下北沢通信

中西理の下北沢通信

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【連載4回目・完結】「ももクロを聴け!」の堀埜浩二さんにAMEFURASSHI「Drop」について聴く(4)

ももクロを聴け!」の堀埜浩二さんにAMEFURASSHI「Drop」について聴く(4)

ももクロを聴け!ver.3」を出版したばかりの堀埜浩二さんにAMEFURASSHIの音楽について聴くインタビュー企画の4回目。
(ZOOMにて収録)
中西 ももクロとAMEFURASSHIには共通している部分もあると思うんです。これはももクロだけでなくアイドル全般について言えることですが、特定の楽曲ごとに特定のテーマはあるとは思うんですが、それは何のことを歌っているかというと自分たちのことを歌っている。そういう二重性がアイドルの歌にはある。三重になっている場合もあるわけですが。僕がこのアルバムを聴いて思ったのは最近のアメフラのライブのレポートというか感想にも書いたのですが、「アメフラっシ」というグループの表すメタファー(隠喩)というか、「雨」というのがアルバム全体のテーマとしてあって、それが「雨上がり」というか「虹」というイメージに最後つながっていくのではないかということです。全体のイメージの流れとしてそういうのを感じた。
堀埜 たこ虹ちゃんの話とかを書いてましたよね。
中西 そうですね。音楽性は全然違うのだけれど、たこ虹を応援していて、それがなくなってしまったこともあるのだけれど、AMEFURASSHIの楽曲を聴いていて時折、たこ虹のことをフラッシュバックのように思い起こすことがあるのはテーマが似ているんです。要するにもともとはAMEFURASSHIとたこやきレインボーは「雨」と「虹」なんです。「雨上がりの虹」が空に出て、そこから天空にはまぶしい星が輝いているみたいなひとつながりのイメージがグループの楽曲のイメージになっていて、このモチーフは何度も繰り返される。「OVER THE RAINBOW」という同じ表題の楽曲をどちらも持っている*1。もちろん、どちらも海生生物というのはあるんだけど、それは楽曲にはあまり関係ないかも(笑い)。

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 このアルバムの曲ではないけれども「 Over the rainbow」はアメフラを象徴するような歌になっている(残念ながらライブでの最近の映像がない。こちらの映像は5人時代だが、現在は段違いにうまくなっている。その下の映像リンクが愛来が歌唱中に感極まって涙した伝説のライブ。今のアメフラはここから再スタートした)。

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 このアルバムの中でも最後に虹が見えてくる「UNDER THE RAIN」には雨が降って逆風にさらされてきて、苦難の時を過ごしていても私たちはかまわず突き進んでいくんだという決意が歌われていて、アルバムの締めとなっているんじゃないかと思います。

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堀埜 「UNDER THE RAIN」はこれこそ全体の中ではけっこう狙ってこういうバラードに仕立てているなというのが分りやすい曲ですね。ダイレクトにミュージカル「The Greatest Showman 」の「THIS IS ME」という曲がありますが、ほぼそれと同じような展開です。

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 それのAMEFURASSHIバージョンみたいなところがあって、あえて「UNDER THE RAIN」というのを持ってきているのは自分たちのAMEFURASSHIとしての原点であったり、その「雨」をここに持ってきているというのは意図的にそういう曲を書いてくれと言われて書いたんじゃないかなと思わせるところがある。そして、4人のボーカル力というのはここに来て物凄く炸裂していますから、なかなかこんなに歌い上げるというのは稀で他のアイドルではここまでのことは出来ないのではないかと思います。
堀埜 その前の「DISCOーTRAIN」がももクロにも楽曲提供をしているDirty Orange が書いているので、ももクロの「リバイバル」とか「HAND」とかを書いた作家なので、ももクロと比べるとするとこの「DISCOーTRAIN」を聴いて、先に挙げた楽曲でももクロ向けに書いている部分とこの子たち向けに書いている部分がどう違うのかというのがはっきり分かって面白いですね。
 作家としてはDirty Orange がすごく面白いのは三代目とかLDHへの作品をたくさん書いている作家なんですが、メロディーの感じと言うのにすごくオリエンタルなところがある。いわゆるペンタトニックを使ったり。それって韓国でもいけるし、日本でもいけるし、いわば坂本九の「スキヤキ」みたいのにも極めて近い。懐かしさとかがあるようなメロディーライン。Dirty Orangeだということがはっきり分かるような特徴があります*2

