下北沢通信

中西理の下北沢通信

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Kawai Project「ウィルを待ちながら──歯もなく目もなく何もなし」@こまばアゴラ劇場

Kawai Project「ウィルを待ちながら──歯もなく目もなく何もなし」@こまばアゴラ劇場

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作・演出:河合祥一郎
ウィルを待ち続けるふたりの役者。ふたりが口にするのは、シェイクスピア全40作品を網羅する名台詞の数々! シェイクスピア演劇の真髄に、ややベケット風に迫る新作芝居! 小田島雄志訳全作上演を達成したあのシェイクスピア・シアターの創立メンバーである田代隆秀と、『ゴドーを待ちながら』でエストラゴンを演じた髙山春夫が送る、メタシアトリカルな二人芝居。シェイクスピア研究者・河合祥一郎による書き下ろし新作。

Kawai Projectは河合祥一郎が研究と現場をつなぐため、自らプロデュース・翻訳・演出を手がけて、2014年にシェイクスピア喜劇『から騒ぎ』で開始。2016年には『ま髙山春夫ちがいの喜劇』を上演したのち、ベケット作『ゴドーを待ちながら』を、こまばアゴラ劇場主催公演として上演。2018年9月にはシアター・トラムとさいたま芸術劇場小ホールで『お気に召すまま』を上演予定。

出演
田代隆秀 髙山春夫

スタッフ
照明=富山貴之
音響=星野大輔(サウンドウィーズ)
舞台監督=小田史一(NON GATE THEATRE)
宣伝美術=高橋常政
宣伝デザイン=恒松建次
制作=加藤恵梨花

田代隆秀、髙山春夫という2人のベテラン男優が「ゴドーを待ちながら」のようにウィルを待ち続けているという設定でシェイクスピアのセリフを演じまくるというメタシアター。女優たちが楽屋でチェホフを演じ続ける清水邦夫「楽屋」 の男優版を思わせるような趣きがあった。
 作演出の河合祥一郎が日本を代表するシェイクスピア研究家であり、翻訳家であることは誰もが知る事実だが、この舞台はそれを越えてしまってこの人が大変なシェイクスピアフリーク、シェイクスピアマニアであることが隅から隅まで感じられる舞台。それに加えて、今回はシェイクスピア全作品の完全上演を達成したシェイクスピアシアターの創立メンバーである田代隆秀とこちらも蜷川幸雄演出など数多くのシェイクスピア作品に出演経験のある髙山春夫が、シェイクスピア作品の抜粋を次から次へと演じまくる。
 てだれの俳優による演技合戦のようで、演劇の魅力に満ちた作品でもある。実は個人的なことになるが、実は私が最初に自分でチケットを買って見に行った舞台がシェイクスピア・シアターの「ロミオとジュリエット」(京都府文化芸術会館)、続けて見た舞台がそとばこまちの「夏の夜の夢」(同志社大学新町講堂)だった。それはどちらかというとその前にシェイクスピアの戯曲を読んだり、映像作品を見たりしていてシェイクスピアが好きだったので「実際の舞台はどのように上演されているのだろう」という興味で見に行った。その意味でシェイクスピアは私の観劇体験の原点ともいえる。その分、こだわりが強いのだ。
 それゆえ、シェイクスピアはそれ以降も国内外で無数の舞台を見てきているし、専門家でこそないが、若干は土地勘もある。そういうことで私にはおおいに楽しめたのだが、マニア向けすぎて、シェイクスピア劇についてある程度の知識がないとついていくのはけっこうしんどいかもしれない。