田陽介「壁」っていうのはどこで上演されたのかも分からないノーマークだったのでちょっとびっくりさせられた。そういえば、ダンサー・振付家としての評価はすでに高いといえるが、振付コンペでは相当前の横浜ソロ×デュオで確か一度ノミネート、後はトリイアワードでフランス賞受賞ぐらいで、トヨタアワードとはこれまで縁がなかった北村成美がノミネートされたのも注目。トヨタアワードではソロダンスは不利というのがこれまでジンクスだったのだが、前回、白井剛がそれを打ち破ったことで、KENTARO!!とともにダンサーと振付を分けることをしにくいソロダンスがどういう風に評価されるのかに注目したい。それにしても今回は分かっている限りでも、5作品がソロ作品でそれがどう評価されるのかも興味深い。ただ、これまでの基準は外国人審査員も複数加わる最終審査での基準であり、日本人の審査員のみによるセカンドステージは基準が違うかも。ここで東京ローカルな基準で選ばずこれまでのトヨタの基準でちゃんと考えてほしいが、政治的に考えてみれば今回の制度改革はこれまでの選考結果に不満を持つグループの流れを変えたいという意思がこうさせたのだという風にもとることができそうだから、そのあたりもどうなるか。
それにしても連帯率の高さに恐るべしと思ったのはKENTARO!!、きたまり、古家優里・長内裕美・梶本はるか・三浦舞子・三輪亜希子「てまえ悶絶」とJCDNが「踊りに行くぜ!!」SPECIAL IN OSAKA/TOKYOに選んだ3組がすべて選ばれていたことだ。そういえばMUSIC×DANCE!!のyummydanceと鈴木ユキオも選ばれている。個人的には今回も東京のダンス関係者の評価が異常に低いので気になっているきたまりに頑張ってほしいと思っているのだが、どうなるだろうか。あくまで、私個人の評価ですが、☆は私が見たことがある作品で、あくまでその範囲内ということになるけれど、この中では「サカリバ007」が一番なのだが……。「サカリバ007」もそうだったけれど、コンテンポラリーダンスの作品はしばらく見ないうちに大きく進歩してるってことがあるしなあ。
 応募して落ちたのかどうかが定かではないのだが、今回は鈴木ユキオ、北村成美、山賀ざくろといったいくらなんでも新人とはいえない人も入ってはいるけれども、矢内原美邦康本雅子、森下真樹、ほうほう堂といった中堅クラスの人が入っていないので、これまでと比べると新人賞の色彩が強く見える。

*1:http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/00000018

*2:後から分かったけれど、川崎歩も関西だったみたい。しかも、神戸アートビレッジセンターでつい最近、作品を見ていた