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 「DISCOーTRAIN」はDISCOという懐かしめのタイトルがついてますが、実際には完全にEDMの曲調です。
中西 ディスコサウンドではないんですね。
堀埜 完全にディスコというよりはいまの流れでいえばEDMの曲なんです。Dirty Orange はEDMを書くのにそれに絞り切ってやっているところがある。ももクロも「リバイバル」が典型的なEDM的な楽曲で「HAND」はもうちょっとグルーブ感を持たせていますが、鳴っているサウンドそのものはEDMの音作りというのをしっかりとしている。

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中西 それでも先ほど堀埜さんもおっしゃっていたようにももクロへの提供楽曲は大人の女性を思わせるもので、割とその年代の等身大として感じられるものですが……。
堀埜 ももクロの等身大に合わせて曲を書いています。
そういう意味ではAMEFURASSHIに対しての楽曲はAMEFURASSHI向けにというよりは自分たちのサウンドを前面に出したもので割と自由に書かせてもらっているんじゃないかと思います。それを彼女らがしっかりと歌い上げている感じというのはある。
中西 そして最後は問題作というか……「MOI」ですが(笑い)。

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堀埜 これはもうおまけですよね。曲も短いしエピローグで……。たぶんこれはアルバム全体の流れを見た時にバラードで終わるのももっともらし過ぎるので、軽めのエピローグみたいのが欲しいと最後に書いたような気がします。
中西 途中でクレジット的にはなくなったけども、当初は新曲4曲とサービストラックと言っていたような気がします。
堀埜 そういう意味ではサービストラックですね、これは。
中西 その後の展開を見てもそうですが、明らかにTikTok狙い撃ちみたいにも思われます。
堀埜 それにしても今時CD全部で37分というのは驚異的な短さで、下手をするとEPとアルバムの間ぐらい短さです。今の若者にはトラックタイムが長いから得という感覚は一切ないし、長ければ逆に飛ばされてしまう。そういう意味では配信、サブスクなど最新の音楽需要を明確に意識したアルバム制作であり、個々の楽曲の方向性よりはそうしたトータルコンセプトに佐藤守道さんの意図が色濃く反映されているかもしれません。
中西 佐藤さん本人の発言ではないと思いますが、3分半というのが今のワールドスタンダード。それより長いとサブスクや配信が回らないんだという話もありました。
堀埜 それはもうその通りです。逆に言えばいかにももクロが頭おかしいかというのもあるんですね(笑い)。ももクロはそれで自分たちなりの新しいやり方を作っているのでそこは標準に合わせていく必要はもうないと思いますけど。
(この後、メンバー個々の話などにも話題は広がっていきましたが、アルバム「Drop」についての話題はここまで。これ以外はもし希望があれば番外編など考えます 文責中西理)

【「Drop」収録曲】
■CD ※Type-A,B,C共通
1. ARTIFICIAL GIRL
Lyrics and Music : HIRO
2. DROP DROP
Lyrics : HIRO
Music : KORANG-E / CHANCE
Arranged By CHANCE / KORANG-E
3. BAD GIRL
Lyrics : Chica for Digz, Inc. Group
Music : KORANG-E
4. Lucky Number
Lyrics : Chica for Digz, Inc. Group
Music : KORANG-E / CHANCE / ODD-CAT
Arranged By KORANG-E / CHANCE / ODD-CAT
5. Blue
Lyrics : Chica for Digz, Inc. Group
Music : ODD-CAT / CHANCE / KORANG-E
Arranged by CHANCE / KORANG-E
6. Drama
Lyrics : SHOW
Music : KORANG-E
7. SENSITIVE
Lyrics : Chica for Digz, Inc. Group / ODD-CAT / KORANG-E
Music : KORANG-E / Damon Jo / ODD-CAT
Arranged By KORANG-E / Damon Jo / ODD-CAT
8. MICHI
Lyrics & Music : CHI-MEY
9. DISCO-TRAIN
Lyrics : SHOW
Music : Dirty Orange / Chica for Digz, Inc. Group
10. UNDER THE RAIN
Lyrics : HIRO
Music : Mitsu.J
11. MOI
Lyrics & Music : HIRO 

 

*1:正確に言えばたこ虹は「オーバー・ザ・たこやきレインボー」。

*2:この辺りは「ももクロを聴け!ver.3」500㌻の「リバイバル」の項に詳細に書かれているのでそちらを参照してほしい。